地方選挙は、政治の現状を見るのによく使われる。今回の地方選挙の結果もその意味で注目されていた。イギリスの地方選挙では、地方によって様々な形があり、一様ではないが、地方議会議員の任期は通常4年であり、2018年の4年前の2014年との比較がなされることとなる。ただし、今回の地方選挙では、労働党関係者が、2014年の地方選挙と2015年の総選挙との関係、2017年5月の地方選挙と6月の総選挙の関係を取り上げ、地方選挙と総選挙は関係がないという主張をした。
確かに地方選挙では、地方の事情が色濃く出る場合がある。例えば、今回の地方選挙では、ロンドンで労働党が大きく支持を増やす可能性が強いと見られていたが期待外れになった。特にロンドンのワンズワース区とウェストミンスター区で、労働党が保守党から区議会過半数を奪い取る可能性がささやかれていた。しかし、いずれの場合も労働党が若干の議席を増やしたものの、保守党の支配は揺るがなかった。これらの区は、イングランドで最も地方税(カウンシル税と呼ばれる)が安く、標準の地方税の半分程度である。すなわち、労働党が過半数を占めれば、地方税が大幅に増える可能性が強く、有権者がそれに慎重になったのは理解できる。また、ロンドンのバーネット区では、保守党が議席を増加させ、過半数を獲得したが、その大きな理由の一つは、この区にユダヤ系住民が多いことが指摘された。すなわち、反ユダヤ人的だと攻撃されていた労働党に影響が出たのである。
地方選挙を見る場合、このような地域の事情を見ることが重要だが、それでも全体的な傾向を見ることは可能だ。