キャメロン政権の閣僚の対立

内務相のテリーザ・メイと教育相マイケル・ゴブは二人ともキャメロン政権の有力保守党閣僚である。この二人が、バーミンガムの一部の公立学校でイスラム教の偏向教育を進めさせようとする企みがあった疑いがあることで衝突した。

問題は、内務省がイスラム教のテロリズムと過激主義を分け、テロリズムに焦点を絞っているのに対して、ゴブ教育相は、イスラム教過激主義者らがイスラム教徒の多い小中学校の教育に影響を与えるような行動をしている疑いがあることを取り上げ、イスラム教過激主義にも対応していくべきだと主張したことにある。 

ゴブの内務相への攻撃に対しメイは強烈に反撃した。この問題はもう何年も前に教育省に警告している、なぜこれまでその対応をしてこなかったのかと問うたものだ。このメイの反論の手紙は後に政府のウェブサイトで公開された(しばらくして取り下げられたが)。

この二人の対立は、女王のスピーチの行われた6月4日に表面化し、キャメロン内閣が分裂しているような印象を与えたばかりか、朝からこの問題をメディアが報道したために、政権の重要な施政方針の発表の場である女王のスピーチの影が薄くなった。

メイの対応は、メイがキャメロン首相の保守党党首後継者として急速に評価が上がっていることと無関係ではないだろう。

以前からメイはロンドン市長のボリス・ジョンソンと並ぶ有力候補者である。しかし、保守党支持者らの有力ウェブサイトConservativeHomeの行った調査では、メイが35%の支持を集め、ジョンソンの23%をかなり上回ったことがわかった。なお、オズボーン財相は8%と低く、次期総選挙で政界から身を引くと見られているヘイグ外相を下回った。なお、ゴブはオズボーン以下だった。

なお、このような調査が重要なのは、党首選が行われた場合、下院議員の投票で二人の候補者が選ばれた後、全党員がどちらを選ぶか投票し、決定するためである。

メイは、その堅実な内務省運営で近年評価が上がっていた。それに付け加えて、様々な不祥事を起こしている警察に、自らを改革しなければ、改革を強制すると警告したが、その強腰の対応に好感を持たれていることがある。

ただし、今回の問題をめぐってキャメロン首相が公務員トップの内閣書記官長に事実関係の調査を命じたと言われるが、キャメロン後を狙うメイには慎重な行動が必要だろう。メイには、かつてその野心を批判したことのあるゴブが、メイの能力に疑問を投げかけてメイを傷つけようとしていると映ったと思われるが、軽率な対応はその立場を難しくする可能性があるからである。