若者の失業対策 (The UK way of dealing with Youth unemployment)

16歳から24歳のニートが116万人となったと昨年11月に発表された。ニートとは、英国では学校にも行っていない、仕事もしていない、トレーニングも受けていない人のことを言う。これは、この年代層の5人に1人にあたる。たいへんな数だ。

日本では、新卒を好む傾向があるが、英国では、即戦力を求めて経験者を好む傾向がある。このために、学校を出たばかりの若者が職にありつけない事態が生じている。

これを放置しておけば将来に禍根を残すと、政府は対策を取ることにした。これは、ユース・コントラクトという制度で、若者に仕事に就くきっかけを与えようとするものであり、この4月に始まる。今後3年間に1200億円を投入し、41万人の働く場を作り出そうとしている。

この制度では、基本的に、企業がこれらの若者に機会を与えれば、政府から一定の助成金が支給される。この中で中心となるのは、18歳から24歳の若者を6か月間雇用すれば一人当たり27万円の助成金がでるもので、3年間で16万人の働く場をつくるのが目的だ。

これ以外に、週16から29時間のパートタイムの仕事に14万円の助成金が出るもの、見習い者として雇用する者には18万円の助成金がでるもの、さらに25万人に8週間までの職場でのトレーニングを与えようとするものなどがある。特に貧困など難しい家庭出身のニートは、ニートであることが継続化しやすい傾向にあることから、16歳と17歳の若者を対象にして2万5千人の働く場所作りに60億円を使う予定だ。

ただし、今回の制度で、どの程度効果が上がるかははっきりしていない。助成金の額が企業の関心を呼ぶほどのものかどうか疑問だという声もある。

このような制度は、かつてサッチャー保守党政権時代の1983年にも実施されたことがあり、また、前ブラウン労働党政権でも2009年に似たような制度が導入された。

1983年のユース・トレーニング・スキームでは、1983年価格で今回の制度と同等の10億ポンドを費やして実施したが、その評価は以下を参照のこと。今回の制度は、このスキームで問題となったことに対応している。
http://www.princeton.edu/~ota/disk1/1995/9559/9559.PDF

また、BBCの関連のウェブサイトは以下を参照。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-17010683?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
http://www.bbc.co.uk/news/uk-15896650

波紋を呼ぶ主任視学官の新方針(New Chief Inspector of School’s determination)

今年1月、主任視学官に就任したマイケル・ウィルショーは、校長として、貧困、ギャング、麻薬など多くの問題のある困難な地区にある学校を「奇跡的に」立て直し、高い業績を上げる学校に変えた人物だ。ガブ教育相が口説き落とし、教育水準局のトップである主任視学官となった。この人物がいかに教育の水準を上げるかについてサンデータイムズ紙にこう語っている。

まず、教育水準を上げるには、以下が必要だと言う。

 強力なリーダーシップ
 学校スタッフの行動業績管理のレベルが高いこと

つまり、校長が優れたリーダーシップを発揮し、無能な教員や惰性で教えている教員を無くし、子供たちの行動を改善しなければならないと言うのだ。その上、もし、子供の家庭環境が良くなければ、親を責めるのではなく、学校がその代わりを務めねばならないと言う。

この新主任視学官の言動は、既に、英国の教育界に大きな波紋を引き起こしている。環境の恵まれた地区の学校には、さらに高い成績を上げるよう要求し、環境に恵まれない地区の学校では、その環境を言い訳にせず、主導的に学校内の環境を整備し、教育水準を上げよというのだ。教師が安穏とした環境におれる時代は終わった。