政治の目で見る国勢調査(How to look at the Census)

国勢調査の結果は政治家にとっては、情報の宝庫と言える。政治家はこれから学べる、もしくはそれまでの情報や分析を再確認できるからだ。ここでは、イングランドとウェールズの2011年の国勢調査に関するタイムズ紙のフィリップ・コリンズの見方に若干のコメントを付け加えてみたい。なお、コリンズは、ブレア元首相の下でスピーチライターを務めた人物で、プロとしてこのような分析をしてきた人である。

①人口の30%は今や専門的、もしくは技術的な職業についている。今でも多くの人々はブルーカラーとホワイトカラー、そして現場労働者と管理職といったような、かなり一面的な見方をするが、現代では、こういう固定的な見方では当てはまらない人たちが増えている。こういう人たちの支持を得られなければ、選挙で勝てない。かつてブレア元首相は、こういう人たちやいわゆる中流階級を吸収するために、労働党の看板をニュー・レイバーとし、それまでの労働党の路線を修正した。
②人口の4分の1近い人たちは、健康・医療、ソーシャルワーク、そして教育の分野で働いている。つまり、こういう人たちの支持を受けられるような政策を訴える必要がある。保守党が「思いやりのある保守党」を打ち出しているのはこれに関係がある。
③イングランドとウェールズの人口が2001年と比べて370万人増え、5610万人となったが、この増加した人口の半分は、移民によるものである。外国で生まれた人の大多数は労働党へ投票する。
④6人に1人は65歳以上となったが、この層は投票率が高い。この人たち向けの政策は重要である。
⑤10人に1人が病気の家族の面倒をみている。英国でもソーシャルケアの危機が叫ばれているが、この分野への政策が重要である。
⑥英国人には家を持つ、という夢がある。家の所有率が2001年の64%から2011年の60%に下がり、そして借家は、9%から15%に上がった。国民の夢の回復が重要である。

法務省が新しい出所者再犯防止対策を発表(Measures to prevent re-offending)

法務大臣が、刑期12か月未満の出所者を対象に再犯防止のための新しい制度を導入すると発表した。これらの出所者の1年以内の再犯率が56.8%と高いことから、それを低くするための対策である。

刑期が1年以上の者については、服役後、許可条件付きで保釈され、その条件には保護観察官と定期的に会ったり、指定宿泊所に住んだり、麻薬やアルコール依存症のリハビリなどが含まれている。

しかし、これまで、刑期12か月未満の出所者は、基本的に、46ポンド(6千円)を与えられ、刑務所の門から出るだけであった。しかし、これを改め、メンター(助言者)にサポートさせる体制を敷く。メンターは、更生した元服役囚を含み、服役囚が出所する前から本人に面会し、お互いによく知っているようにする。また、私企業や慈善団体などの協力を得、出所時から、それぞれの出所者の住む場所や社会福祉手当、リハビリ、さらには求職相談やトレーニングを受ける準備ができている体制とする方針だ。これらの出所者は、家庭として機能していない環境にあることが多いため、きちんと面倒を見る必要があるためだ。

この計画は、必要な法制化作業などを経て、2015年までに実際に運用されることとなるという。この仕事に携わる私企業や慈善団体などは、再犯率を低くできた場合のみに政府から報酬を受けることとなる。

この計画が成功し、再犯が減れば社会に大きく貢献することになるだろうが、計画通りにいくだろうか。まず、費用の問題である。2011年4月から2012年3月の間に12か月未満の刑期を受けた者は5万人余りいる。それらの人たちに上記のような「サービス」を提供することが、省予算が4分の1カットされる状態で可能かどうかだ。

さらに、刑務所の中では、麻薬が流通しているとよく言われる。刑務所に入ったために悪くなったという人も少なからずいるようだ。まずは、服役中の更生にさらに力を入れる必要があるように思われる。刑務所を出てからの更生だけでは難しいかもしれない。