EU離脱後のイギリスの経済への影響

コロナパンデミックの影響で、EU離脱後のイギリスの経済状況がどうなっているかわかりにくい面がある。イギリスは、2020年1月31日にEUを離脱し、12月31日に貿易などの移行措置が終了した。イギリスのEU離脱に賛成した人たちは、イギリスのEU離脱後、短期的な悪影響はあるだろうがやむをえないと思っている。しかし、その悪影響は具体的に出ており、長期的なものであるという見方がある。具体的には、EUとの貿易に悪影響が出ており、外国からのイギリスへの投資が減っているという。

コロナパンデミックがやや落ち着いてきて、世界貿易がブームになっている中、イギリスからのEUへの輸出は2019年レベルより下がっており、イギリスの輸出企業は、EU離脱に関連した「お役所仕事」の増加に影響を受けているそうだ。また、外国からの欧州への投資のイギリスへの割合が減っており、特に製造業へのイギリスへの外国直接投資は2015年には欧州全体の13%だったが、今では8%余りになっているという。

イギリスは、EU以外の国との貿易交渉に躍起だ。EUの結んでいる合意の継承交渉を進めるとともに新しい貿易合意も結んできている。イギリスの貿易の2%を占める日本との新しい合意も結んだ。これらが、どの程度実り多いものとなるかは今後の課題である。

イギリス第二の都市バーミンガムの吸引力

労働党が政権に就けば、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行の部門をイギリス第二の都市バーミンガムに移すという考えを発表した。この背景に見られるのは、単に、政府関係機能を中央のロンドンから地方に移すというだけではなく、人やビジネスがロンドンから他の地域へ移り始めている動きだ。

ロンドンから160キロほど離れたバーミンガムは、産業革命後工業都市として発展。高速道路でつながっている他、現在電車で1時間半足らず。2026年にはハイスピード列車(HS2)でつながれ、49分となる見込み。なお、HS2は、バーミンガム近郊経由でイングランド北部のマンチェスターやリーズにもつながる予定。さらに近郊にはバーミンガム国際空港もある。将来的には、イングランド南部のロンドンと北部、さらにはスコットランドとをつなぐ中継地として重要だ。

イギリスの議会が改修を迫られているが、その一時移転先にバーミンガムの名が挙がった。この案の実現可能性は、国会議員がロンドン好みのためほとんどない。しかし、人口がイギリス第二の110万人近くで、その周辺のウェストミッドランド地方は300万人近い人口があり、自動車産業などハイテクを含む多くの産業がある。

大手の銀行HSBCやドイツ銀行、さらにはPwCもそれらの主要拠点がバーミンガムに移ることに見られるように、イングランド銀行が移転してきても、そのニーズを支える基本的な能力がある。一方、ロンドンの住宅価格と比べると割安なウェストミッドランドに居を移す人もかなり増えている。

イギリスのEU離脱でEUとの将来の関係に不安があり、ロンドンからEU内に拠点を移すことを検討した企業も多いかと思われる。その過程で、ロンドンでなければならないとする考え方が弱くなったように思われる。EUとの交渉の見通しが少し明るくなってきた現在、バーミンガムや、その他の地域に目を向け始めるビジネスもかなりあるだろう。