移民の数が再び増加

キャメロン首相は、2010年の総選挙で、2015年までに年間の移民数が10万人を下回るようにすると約束した。しかし、この望みは到底かなえられないことがはっきりとした。この3月までの1年間で、正味の移民の数が243千人だったと統計局が発表したからだ。この統計は3か月ごとに発表されるもので、来年5月に予定される次期総選挙まであと何回かの機会があるが、その結果が10万人以下を下回る可能性はほとんどない。

正味の移民の数は、居住するために移入した人の数から、海外に移出した人の数を差し引いたものである。政府は移入者の数をコントロールできたとしても、移出者の数はコントロールできない。しかもEU内(若干のEEA加盟国も含む)からの移入は、域内の移動の自由のために、コントロールできない。

最近の正味移民数の増加は、その3分の2EUからである。EUは景気が停滞しているが、イギリスは向上している。すなわち、これらのEUからの移民はイギリスに仕事を求めてくる。一方では、それぞれの本国の景気が上向かないと帰国する意欲はそう大きくならない。また、イギリスからオーストラリアやニュージーランドなどへの移住は、イギリスで仕事が求められるのでそう大きくない。

つまり、正味の移民数の数を一定の数字までに抑えると約束したこと自体に欠陥がある。コントロールできないのに約束を守ることはできないからだ。 

一方では、イギリスの景気回復はキャメロン首相、オズボーン財相の求めたことである。その経済はまだぜい弱だと言われながらも、成長率がG7でトップである。自分たちの成功で自分たちの首が絞められている形になっている。もちろん移民の問題に国民の関心がなければ別だが、国民の最大の関心事の一つである。

正味の移民の数(暦年12月末まで)は以下の通りである。

2011年までは20144月の統計局数字。2012年と2013年は暫定値) 

このままでは、キャメロン首相が2010年の総選挙で、多すぎると主張した当時の移民数を大きく下回ることは困難で、移民の数をそれほど減らせなかった(もしくは増える可能性もあるが)キャメロン政権下の移民政策の責任を問われることは必死の状況である。

なお、統計局の発表では以下の点にも触れている。

  • 2013年には、イギリス住民の8人に1人(12.4%)が外国生まれだった。2004年には11人に1人(8.9%)だった。
  • 2013年には、イギリス住民の13人に1人(7.8%)がイギリス国籍を持っていなかった。2004年には20人に1人(5%)だった。
  • 2013年には、イギリス以外のEU国籍を持つ住民の数(2507千人)が、それ以外の国籍を持つ人の数(2394千人)を上回った。2004年に人口動態調査を始めて以来、初めてのことである。
  • 2013年には、国外で生まれた人の最多出生国はインドで、推定734千人(海外生まれの人の9.4%)だった。
  • 2013年には、イギリス国籍を持たないイギリス住民で最も多いのはポーランド人で推定726千人(非イギリス国籍者の14.8%)だった。