低い投票率の予測される次期総選挙

スコットランドの首席大臣で、スコットランド議会の最大政党スコットランド国民党(SNP)の党首であるハムザ・ユーサフが、次期英国首相はキア・スターマーだと発言した。スコットランドで労働党が勝たなくても、それ以外の地域で労働党が大きく勝つからだとした。

選挙に関する世論調査の権威ジョン・カーティス教授は、現在の世論調査では、労働党が政権政党の保守党に19%の差をつけているとした上で、保守党のスナク首相も労働党のスターマー党首もあまり人気がなく、次期総選挙の投票率は大きく下がるだろうとした。その大きな理由は、労働党が右に近寄ったため、労働党と保守党との政策の差が少なくなったためだ。

そして有権者は、もう結果が決まったような選挙では投票意欲に欠けるとした。そのような状況では、どの政党支持者も投票意欲が欠ける傾向にあり、投票率が下がっても結果に大きな差はないという。

近年の投票率の推移は以下のとおりである。

この中で注目されるのは、トニー・ブレア率いる労働党が地滑り的大勝利を得た1997年と、その4年後の2001年総選挙の投票率である。2001年には、ブレア労働党が明らかに勝つという状況で、投票率は大きく下がった。次期総選挙は2001年のようなことが起きる可能性が高い。

次期英国総選挙はいつ?

次期総選挙は、下院議員の任期の終了する2025年1月までに行われなければならない。それではいつ頃行われるのだろうか?

これまで、スナク首相が2025年の可能性を否定したとされ、2024年中に行われる見通しが強くなった。さらに予算発表を通常より早い3月6日に行うこととしたため、5月2日の地方議会議員選挙と同時に総選挙が行われるのではないかとする見方も強まった。さらにスナク首相の、総選挙は2024年後半を「仮の予定」としているとの発言があった。

総選挙の投票日は、解散してから25日の平日(土日などを除いた日数)後に行われることになっている。すなわち、首相が解散しなければ、2024年12月17日に自動的に解散される。かつて、首相の解散権を封じた任期固定法が2010年の保守党と自民党の連立政権の発足で設けられたが、それが廃止されたため、首相の解散権が復活した。そのため、12月17日まではいつでも首相の判断で解散の時期を決めることができる。それでもスナク首相の「仮の予定」は、きわめてあいまいだ

スナク首相の場合、3月の予算で減税など、有権者の歓迎する傾向の強い政策を発表した後、解散するのではないかとの憶測がある。ただし、スナク首相率いる保守党は、世論調査で野党労働党に15から20%の支持率の差をつけられている。また、スコットランドの政治を握ってきたSNP(スコットランド国民党)が前党首の失脚などで支持が大きく弱まっており、労働党がスコットランドでSNPを上回る議席を獲得する可能性が高まっている。そのため、次期総選挙では、労働党の勝利が確実視されている。その中、スナク首相は、これからの経済状況などを見極め、また、有権者の関心の高い政策の達成度を考慮し、慎重に解散の時期を模索すると見られる。それでもこれらの状況が大きく変わる可能性は少ない。一方、12月17日の自動解散まで待つと、首相の地位に居座りたいだけで解散のできない意気地なしと言われかねない。結局、2022年10月25日に首相に就任したスナク首相は、2年間首相を務めたとする記録を残すため、2024年11月ごろをめどに総選挙を行うと見る方が確かではないかと思われる。