次々出てくるジョンソン首相の権力濫用と嘘

2022年1月26日、ジョンソン首相がその権力を不適切に使った話が出てきた。2021年夏のアフガニスタン撤退の際、人の撤退よりも、動物の撤退を優先したことである。

ことの次第はこうである。2021年夏、アフガニスタンでイスラム教過激組織タリバンが権力を掌握し、首都のカブールを実効支配していたアフガニスタン政府を支えてきたアメリカ軍や英国軍などが撤退した。それまでのアフガニスタン政府が急に崩壊したため、外国人や、西欧関係国やその機関で働いていたアフガン人などが逃げようと懸命になった。

その中、アフガニスタンに拠点を置く、元英国海兵隊員の営むチャリティが、多くの人が撤退・国外退去で必死になっていた混乱の中、約170匹の犬と猫をカブール空港から英国に飛行機で送った。その前、英国の国防相は、そのような目的を助ける余裕はないと明言していたが、その時、ジョンソン首相が、英国外務省に、その関係者と動物の飛行機での撤退を助けるようにと指示を出していたことが改めて政府のEメールで確認されたのである。

ジョンソン首相夫人は動物愛好家で、動物関係のチャリティで働いている上、多くのチャリティと関係がある。動物のカブール撤退を支援した人物が、首相夫人のカリーに連絡を取り、ジョンソン首相に働きかけたと証言している。また、外務省の当時の担当者の1人で、内部告発をして外務省を辞職した人物が、ジョンソン首相の指示があったと下院の外務委員会に証言している。しかし、ジョンソン首相は、そのような話は完全にナンセンスだと主張してきていた。今回のEメールは、英国のアフガン撤退にまつわる調査の資料に含まれており、外務委員会が公表したのである。

この問題は、パーティゲート同様、ジョンソン首相本人には、そう大きな問題ではないのだろう。しかし、ジョンソン首相が、「嘘」でその場しのぎをする体質は変わっていないといえる。国民の政治と政治家に対する不信は、英国の有権者にとって、コロナ問題の次に大きな問題となっていることが、世論調査でわかった。

スー・グレイのパーティゲート報告書

2022年1月25日、ロンドン警視庁が過去2年ほどの間に首相官邸などの場所で開かれた「パーティゲート」の取り調べを始めると発表した。これはパーティゲートを調査してきたスー・グレイからの連絡を受けてである。それを受けて、数日後には発表されると見られていたグレイの報告書の発表は遅れることとなると思われていた。

ところが、グレイは、既に報告書をまとめ終えており、1月25日夜、もしくは1月26日午前中にも首相に提出するものと見られている。ジョンソン首相は、報告書を受け取ったあと、①その報告書のまとめだけ、②報告書そのまま、または、③報告書を黒塗りして発表するなどの自由があると思われていたが、グレイの報告書には「まとめ」はついておらず、しかもグレイはそのまま全体を発表されるつもりでいるとされる。これは、ジョンソン首相の誕生日パーティをすっぱ抜いたITVの政治部長のツイッターだが、BBCもそのツイッターを取り上げてコメントしている

ジョンソン首相が、グレイ報告書全体を発表しなければ、何か隠し事があると思われる可能性が強いため、いずれにしても報告書全体が発表されるだろうが、内容によっては、苦渋の選択となりそうだ。