英国社会は今でも、中流階級や労働者階級といった社会階級の意識が強い。これは英国の社会を理解するうえで日本人にわかりにくいものの一つだ。その理由の一つは、日本人が英国の社会階級の外に置かれていることにある。
社会階級には、それぞれの人の生まれ育ちや言葉の発音の仕方(これは英国ではアクセントと呼ばれる)、それに行動様式などが重要な要素として含まれており、これらの類型に入らない日本人の場合、既成の英国の社会階級の意識の枠組みに入らないためだ。
日本では、社会階級は、それぞれの人の現在の仕事、収入や資産によって分かれると見る人が多いと思われるが、英国では必ずしもそうではない。中流階級はかなり広く解釈されるようになっているが、それでも誰がどの階級に属するかで最も重要な要素は人の生まれ育ちである。
最近発表された、ある調査によると、90%の英国人は、英国には社会階級の考え方に基づいて人を類型的に見る見方があると感じており、64%の人は、今でも社会階級は社会で重要だと考えている。
人が中流階級かどうかを判断するのは、次の順番になっている。
1.生まれ育ち
2.仕事
3.給料
4.家
5.貯金
6.投資
7.車
8.物
9.趣味
10.社会保障給付を受けているかどうか
生まれ育ちは、英国社会ではすぐにわかる場合が多く、それがわかればその仕事や給料にかかわらず中流と判断される。
なお、この調査は、4DVDという会社が世論調査会社に依頼して行ったもので、2千人の大人に対して行なわれた。そのうち48%は自らを労働者階級と見なしている。この調査では、現在では2人に1人が自らを中流と見なしており、1966年の調査ではそれが30%であった(タイムズ紙2013年3月15日)ことを見ると中流がかなり増えてきていると言える。
平均的な中流の人の像は以下の通りである。(£1=145円)
・既婚
・年収£24,744(359万円)
・配偶者との合計年収£43,592(632万円)
・家 £278,7143(4,041万円)のベッドルームの一戸建ての家
・貯金 £25,963(376万円)
・車1台 フォード/ボクスホール/トヨタ
・趣味 ショッピング、カントリーサイドへのウォーキング、読書、映画を見に行くなど。
平均的な労働者階級の人は以下の通りである。
・既婚
・年収 £20,011(290万円)
・配偶者との合計年収 £32,375(469万円)
・家 £217,969(3,161万円)の3ベッドルームのセミデタッチハウス
・貯金 £13,446(195万円)
・車1台 フォード/ボクスホール/シトロエン
なお、この調査では、モーゲージなどの住宅ローンの有無が明らかになっていない。また、これを見る際には、日本人と英国人との選好の差、例えば英国人の持家指向、それに社会的な条件、例えばNHSをはじめとする社会福祉や不動産の価格などを考慮に入れておく必要がある。
中流階級と労働者階級の差は物の面では、そう大きくない。なお、社会階級を上がりたいと考えている人はこの調査では35%だったという。
参照:
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2293690/Britons-earn-25-000-drive-Ford-middle-class.html
http://www.easier.com/112363-the-working-middle.html