大臣の行動規準監視の強化

スターマー首相は、大臣の行動規準の独立アドバイザーに会い、大臣の行動規準の監視体制の強化を図る意思を明確にした

これまで独立との名前とは裏腹に、このアドバイザーは、自分の判断で調査を始めることができなかったのである。首相が調査するよう依頼した時のみに限られていた。

さらに、調査の対象が首相の場合には厄介な問題が生じた。この制度は、首相が大臣の行動規準を決め、その規準に反する行為があったと判断されれば、首相が処罰するというものである。しかし、もしその対象が首相本人である場合、例えばジョンソン首相の時に、実際に起きたことだが、アドバイザーは苦しい立場になる。

今回のスターマー首相の判断は、アドバイザーの裁量権をかなり拡張したものだと言えそうだ。

 経済成長の鍵の一つは都市の成長

スターマー首相は、Natoのサミットでアメリカに行く前に、英国のイングランドの地域(バーミンガムを含むウェストミッドランズなど広域都市連合)12の市長と会った。これは、地域への分権とそれぞれの独創的な取組みが全体の経済成長の鍵の一つになるとの考えに基づく。それぞれの優先セクターとそれに必要なインフラ整備を報告するよう求めたという。また、同様な地域をさらに広めて行くとの話があったそうだ。なお、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドには分権政府がある。

このミーティングは明らかにスターマー労働党が、これまでに慎重に計画してきたものであり、スターマー首相の準備ぶりがよく現れている。

特に、12の都市のうち、11は労働党の市長であり、保守党の市長は1人だけだが、スターマー首相は他の市長を含めて会う前に、15分間保守党の市長と会う機会を作った。保守党市長でも、ハンデはないというような話があったものと思われる。

地域への分権は、保守党政権下でも推進された。しかし、ジョンソン政権のレベルアップ策に見られるようにあまり効果があがっていないものが多い。それらをさらに大規模に、統合的に行えば一定の効果があるものと思われる。

スターマー労働党では、課題に対する対策案を既に検討しており、それらを次から次に出して行く手法は斬新といえる。