同性結婚法案の下院投票:大差で可決(MPs Back Gay Marriage legislation)

2月5日、下院で同性結婚法案の第二読会の採決があり、賛成400、反対175で可決された。これまでのところ保守党の賛成票は132、反対票は140だったと見られ、キャメロン首相率いる保守党では、反対のほうが上回ったと見られている。労働党と自民党の大多数、その他が賛成したために、賛成のほうがかなり多い結果となった。

第二読会(Second Reading)とは、法案の基本的な考え方を審議、採決するものであり、これからすべての審議、手続きを済ませるには今しばらく時間がかかる。その手順は以下のようである。
http://services.parliament.uk/bills/2012-13/marriagesamesexcouplesbill.html

さて、キャメロン首相は、同性結婚を法的に認めることが必要だと強く信じていると言われる。もちろん、この同性結婚法案を強く求めていた自民党の手柄とする前に自分の手で成し遂げたいという計算や、保守党のイメージを上げ、保守党がかつての「いやな政党」から変わったということを印象づけたいという判断はあったものと思われるが、今回の法案への党内からの反対は、予想以上に強かった。

今や、保守党はバラバラと見る人が非常に多くなっている。これには保守党内に党首選を画策している動きがあると報道されたことも影響していると思われる。YouGov/The Sunの世論調査では、71%が保守党はバラバラだと見ており、まとまっていると見る人はわずかに10%しかいない。これはYouGovの調査では2003年以来最悪である。
http://ukpollingreport.co.uk/blog/archives/6962

このバラバラだという見方は、保守党支持者の間でもそうで、まとまっていると見る人は27%にとどまる。
http://d25d2506sfb94s.cloudfront.net/cumulus_uploads/document/qrruukef6y/YG-Archive-Pol-Sun-results-040213-same-sex-marriage-divided-parties.pdf

キャメロン首相は、少し背伸びし過ぎている気配があるように感じられる。

政治家の悲劇(Chris Huhne’s Tragedy)

前エネルギー・気候変動大臣クリス・ヒューンが、10年前に起こしたスピード違反に関して司法妨害罪を認め、下院議員を辞職した。「信じられない悲劇」と言われる。このような失墜を見るのはどういう立場であろうとも快いものではないが、人間的といえ、人間の業を感じさせる。

原因は、ヒューンが自民党の欧州議会議員だった2003年に始まる。空港から高速道路で自宅へ帰る途中、自動車のスピード違反にひっかかった。制限速度時速50マイル(約80キロ)のところを69マイル(約110キロ)出していたのだという。その通知が届いた時、そのスピード違反を犯したのは、ヒューンの妻だと申し出て、妻が違反点数を受けた。ヒューンはそれまでの違反点数の上に新たに3点の点数を受けると免許停止となるため、それを避けようとしたようだ。その2週間後には、自動車を運転しながら携帯電話で話していたために点数を受け、いずれにしても免許停止となった。

ヒューンは、2005年に自民党の下院議員となり、2006年の党首選挙に出馬して次点で敗れた後、2007年に再び行われた党首選挙では現党首ニック・クレッグと争った。クレッグが優位と見られていたが、蓋を開けると、4万1千余りの投票の中で、差はわずかに511票であった。実は、12月のクリスマスの多忙な時期に郵便投票が紛れ、投票締め切りに間に合わなかった票が1300票あり、その票の結果を勘定に入れるとヒューンが勝っていたと言われる。
http://www.dailyecho.co.uk/news/2175503.mp_huhne_stands_by_lib_dem_leadership_election_results/

2010年に保守党と自民党の連立政権が発足し、ヒューンは閣僚となった。かつてガーディアン紙などの経済部長を務め、格付け会社に移った後、ヒッチの副会長となった人物であり、有能な大臣として知られた。しかし、2003年のスピード違反事件が浮上してきた。ヒューンが自分の元アシスタントと不倫し、妻と別れてこの女性と一緒になることにしたためである。それに怒った元妻が2003年のスピード違反問題を知人に話したことからこれが大きなスキャンダルとなった。

英国では、このようなスピード違反で免許停止や取消しを免れるために、誰か他の人にその違反点数を受けてもらうということがかなりあるようだ。これは英国のスピードカメラでは、通常運転している人が特定できないためだ。例えば、元保守党下院議員のニール・ハミルトンとその妻クリスティーンは、スピード違反した時にどちらが運転していたか覚えていないと主張して裁判でスピード違反を逃れたことがある。現在では、このような場合、自動車の持ち主が運転していたと見做されることになっている。

つまり、ヒューンがしたことは、かなり広範囲に行われているようなことではあるが、もちろんそれが発覚すれば、これは英国では深刻な罪である司法妨害罪となる。

今から振り返ると、もし、ヒューンが2007年の党首選で勝利を収めていれば、このような問題は起きなかったかもしれない。党首としての自分の責任を認識してもう少し行動に慎重になっていたかもしれないからだ。

もちろん英国の政治家にも多くの性に関する問題がある。例えば、ジョン・メージャー元首相の元下院議員の女性との不倫、ブレア政権で副首相を務めたジョン・プレスコットの女性秘書との不倫など枚挙にいとまがない。

ブレア政権下でロビン・クック外相が妻と別れて秘書と一緒になったことがあるが、英国では、こういう問題は個人の問題として対応され、そういう問題を起こしたからといって、大臣が辞職を迫られることはない。しかし、党首となると、元自民党のパディ・アッシュダウン党首がその秘書と不倫していたことが明らかになって、その対応に苦しんだことがあるが、少し意味が異なってくると思われる。

ヒューンには実刑が言い渡されると見られている。かつて司法妨害罪でジョナサン・エイトケン元下院議員が18か月の刑期を与えられ、服役したことがある。

この事件は、ウェストミンスターに大きなショックを与えたが、政治は既に先に向かって動き出している。ヒューンの選挙区イーストレイで補欠選挙があるからだ。この選挙区では自民党と保守党が激しく競い合っており、連立政権を組む自民党と保守党がかなりすさまじい戦いを繰り広げると見られている。