連立政権の副首相ニック・クレッグの率いる自由民主党(自民党)の支持率は、2010年5月の総選挙時の23%から現在の10%前後に大きく下落した。自民党の支持率は連立政権参画後、徐々に下降し、2010年9月ぐらいから現在のレベルに落ち着いている。その後、11月に大学学費値上げに関する学生の激しい抗議デモがあった。自民党の議員たちは、総選挙前に大学学費値上げに反対するという誓約書を大学生組合と交わしていたが、それを破ったことをマスコミは大きく報じ、自民党のイメージをさらに大きく傷つけた。党首クレッグは特に傷ついた。自宅のレターボックスに糞を投げ込まれた。また、デモ取締りに警察はケトリングというデモ参加者を囲い込む、物議を醸した戦術を取ったが、クレッグの誕生日に学生たちは自民党の党本部までデモ行進し、クレッグの誕生日のプレゼントとしてやかん(ケトル)を届けた。クレッグのために学生たちはケトリングで苦しまねばならないというプロテストの意思表示だった。
その上、保守党との連立政権に参加する代償として、自民党は、AVという自民党に有利になると思われた投票制度を導入する案の国民投票を実施する約束を取り付けた。しかし、2011年5月の国民投票では、この制度改革は大差で否決された。
さらに、下院の選挙区の数を650から50減らし600とし、その選挙区のサイズを均等にする選挙法改正法が成立し、現在その作業が進められており、そのイングランド地区の新区画案が先日発表された。この変更は、AVの国民投票を実施する代わりに、それがもし導入された場合不利となると思われた保守党が要求して行われることになったものである。この案を分析した専門家は、自民党が最も大きな打撃を受ける可能性があると分析している。
この状態を受けて、自民党は、連立政権の中で、自民党が保守党の独走を抑えて、国民を守る盾になっているとアピールする戦略を取ってきた。しかし、この戦略の効果があまり出ていない。9月19日のダイムズ/Populusの世論調査では、自民党のために連立政権の政策がより公平になっていると答えた人が54%いたが、9月18日のサンデータイムズ/YouGovの世論調査では、そもそも自民党が連立政権に加わったのは正しかったと答えた人は35%しかおらず、それが誤りだったと答えた人が48%にも上った。また同じ世論調査で、クレッグが副首相として仕事をよくやっているかどうかという問いに対し、よくやっていると答えた人は24%にとどまり、よくやっていないと答えた人は66%に上った。これらの結果が現在の低迷する支持率に反映している。
つまり、自民党は、保守党との連立に踏み切ったために、大きなダメージを受け、その党首クレッグは、それよりもさらに大きなダメージを受けていると言える。その結果、党勢を回復するには1世代かかるという見解もあるぐらいだ。
連立政権を組んだために自民党の支持が低迷しているのなら、一つの選択として、連立を解消するという方法がある。しかし、現在、総選挙になっても、支持率の大きく下降した自民党は総選挙時の57議席から、もしかすると10議席台に落ち込む可能性があるという見解もあり、とてもとれる選択肢ではない。また、現在の厳しい経済情勢の中で、政権を倒すことはできないだろう。自民党が国民を見捨てたとしてさらに大きなダメージを受ける可能性があるからだ。つまり、連立政権の中でとどまるしか手がないのである。自民党は苦しんでいる。