労働党は、インド系、黒人系をはじめとする、いわゆる非白人エスニック・マイノリティの支持が強いと考えられてきた。これは、それぞれの人たちの社会的な階級意識が異なっても、つまり、労働者階級から中流になり、豊かになっても変わらないと分析されてきた。イギリスの人口増の多くはこれらのマイノリティの人たちの移民やその子供、孫たちであるため、労働党に有利で、保守党に不利だと見られてきた。しかし、その傾向が大きく変化してきていることがわかった。
British Election Studyの研究によると、ブレア労働党が政権についた1997年と現在の間に、これらの人たちの政党に対する見方が大きく変わっている。自分を労働党だと見る人の割合は以下のとおり。
マイノリティの区分 | 1997年 | 2014年 |
アフリカ系 | 79% | 63% |
西インド諸島系 | 78% | 67% |
インド系 | 77% | 18%! |
パキスタン系 | 77% | 57% |
2005年の総選挙で、保守党に投票したマイノリティの人は、10%であったが、2010年総選挙ではそれが16%に増え、保守党への支持が徐々に増え、労働党への支持が減っている。労働党は、マイノリティの支持を受けるのを当然のように見ていたようだが、これらの人たちの支持を軽視していては大きな誤りを犯すことになりかねない。一方、保守党は、2010年以降のマイノリティの支持動向をみると、労働党から離れたマイノリティの人たちを惹きつけるには至っていないが、これらのマイノリティの支持を拡大できる可能性がある。保守党はマイノリティの下院議員を増やし、そのイメージを変えるよう努力している。それでも、まだ普通の人にはあまり関係がない、特権階級的な白人の政党というイメージが強い。これを変化させることができれば、マイノリティの支持拡大に結び付くだろう。
現在、非白人は、人口の14%、800万人余りであるが、イギリスの人口増加の8割を占め、今世紀半ばまでに人口の20から30%を占めるようになると見られている。
結局、マイノリティの割合が多くなればなるほど、その存在が普通になる。その結果、マイノリティ対策を打つというよりも、誰でもが平等に扱われるような社会になれば(そのような社会になりつつあることが労働党の支持の減少につながっていると思われるが)、マイノリティは差別を受けるので労働党支持という構図ではなく、その政党支持は極めて流動的なものとなるように思われる。
イギリスの人種的変化は、イギリス社会の魅力をさらに高めている面がある。イギリスは移民を受け入れすぎ、失敗したと批判されているが、長期的に見ると人種的偏見を減少させ、社会の調和・繁栄に役立つ面があるように思われる。