女性であっても「男らしい」ということがある

緑の党の女性党首ナタリー・ベネットが、党の総選挙キャンペーンをスタートした日の2月24日、朝のラジオ番組に出演し、聞かれたことに答えられなかった。緑の党は、その選挙公約で、公共住宅を50万軒建設するとしているが、その財源を説明できなかったばかりか、他の質問にもきちんと返事ができなかったのである。

緑の党は、党員が急増しており、世論調査でも、自民党と並ぶ支持を得ており、大きな注目を浴びている。その日の選挙キャンペーンのスタートの記者会見で、記者たちの関心は、党首のラジオ番組での返答ぶりだった。

その記者会見の司会を務めたのは、大ロンドン市議会議員で、緑の党のベテラン、ジェニー・ジョーンズである。そのジョーンズが、記者たちにベネットに関する質問を受け付けない態度に出た。ジョーンズは、ケン・リビングストン前ロンドン市長時代に、副市長も務めた人物で、2012年のロンドン市長選前の候補者討論では、現職のボリス・ジョンソンに市長が務まるなら、私にもできると発言した、まさしく「女傑」である。今や、一代貴族の女男爵に任命され、上院議員(貴族院議員)も兼ねている。そのジョーンズが、その記者会見でダメと言えば、それで押し通すことができた。

ところが、この女傑の「助け」にもかかわらず、ベネットは、この質問に真っ向から答えた。ジョーンズの配慮に感謝しながらも、ラジオ番組出演中、頭が真っ白になり、答えられなかった、と自分の非を認めたのである。また、党員にも謝罪した。

これは、困難な問題を避けがちな政治家が多い現在、久しぶりに「男らしい」態度といえるような気がした。

党首TV討論の行方

総選挙は5月7日。前回の2010年総選挙で、イギリス史上初めての主要3党党首によるテレビ討論が行われたが、放送局側は、今回の総選挙でも党首討論を実施しようと早くから取り組み始め、2014年の10月には、主要4放送局がその形式について合意した。前回同様3回の討論で、保守党、労働党、自民党、それにイギリス独立党(UKIP)を含めたものだった。

ところが、2010年総選挙でテレビ討論に参加したために、議席が思うほど獲得できなかったといわれるキャメロン首相は、公の場ではテレビ討論に参加したいと言いながら、実際には討論への参加は避けたいと考えているようで、難題を次から次に吹っかけている。

まず、全国政党である、緑の党を入れたものでなければ、参加しないと主張した。それを受け、放送局側は、3回の討論のうち、1回は首相候補同士の対決、すなわち保守党のキャメロンと労働党のミリバンドの討論、それ以外の2回は、緑の党と、地域政党であるスコットランド国民党とウェールズのプライド・カムリを入れた7党による討論を実施することにした。そして、出席しない党首がいても、出席した人だけで実施するとした。

しかし、キャメロン首相は、討論は、総選挙のキャンペーンが始まる前に実施すべきで、しかも、北アイルランドで最も下院議員の多い、民主統一党(DUP)も入れるべきだとする。これまで北アイルランドの政党は、それ以外の地域の政党とは別に扱われており、それに異を唱えることはなかったが、DUPは、党首のテレビ討論から自分たちが除外されていることに対して、法的措置を取る構えだ。もしDUPがテレビ討論に含められた場合、それ以外の北アイルランドの政党が黙っていないと見られる。

これに対して、放送局側は、既定の方針通り、7党で、総選挙中に実施するとし、党首討論を開催する予定の4つの放送局のくじ引きで、7党の党首討論を、選挙期間中の4月2日と16日、そしてキャメロンとミリバンドの討論を4月30日に行うと発表した。

労働党のミリバンドは、テレビ討論に積極的で、すでにその準備を始めているという話もある。しかし、キャメロンの側近は、キャメロンの参加したテレビ討論はないと見ているようだ。放送局側は、出席する党首だけで討論をするというが、ミリバンドとキャメロンが直接対決するテレビ討論で、例えば、投票日の1週間前だからという理由でキャメロンが参加しなれば、ミリバンド一人しかいない討論では、討論にならないだろう。

結局、キャメロン首相の参加する党首のテレビ討論はないと見たほうが確かなように思われる。