決まらない、EUとの経済関係

離脱後のEUとの経済関係を巡り、内閣がまとまらない。メイ首相の好む関税パートナーシップ案と離脱強硬派らが選択するテクノロジーに大きく頼るMax-fac案があるが、いずれにも問題があるからだ。大臣をメンバーとしたワーキンググループを設け、そこで妥協案を探ろうとしているが簡単ではない。そもそも上記のいずれの案にもEU側は消極的だ。そこでメイ内閣は、イギリスとEUとの間でもし話がまとまらなければ、最後の手段として、2020年末に終わる予定の移行期間の後、北アイルランドとアイルランド共和国の国境で検問をする必要のないよう、取りあえず(短期間だというが)、EUに入ってくるモノの関税と同じ関税をイギリスもかけることで合意した

メイ首相はこの方法を取るつもりはないという。しかし、メイ首相がするつもりはないという関税同盟の方向にますます進んでいる。ただし、この案でEU側が納得するとは考えにくい。北アイルランドに陸続きで、この問題で直接の影響を受けるアイルランド共和国が「関税同盟だけの問題ではない」と指摘している。

イギリスは来年3月29日にEUを離脱する。将来の経済関係の骨子がはっきりしなければ、離脱後の「移行期間」にも入れない。移行期間は、現在の関係と将来の関係の間を埋めるための詳細を煮詰め、準備する期間であり、現在の経済関係が続く。しかし、もし将来の関係が決まらなければ、イギリスがEUをスムーズに離れるための離脱合意そのものも困難になる。

今秋までには、イギリスのEU離脱、移行期間の詳細、将来の経済関係の骨子について合意が必要であり、そのためには、将来の経済関係、特に北アイルランドとアイルランド共和国の間に、いかに検問を設けずにすませることができるかについて、EUとイギリスが受け入れられる案を提示できるかがカギとなる。それを6月のEUサミットまでに解決するのは簡単なことではない。

しかもその案は、イギリスの上下両院に受け入れられるものである必要がある。メイが政権を維持していくためには、ジェイコブ・リース=モグら60人ほどを擁するERGグループと閣僚を含む離脱強硬派の支持を維持していく必要がある。その一方、両院ともにソフトな離脱を求める勢力の方が多いため議会運営は極めて困難だ。将来のEUとの経済関係はまだ決まらない。

調査しないことになった下院議長のいじめ疑惑

ジョン・バーコウ下院議長のいじめ疑惑について、下院の行動基準委員会が行動基準コミッショナーに調査依頼しないこととした。5人の委員のうち、3人が調査に反対、2人が賛成だった(委員長は同数となった場合にしか投票しない)。調査するかどうかはコミッショナーの判断次第という点では委員全員が同意したが、この委員会のルールで7年を超える前の件については、コミッショナーは委員会に諮る必要があり、よほどの事情がない限り、委員会は調査依頼しないことになっている。バーコウはすべての疑惑を否定している。

バーコウは2009年から下院議長を務めている。下院の元職員でバーコウにいじめられたとする二人のうち一人は2010年、もう一人は2011年2月にそのポストを離れた。すなわち、7年を超えている。また、二人とも、その主張を正式な苦情申し立てとして訴え出ていない。2010年に退職した人物は口外禁止条項に署名したとしたが、バーコウは、その話には自分は関与していないし、自由に話してもらって結構だとしている。

なお、バーコウの件を調査するようコミッショナーに求めたのは、委員会に所属しない保守党議員。委員会でコミッショナーへの調査依頼に反対したのは保守党議員2人と労働党議員1人で、賛成したのは保守党議員と労働党議員1人ずつだった。