サッカーのプレミアリーグのようになってきた英国政治

511日に終わったイングランドのサッカーのプレミアリーグでは、最後の日に優勝チームが決まり、終盤盛り上がった。英国の政治も1年後の総選挙の結果がどうなるか予断を許さないような状態となり、面白くなってきたといえる。

保守党が下院議員選挙の世論調査(これは来週行われる欧州議会議員選挙の世論調査ではない)で労働党を上回ったという報道が大きく伝えられた。同じ日に発表された2つの世論調査で保守党が労働党を2ポイントリードしたのである。そのため、最近上向きの経済の効果が有権者に浸透してきた、保守党に有利になってきたと見る向きがある。

この2つの世論調査は以下のものである。

アッシュクロフト卿の世論調査保守党 34%, 労働党 32%, 自民党 9%, UKIP 15%
ガーディアン紙ICM世論調査保守党 33%, 労働党 31%, 自民党 13%, UKIP 15%

アッシュクロフト卿は、保守党の元副幹事長や財務担当も務めた、億万長者の上院議員で、特に2005年、2010年の総選挙で大きな役割を務めた。その際に自腹を切って数々の世論調査を行い、2010年以降も自分で世論調査会社に依頼して世論調査を行っており、その結果を自分のブログで発表し続けている。この結果は保守党支持者以外からもかなり真剣に受け止められており、メディアでよく触れられる。保守党に大きな影響力を持つ保守党支持者のウェブサイトConservativeHomeのオーナーでもある。

このアッシュクロフト卿のブログでも強調されていることだが、世論調査では通常、誤差が2から3ポイントはある。アッシュクロフト卿の世論調査の結果では、保守党と労働党の差は2ポイントだが、アッシュクロフト卿が指摘するように、もし保守党に投票するという人が1人少なかったら、保守党の支持率は33%となっており、支持率の差はわずか1%となっていたという。いずれにしても誤差を考えると、そう大きな差はないと言える。

また、その世論調査では3分の2の人たちが、経済の効果を自分で感じていないと答えており、経済の効果が有権者に浸透してきたとまでは言えないようだ。

ICMの世論調査でも保守党が2ポイントリードしている。ただ、この世論調査で同時に行った欧州議会議員選の支持率では、保守党が英国独立党(UKIP)と労働党を上回っており、欧州議会議員選挙の他の世論調査の結果とかなり異なった結果となっている。 

上記2つの世論調査と同じ日に発表された、さらに2つの世論調査がある。これらも見ておく必要があろう。

サン紙へのYouGov世論調査保守党 35%, 労働党 36%, 自民党 9%, UKIP 14%
Populus
世論調査保守党 35%, 労働党 36%, 自民党
8%, UKIP 13%

これらでは労働党が保守党を1ポイント上回っている。

これらの4つの世論調査から言えることは、保守党と労働党との支持率の差がほとんどなくなってきているようだということである。

もし来年5月の総選挙で保守党と労働党の得票率が同じであれば、いずれの政党も過半数を占めることのないハングパーリアメント(宙づりの議会)となる可能性が強い。ただし、その場合でも少ない得票で議席を獲得する労働党が最多の議席を占めることになるが。

ただし、労働党は、これまでの35%戦略を見直さざるをえなくなるだろうと思われる。この戦略は、労働党が前回総選挙での支持と自民党から流れてくる票を確保すれば、UKIPに票の流れる保守党を抑えて下院の過半数の議席を占められるというものである。つまり、労働党の既存の支持者もしくは自民党支持だった考え方の近い人たちの票を固めれば勝てるというものである。

しかし、明らかに労働党はUKIPへ支持者を予想以上に失っているようだ。つまり、これまでの支持者を固める方向の戦略から、より多くの支持を集められる戦略へと方向の修正を迫られているように思われる。

労働党は、光熱費凍結、家賃上昇制限、鉄道再国有化のアイデアなどを立て続けに打ち出してきている。有権者にはこれらの政策が好評だが、それらが労働党への支持に必ずしも直接つながっていない。

これからの1年間はたいへん興味深い展開となりそうだ。

投票権を引き下げると若者が選挙に関心を持つ?

日本では、選挙への投票権を20歳から18歳に引き下げることとなった。世界の多くの国が18歳を採用していることや、高齢者が増えており、世代間のバランスを取るため、さらには若い世代が政治に興味を持つきっかけとするなどの狙いがあるようだ。 

しかし、それが効果を生むのだろうか?それだけで若い世代が政治に関心を持つようになるのだろうか?日本の政治がより健全になるのだろうか? 

イギリスでは、1969年に18歳としたが、若年層の関心が必ずしも高いとは言えない。20155月に総選挙が予定されているが、その総選挙で初めて投票する現在17歳から21歳までの世代対象に行った世論調査では、投票するとした人は41%であった。全世代では60%、そして60歳を超える世代では4分の3の人が投票するとしている。年齢の高い層と比べると若年層の政治的な関心は低い。

これは、これまでの歴史的な傾向にも合致する。 

18歳から24歳の総選挙での投票率推移

総 選 挙 1970 1974 2 1974  10 1979 1983 1987 1992 1997 2001 2005 2010
投票率 64.9 70.2 62.5 62.5 63.9 66.6 67.3 54.1 40.4 38.2 51.8
全世代 72.0 78.8 72.8 76.0 72.7 75.3 77.7 71.4 59.4 61.3 65.0

出典:英国下院図書館資料SN/SG/1467 201373。(なお、2010年には自民党の党首クレッグによるクレッグブームで若い世代の投票率が伸びた。)

学校時代にきちんと市民権教育を施せば、投票率が高くなるだろうという見方があるが、ある研究報告書によると、英国の学校で市民権教育を実施したが、投票率向上への長期的な効果はなかったという。単に市民権教育を実施するだけでは不十分なようである。

そこで、選挙年齢を16歳まで下げる考えを持っている労働党の影の法相シディキ・カーンは、有権者となって最初の選挙を義務制にすることを検討している。投票年齢を下げるだけでは、若年層と年齢の上の層との投票率の差を広げるだけになるからだ。最初の選挙に投票するとその後継続して投票する傾向があることに注目した。

日本で投票年齢を下げるだけで若い世代の政治への関心が増すと考えるのは十分ではないように思われる。むしろ、もし最初の選挙に投票しなければ、その後も継続して投票しない可能性が出てくるのではないだろうか?

それでは最初の選挙を義務制にするのはどうだろうか?実は、この問題はイギリスの政党によって考え方が異なる。選挙への影響を考えるからだ。労働党が積極的なのは、若年層の支持が強いからである。

日本では、単に選挙年齢を引き下げるだけではなく、いかに若年層の政治への関心を高め、投票率を上げるかに取り組んでいかねばならないように思われる。もちろん制度的な点も検討していく必要があろうが、若い世代がより関心を持つような政治にしていくことが大切なことである。