ケーブル・ビジネス相の指摘した点:日本も考えるべき(Vince Cable’s Views on Industry Policy)

ビジネス相のヴィンス・ケーブルがキャメロン首相とクレッグ副首相あてに書いた、英国の産業政策に関する手紙がリークされた。ケーブルは、クレッグと同じく自民党から連立政権に入っている下院議員である。ケーブルは、経済学で博士号を持ち、かつては大手石油会社のロイヤル・ダッチ・シェルのチーフエコノミストであった人物である。

この手紙では、政府が銀行の信用危機で救済し、その82%の株式を持つロイヤルバンク・オブ・スコットランドを分割し、産業目的銀行を作るなどの提案が英国では注目されているが、むしろそれよりももっと根本的な、注目すべき指摘が入っていると思われるので、その点だけに触れておきたい。それらは以下の点だ。

 政府は、財政削減に力を入れ過ぎており、将来の方向性への思慮が足りない。
 国の経済成長をどの分野が担っていくか政府は未だに見定めることができずにいる。
 政府は、危機に対応しているだけであり、また、市場がどう反応するか見ているだけで、プロアクティブに対応していない。
 長期的な産業の力を作り出すには、市場の力だけでは不十分だ。

これらの指摘は、英国の問題だけに限らず、日本にも当てはまるように思われる。

保守党の次期総選挙戦略(Tory’s Strategy for the Next General Election)

次の総選挙は2015年春の予定だ。現連立政権で成立させた5年定期国会法では、この5年間の期間中に下院選挙が実施される可能性は非常に限られている。

まだ次期総選挙は3年余り先のことだが、保守党は、2010年の総選挙で過半数が獲得できず、自民党との連立政権に踏み切らざるをえなかった経緯があることから、次期総選挙では過半数を獲得しようと準備を進めている。

その戦略の内容が、保守党支持者のウェブサイトConservativeHomeで紹介されたのでここで触れておきたい。
http://conservativehome.blogs.com/majority_conservatism/2012/03/the-conservative-hq-plan-to-win-36-seats-from-labour-and-14-from-the-liberal-democrats.html

最も重要な点の一つは、重点選挙区を2010年総選挙の際の180から100に絞ったことだ。この重点選挙区100の内、50は保守党議席だが次点との差が少ないもので、残る50の内、36は労働党の議席、そして14は、連立政権を組む自民党の議席だ。つまり、既存議席を守り、他の政党から議席を奪うことで、下院の過半数を獲得しようとしている。

この戦略でのターゲット層は、35歳以下の人、独身、平均以上の収入を得ている人、そして黒人やエスニックマイノリティであるが、このウェブサイトの編集長は、それよりもイングランドのアイデンティティの体現、低所得者への減税、光熱費の削減、不平等の緩和、福祉制度の改革、そして地元や労働者階級出身の候補者を立てるなどの方が有効だと指摘している。

なお、保守党は2015年の総選挙に向けて、この4月から80人の新大卒者を選挙運動マネジャーとして雇う予定だ。徹底的な訓練を与えた後、来年早々から重点選挙区などに送り込む予定。インターネット選挙運動の責任者は既にヘッドハントしているという。