保守党党首選挙

ジョンソン首相が首相、保守党党首から退くことを発表した後、保守党の新党首を選ぶ選挙が始まった。新しい保守党党首は、9月5日に発表される予定である。保守党は下院の過半数を上回る議員数を持つ(650議席中357議席)ため、その党首が直ちに首相に任命されることとなる。

保守党の党首選挙は、現職の保守党下院議員が、新党首候補者の中から投票を重ねて2名を選び、保守党の党員(公表されていないが16万人程度と言われる)が投票してそのうちの1人を選ぶ。保守党下院議員は、その2名にスーナク前財務相とトラス外相を選んだ。そしてその二人の最初のBBCテレビ討論が7月25日に行われた。そして二人の討論が各地で続くこととなる。

なお、保守党党員の世論調査や保守党党員のウェブサイト、コンサーバティブホームの調査では、トラスが優位で、英国のブックメーカー(賭け屋)の掛け率では、トラスが大幅にリードしている。

7月25日のテレビ討論では、スムーズなスーナクとぎこちないトラスが減税のタイミングなどで厳しい議論を展開した。6月のインフレが過去40年間最高の9.4%に達し、物価高、光熱費の大幅増加で生活苦にあえぐ人多くなっている。スーナクは、生活苦の問題には手を打つが、インフレ対策が最優先で、インフレが落ち着いた時点で減税すると主張したのに対し、トラスは、首相に就任すれば、借金して直ちに減税する、このままでは景気が後退すると主張した。

この保守党党首選への投票用紙は、8月2日から5日の間に保守党党員に届く。投票の締め切りは9月2日だが、多くは、投票用紙が届けば直ちに投票すると見られているため、投票用紙が届く前の二人の討論が最も重視されている。

スーナクとトラスは二人ともオックスフォード大学でPPE(哲学、政治、経済)を学んだ。2016年のEU国民投票では、スーナクは離脱派だったが、トラスは残留派だった。トラスは、国民投票後、離脱派に転向した。

スーナクは、42歳。2015年に下院議員となり、財務副大臣を経て財相(いずれもジョンソン政権)となった。インド系のスーナクは、インド人の億万長者の娘と結婚し、自分の財産も含めて、二人で7.3億ポンドの資産があるとされ、サンデータイムズ英国長者番付の222位である。政治家として金持ち過ぎるとの批判がある。また、妻は、英国の非居住者として税金の優遇措置を受けていたことがわかり、批判を受け、居住者として支払うこととした。また、スーナクが米国で働いていた時にグリーンカードを獲得し、持っていたことがわかった。いずれも批判されたが、大臣規範ルール違反でも違法でもない。

一方、トラスは、47歳。2010年に下院議員に当選後、これまで、環境相(キャメロン政権)、法相並びに財務副大臣(メイ政権)、国際貿易相並びに外相(ジョンソン政権)を務めている。トラスは、かつて男性保守党下院議員と浮気をしていたことがある。自分の夫との関係は続いているが、相手の下院議員は妻と別れることとなった。

どちらが党首に選ばれても、新首相は、総選挙を2024年に行うと見られており、2年ほどの時間がある。インフレ、生活苦の問題、EUとの関係、NHS(健康・医療)の問題、ウクライナ戦争など課題は多い。

ジョンソン後の保守党党首選

ジョンソン首相は、保守党党首を辞任した。そして、次の保守党の党首が決まるまで、暫定的に首相の地位にとどまっている。当初、10月2日から5日まで開かれる党大会で次の党首を発表する計画であったが、数々のスキャンダルで自分の内閣の閣僚、そしてその他の役職についている下院議員が次々に辞任し、辞任に追い込まれた状況を考えると、メージャー保守党元首相も直ちに辞任すべきと示唆したように、ジョンソン首相ができるだけ早く退く方が保守党にとって得策だという考えになったようだ。辞任後も次から次に出てくるジョンソン首相のスキャンダルを考えると当たり前のことだろう。

党首選挙を実施する1922委員会の判断で、党首選の過程を早めることとした。党首選は、まず、保守党下院議員投票で、徐々に二人に候補者を絞る。一定の基準を満たさない候補者が次々に脱落していくが、党首選立候補と次のステージへ進める要件を厳しくした。これを下院の夏の休会の始まる7月21日までに行う。そして二人の候補者の討論会を経て、保守党党員の投票で新党首を選ぶ。次期党首の発表は、とりあえず9月5日となった。この日は、下院の招集日である。2016年の保守党党首選では、二人に絞られた後、そのうちの一人が辞退したため、保守党党員の投票はなかった。その場合には、党員の投票なしで党首が決まることになる。

野党の労働党は、9月5日まで待つのではなく、ジョンソン首相は直ちに首相を退くべきであるとして、ジョンソン政権への不信任案を提出する予定だ。野党第一党が政権の不信任案を提出した場合は、これまでの慣例で、下院の時間を特別に取ることになっている。ただし、下院の過半数を占める保守党の下院議員たちがそれに賛成する可能性は少ない。もし万一ジョンソン政権への不信任が可決された場合には、総選挙となる可能性がある。

党首選の立候補は、7月12日に申し込みが受け付けられ、7月13日に最初の投票が行われる。2022年7月11日現在、立候補に必要な20人の支持者(これまでは8人だった)を獲得しているのは、3人である。スーナク元財相がリードしている。ブックメーカー(賭け屋)ではスーナク元財相が最有力候補である。

今後の展開の予想は難しい。スーナク元財相(インド系)が最後の二人のうちの一人になるとしても、その相手がどうなるかで党員の投票の結果が異なってくる。保守党の党員は半分が60歳以上で、その97%は白人だと言われる。興味津々の戦いとなる。