英国の運転・車両免許局(DVLA)が運転免許の罰則点数その他の個人情報を政府のウェブサイトでオンラインで公開することになった。本人の運転免許証番号、国民保険番号それに郵便番号で確認できるという。
自動車保険を申し込む際に申込者の自己申請に頼っていた点を保険会社はこのウェブサイトに確認でき、その結果、点数のない人らの保険料が安くなるという。また保険会社もコストを下げられ、その上、政府もコストを削減できる。これはオープン・ガバメントの一環である。政府は2015年までに25の政府のサービスをデジタル化する計画でDVLAの例はその一つである。この25の政府のサービスは政府とユーザーとの取引の約90%を占めるという。
内閣府担当大臣のフランシス・モウドはインターネット利用によるオープン・ガバメントを積極的に進めており、日本の霞ヶ関にあたる英国のホワイトホール全体を「デジタル化が標準設定(digital by default)」を合言葉に進めている。2015年には英国をデジタル化で先進8カ国のトップにするという。
モウドは、米国のオバマ大統領の推進する「オバマケア」のウェブサイト立ち上げに問題が多かったことを指摘し、これは英国のやり方を見習っていれば防げたと発言した。オバマケアの方法は「古いやり方」だという。米国はかつてはデジタル化で世界をリードしていたが、今では他の国にその座を譲ったそうだ。
また、2011年からは世界各国とオープン・ガバメントを推進する組織オープン・ガバメント・パートナーシップ(OGP)を創設8か国の一つとして立ち上げ、2013年にはそのサミットをロンドンで開いた。現在その参加国の数は63カ国に達している。
英国政府のウェブサイトGOV.UKのほとんどのコードはオープンソースであり、それを他の国も使えるようにしている。発想としては、他の国が時間をかけず、安価に使えるようにできることと、他の国の経験から英国のものがさらに向上していくというものだ。ニュージーランドがすでに英国のものを採用し、正式に立ち上げる準備を進めている。
モウドのオープン・ガバメントにかける熱意はかなりのものである。これまでも政府全体の主要プロジェクトの進捗状況と評価を政府内の多くの反対を押し切って政府のウェブサイトで公表した。
これらの試みは未だに少なすぎるという批判もある。また、政府の看板政策の一つで、6つの福祉給付を統合するユニバーサル・クレジットと呼ばれる労働年金省のITシステムで政府は苦労しており、すでに4000万ポンド(68億4千万円:1£=171円)を損失計上し、さらに9100万ポンド(155億6100万円)が評価損となっている。その他、防衛省をはじめITでは多くの問題がある。
しかし、より公開され、透明化された行政、さらに行政の持つ様々なデータがより活用される状況を作ることは重要だ。新たなビジネス機会を作るとともに行政の効率化、行政の業績の向上にもつながることととなる。もちろん、大臣らの政治家、そして公務員にとっては、そう簡単なことではないが。