福島原発の汚染水漏れの問題で見る心配な日本(Another Japan Crisis: Fukushima Leak)

福島原発の汚染水漏れの事件で、現在の日本の抱える大きな問題が出ているように思われるのでここで触れておきたい。

2011年3月の東日本大震災の津波で起こされた原発の問題は、人災というよりも天災の要素が大きく、原発災害の拡大を抑えるための関係者の必死の努力は国際的な称賛を浴びた。その現れの一つが吉田所長の死亡記事である。タイムズ紙の死亡記事は吉田所長への批判にも触れているが、胸を打つものだ。

今回の汚染水漏れの問題は、まさしく人災と言える。BBC東京特派員の報告では、これは明らかに一つの民間会社で対応できることを超えており、日本政府が介入すべきだと主張した。

ここで問題となっているのは、二つあるように思われる。まずは、個別の企業の対応だ。BBCの特派員が指摘したように、「無能、低いモラール、そしてひどいマネジメント」が問題ならば、なぜ、そのような状況になることを東電幹部が許したのか?どこに東電のリーダーシップがあるのか?いったい誰の責任かでそのような状況になることを許したのか?

このような質問をしても具体的な答えが返ってくることは期待できないように思われる。

さらにそのような企業の体質で、本当に今後ともきちんとした作業ができるのかどうかという疑問が生じる。これは、新たな規制やガイドラインを設けるといった問題ではなく、具体的なリーダーシップの問題である。

次に政府の問題だ。なぜこのような深刻な問題をこれまできちんと査察できていなかったのか?また、東電がこのような仕事をきちんと遂行する能力があると、どのような根拠で判断していたのだろうか?政府がこの問題に対してどのようなリーダーシップを発揮してきていたのだろうか?さらに政府が今後どのようなリーダーシップを発揮していくのか?

さらに「子供・被災者支援法」の具体化の遅れを巡る訴訟でも示されているような、後手に回る政府の対応をどのように変えていこうとするのか?

福島原発の問題には、日本の国民からの関心が高いだけではなく、今でも世界の目が集まっている。

特に、今回のような人災の要素の大きな事件については、東電の対応や政府の役割には海外の研究者も含めて大きな関心が集まっている。英国の新聞には連日のように福島原発関連の記事が掲載されている。

いずれ歴史がこれらの点を判断するだろうが、その前に考えておかねばならないのは、このような出来事は日本の評判を大きく傷つけることである。政府は、その行動を世界が注視していることを念頭に置き、きちんとしたリーダーシップを発揮して行ってほしいと願う。

党員減少で苦しむ保守党大臣たち(Tory Ministers Suffering from Declining Memberships)

日本では通常、大臣になれば地元選挙区で支持が拡大する。特に保守系ではそうだろう。しかし、英国ではそうではない。

保守党の党員数が減っているが、それは保守党閣僚の選挙区でも同じである。保守党は党員数を発表していないが、保守党各選挙区支部が選挙委員会に提出した会計報告のサンデータイムズの調査でそれが裏付けられている。

その調査によると、首相のデービッド・キャメロン(David Cameron)と外相のウィリアム・ヘイグ(William Hague)の選挙区ではほとんど減っていないが、それ以外の有力大臣の選挙区の党員数が大きく減っている。

2010年のキャメロン政権発足以来コミュニティ・地方自治体大臣を務めるエリック・ピクルズ(Eric Pickles)の選挙区では2009年から2012年の間に党員が半減している。昨年9月の改造で、それまでの副大臣ポストから北アイルランド大臣となったテレサ・ビリヤーズ(Theresa Villiers)の選挙区では44%減。元保守党党首で、2010年から労働・年金大臣のイアン・ダンカン=スミス(Iain Duncan Smith)は、3分の1減っている。

他に大きく減っているのは、閣僚クラスの保守党下院院内幹事長から2012年9月に運輸大臣に就任したパトリック・マクロックリン(Patrick McLoughlin)、2010年から教育大臣を務めるマイケル・ゴブ (Michael Gove)、2011年に財務省の政務官クラスのポストから運輸大臣になった後、2012年9月に国際開発大臣となったジャスティン・グリニング(Justine Greening)、文化大臣を務めた後、2012年9月から健康大臣のジェレミー・ハント(Jeremy Hunt)それに2012年9月に副大臣ポストから文化大臣に就任したマリア・ミラー(Maria Miller)などがいる。

グリニングの場合、2011年に運輸大臣に就任し、ロンドンのヒースロー空港拡張に反対と明言した。これは、オズボーン財相らの考えに反対するものであった。その結果、翌年、グリニングの意志に反して他のポストに異動させられることとなった。

保守党は2010年の総選挙ではヒースロー空港の拡張反対を打ち出したが、現在では、ヒースロー空港拡張が最も現実的な対策だと考えており、次期2015年の総選挙では、事実上容認の立場を打ち出す見通しだ。なお、ロンドン市長のボリス・ジョンソン(Boris Johnson)はテムズ川の河口の空港建設を提唱しているが実現可能性は少ない。

グリニングは、自分の選挙区がヒースロー空港の進入路のパットニーにあり、これまでヒースロー空港拡張に強く反対してきた。ヒースロー空港周辺の住民などからこれまで多くの応援を受けてきている。担当の運輸大臣として反対の立場を明確にしたのは、自分の選挙区の党員が減る中で、危機感があったことは容易に伺われる。

日本の場合、政治家と様々な利権との関係がよく指摘されるが、英国では、そのようなことは通常考えられない。日本の政治風土も徐々に変化してきているようだが、日本は、この点で、英国の例を参考にすべきだと思われる。