スターマー労働党政権の始まり

7月4日(木)に行われた英国総選挙。投票が終わった午後10時開票が始まり、下院(庶民院)の全650議席のうち、労働党が412議席を獲得し大勝、政権を14年間担当した保守党は121議席で惨敗した。

7月5日(金)、保守党のスナク首相がチャールズ国王に謁見して首相を辞任し、労働党のスターマー党首を首相に推薦。チャールズ国王がスターマーを招き、首相に任命。スターマーは、首相官邸に入り、直ちに組閣を開始し、当日中に組閣を終えた。

7月6日(土)にスターマー首相は初閣議を開き、保守党政権時代に度々問題になった行動規準を徹底するとともに、スターマー政権は直ちに行動に移ると訓示した。そして、7月7日(日)には英国の3つの分権政府を訪れる予定である。3つの分権政府の長とは既に電話で話をしている。

スターマー首相は、首相官邸内の首相の住居に入居したものの、まだ荷物をほどいていないそうだ。また、その政権では、閣僚の任命は終えたが、準閣僚らの任命もある。

さらに7月9日(火)にはNATOの会議でワシントンに飛ぶ。しかし保守党政権下で残された問題、例えばもう数日で満杯となる刑務所をどうするかなど直ちに対応しなければならない問題は数多い。

スターマー首相は、もう半年以上前からこの日のために準備をしてきた。効果が出るのはまだまだ先のことで、スターマー首相は、期待を抑えるのに懸命だ。

1997年のブレア首相の場合、国民の期待が非常に高かった。それまでの保守党のメージャー政権の経済運営が堅調で、財政的に比較的問題に取組み安かった。しかし、スターマー政権は、保守党の失政のためお金がない。その上、総選挙に勝つために厳しい財政規律を守る約束をした。すなわち、何か新しいことにお金が必要ならば、経済成長をもたらし、税収を高める必要がある。時間がかかる。先の長い戦いだが、スターマー首相は、全力で推進する構えだ。

労働党の地滑り的大勝利

2024年7月4日に行われた英国総選挙で、労働党が地滑り的な大勝利を収めた。7月5日午前9時現在、労働党は、英国下院(庶民院)の全650議席のうち、411議席を獲得している。前回2019年総選挙では202議席だった。一方、これまで政権を14年間担当してきた保守党は、119議席で、歴史的大敗である。前回の365議席から大きく後退した。なお、3番目に多くの議席を獲得したのは自民党で、前回の11議席から71議席となった。なお、これまで第3党だった、スコットランドのSNP(スコットランド国民党)は、9議席と39議席減らした。

この結果、野党第一党は保守党で、水曜日恒例の下院の「首相への質問」では、保守党が6つの質問、第3党の自民党は、2つの質問ができることになる。

7月5日の予定は、午前10時半にスナク首相が首相官邸前で簡単なスピーチを行い、バッキンガム宮殿でチャールズ国王に謁見する。首相を辞職し、同時に次期首相に労働党のスターマー党首を推薦する。その後、スターマーがバッキンガム宮殿に招かれてチャールズ国王に謁見し、首相に任命され、組閣を命じられる。スターマーは、午後12時20分頃、首相官邸前で首相として初めてのスピーチを行い、直ちに組閣に入る。組閣は、7月5日中に終える予定である。

スターマー政権は、新政権の課題に直ちに取り組むとして、7月6日に初閣議を行い、仕事を開始していくこととなる。総選挙が終わった後、ゆっくりと休む暇もない。スナクとその家族は、首相官邸内の住居を直ちに明け渡し、スターマーとその家族がすぐに入居できることとなる。

今回の総選挙で、労働党は、約34%の得票をし、地滑り的大勝利を勝ち取った。ただし、総選挙での労働党の得票率では、2017年総選挙で40%の得票をし、262議席を獲得して敗北した場合と比べると状況がかなり異なっている。

今回の結果は、労働党が勝ち取ったというよりも、保守党(英国全体の政権)やSNP(スコットランド分権政府の政権)が不祥事や失政で大きく議席を減らしたことが大きな原因である。保守党の支持率の大きな低下で、右のリフォームUK党が大きく票を伸ばして4議席獲得したが、さらに各選挙区でリフォームUK党が保守党票を大きく奪った。その上、弱体化した保守党の票を、従来保守党の獲得した議席で次点だった自民党が、保守党票並びに、保守党を敗北させるためのタクティカルボーティングで労働党票も引寄せた。 得票率は低いにもかかわらず、地滑り的大勝を勝ち取った労働党にとっては、結果がすべてである。労働党は、今回の総選挙で安全第一の選挙戦を展開した。その点で、労働党の選挙戦略は大成功だったと言える。