補欠選挙でさらに弱まったジョンソン首相

6月23日に2選挙区で行われた下院議員補欠選挙は、24日午前4時ごろに結果が出た。予想通りジョンソン首相の率いる保守党が2議席とも失った。労働党が1議席(2019年総選挙までは労働党の強い地域で、いわゆるレッドウォール議席)、そして自由民主党が1議席(保守党の圧倒的に強い地域でいわゆるブルーウォール議席)を獲得した。

パーティゲートをはじめとする数々のスキャンダル、保守党下院議員のジョンソン保守党党首の信任投票で予想外に多くの不信任票が投じられたこと(信任211、不信任148)、さらに今回の補欠選挙の結果で、ジョンソン首相の権威はさらに弱まった。保守党幹事長(Chairman of the Conservative Party:党首が指名、任命する)のオリバー・ダウデンは24日午前5時35分に辞任した。

このような重要局面に立ちながらも、ジョンソン首相は、ルワンダで行われる英連邦会議や欧州訪問で一週間海外である。11%にも達する物価急上昇の中、燃費や生活費の高騰で多くの国民が苦しみ、また、鉄道ストライキの終わりも見えない中、ジョンソン首相の立場は苦しい。

保守党の党首選挙を預かる1922委員会が、1年間は2回目の党首信任投票ができないという制度を改めるという憶測が出ている。下院の名誉委員会(Privileges Committee)が、パーティゲートを巡ってジョンソン首相が下院で嘘の発言をしたかどうかの調査でジョンソン首相を非常に厳しい立場に追い込む可能性があるが、ジョンソン首相が保守党党首・首相を自発的に辞任する可能性はほとんどないと見られている。今後の展開が注目される。

5月5日地方選挙はそれほどジョンソン首相の痛手にならない

ジョンソン首相は、率いる保守党の議員の女性差別・蔑視問題やパーティゲート、高インフレ下の生活費の問題など、多くの問題を抱えている。世論調査の政党支持率では、野党第一党の労働党に6ポイント差をつけられている。保守党下院議員の中ではジョンソン党首(首相)を他のリーダーに入れ替えるべきだという声が強くなっているが、5月5日の地方選挙の結果とパーティゲートのスー・グレイの最終報告書を見てから決めるという議員が多い。そのため、この地方選挙の結果が注目されている。

ただし、世論調査の権威ジョン・カーティス教授によると(5月2日BBC Radio4 Today 2:41から)、この地方選挙は、それほどジョンソン首相の痛手にならないという。それは以下の理由による。

イングランド

  • 前回の地方選挙は2018年に行われたが、その当時の首相(保守党党首)は、ジョンソン首相の前任のメイ首相だった。この地方選挙では、労働党が、コービン前党首の下、よい結果を収めた。事前の政党世論調査は保守党と労働党がほぼ互角だった。現在、保守党は労働党を6%下回っているが、これは、票の動きでいうとその半分の3%の差となる。3%の差はそれほど大きなものとは言えない。
  • 今回の地方選挙の大半は、既に労働党の強い地域で行われる。保守党と労働党の競合している地域ならば比較的小さな票の動きで議席数に差が出やすいが、既にどちらかが強い地域ではそれほど大きな議席数の差にならない可能性がある。
  • いくつかの地域では、議会の過半数が保守党から労働党に移ることが予想されているところもある。ただし、労働党の強いロンドンではすべての議席が争われるが、ロンドン以外の地域では、ほとんどが議席の3分の1のみを争う選挙である。そのため、今回の選挙で地方議会の構成が大きく変わる可能性はそれほど大きくない。

スコットランド

前回の地方選挙は、2017年。スコットランドで非常に強いスコットランド国民党(SNP)は2017年には最も多くの議席を獲得したものの、不本意な結果だった。一方、保守党はスコットランドで2番目の良い結果を収めた。しかし、昨年のパーティゲート発覚以来、保守党の世論調査支持率は下がり、2位の労働党にも差をつけられ、2016年以来の3位となっている。労働党の復活という見方があるが、2017年に思い通りの議席を獲得できなかったSNPが議席を増やす可能性が高く、労働党の大きな議席増には結びつかない可能性がある。

これらの見通しから、この地方選挙がジョンソン首相の大きな痛手となる可能性は少ない。