国会開会式(The State Opening of Parliament)

英国の国会開会式は、ファンファーレと昔ながらの儀式に満ちている。今日も同じだった。

大法官の法務相ケネス・クラークが、国会のあるウェストミンスター宮殿南側の君主の入り口の中で、女王のお越しを待ち受ける。大法官は手に「女王の財布」と呼ばれる50センチ四方ほどの大きさの薄いバッグを持っているが、この中には、「女王のスピーチ」と呼ばれる政府の法制化プログラムに関するスピーチの原稿が入っている。これはB5判サイズぐらいの薄いブックレットのようなものだ。

女王が夫君のフィリップ殿下と馬車に乗って国会に近づいてきた。オーストラリアン・ステート・コーチと呼ばれる馬車である。近衛騎兵隊が随行してきている。また、国会西側の道路を隔てた反対側には、赤い上着と黒い熊毛の帽子をかぶった近衛兵が整列している。

女王は、11時15分に到着した。軍服を着たフィリップ殿下が先に馬車を降り、女王に手を差し伸べて女王が降りた。女王は白い厚手のコートを着ている。フィリップ殿下がそのコートの襟に手をやり、上に押し上げるのを助けた。

国会の建物の上には、女王がウェストミンスター宮殿内にいるということを知らせる旗が揚げられている。

女王とフィリップ殿下は、下院のリーダーのジョージ・ヤングや大法官に先導されて、階段を上がった。かなりの高さの階段である。86歳の女王と、この6月に91歳になるフィリップ殿下には大変なのではないかと思われた。それでもゆっくりと難なく上がられた。そしてお召し替えの部屋に向かわれた。

一方、下院議長が下院に向かう。警視が「脱帽!」と指示して、下院議長ジョン・バーカウが議場に向かう。そのガウンの裾を御付の人が持っている。先導者から一列の行進である。議場には、デービッド・キャメロン首相や対立政党の労働党党首エド・ミリバンドをはじめ多くの下院議員が待っている。

女王の用意ができて、ファンファーレが吹かれる。フィリップ殿下が女王の手を引いて上院(貴族院)議場に向かう。女王は、王冠を被り、長いガウンを着ている。その後ろには4人の男の子がガウンの裾を持って従う。侍女らが続き、その後を、軍のトップらが従う。

女王が上院議場の女王座に座り「お座り下さい」と言うと、フィリップ殿下は女王座の横の王座に、そして上院議員が椅子に座った。

黒杖官(ブラック・ロッド)が下院議場に向かう。その面前で、議場の扉がバーンと閉じられる。これは下院の独立を象徴する儀式である。そしてその扉を黒杖官が持つ杖で、バーン、バーン、バーンと3度ついた。その扉には、その杖でついた跡が残っている。

扉が開いて、黒杖官が中に入る。そして、「女王陛下が、直ちに貴族院に出席するよう命じられました」と言う。下院の守衛官がメイスと呼ばれる職丈を取りあげ、下院議長について、黒杖官の後を上院に向かう。

その後を、首相と労働党党首が和やかに話しながら続き、副首相と労働党副党首、そして大臣とその影の大臣ら、そして他の下院議員たちと続く。

下院議長と首相ら下院議員が、上院に入り、女王座とは反対側の入り口の周辺に立っている。上院は、ローブを着た上院議員で一杯である。

大法官が女王座に向かって階段を一段ずつ上がり「女王の財布」の中から「女王のスピーチ」を取り出して女王に渡す。それを女王が座ったまま読む。

「私の大臣たちの最優先事項は、赤字の削減と経済の安定の回復である」と読み上げ、15の法案と4つの草案の概略を述べた。これ以外のものも提出されるだろうと最後に言い、政府がさらに法案を提出できるようにしておく。このスピーチは、政府が書いたもので、閣議で承認されたものである。なお、5月3日の地方選挙で保守党・自民党が大敗を喫し、それ以降、女王のスピーチを書き直したという憶測が流れたが、女王のスピーチはそれ以前にできており、その憶測は正確ではないとBBCの記者が述べている。

女王がスピーチを読み終わると、それを大法官に渡し、それを「女王の財布」に入れる。

フィリップ殿下が女王の手を取り、女王が左右に軽く会釈して出口に向う。11時45分くらいであった。

ロイヤルギャラリーを通過してお召し替えの部屋に向かう。フィリップ殿下は女王の手を取っている。ロイヤルギャラリーでは、全員が起立している。

下院議員は下院議長を先頭に全員下院に戻る。守衛官が職丈を戻す。

女王は、着てきたコートに着替え、ファンファーレの後、馬車の待つ国会の入り口に向かう。階段を下りた。フィリップ殿下が先に馬車に乗る。そして11時55分ごろに馬車が出発した。

王冠が運ばれてきた。まず、4人が馬車に乗り込み、それに王冠が渡された。この馬車が出発した時、ちょうど国会の時計塔、ビッグベンがボーンボーンと正午の時を告げた。

英国外の政治家の納税申告書公開動向について(Other Countries’ Tax Return Disclosure)

2012年4月13日のタイムズ紙でHeather Brookeが政治家の納税申告書公開の状況についていくつかの例を取りあげているので紹介しておきたい。

 インドでは、2002年の高等法院裁決で、すべての国会議員候補者はそれぞれの配偶者、扶養家族も含めて、すべての資産、学歴、容疑も含めた犯罪歴を公開するよう義務付け、これらはオンラインで閲覧可能である。

 スカンディナビア諸国のスウェーデン、ノルウェー、フィンランドでは、政治家だけではなくすべての人のものが公開される。

 世界銀行と不正資産回収(StA)イニシアティブの調べたところによると世界中の137の裁判権下で政治家に資産公開義務があるという。
参照:http://www1.worldbank.org/finance/star_site/publications/Public-Private-interest.html

 また、国際連合腐敗防止条約では、すべての公職にある者の公職以外の行動、雇用、投資、資産、かなりの贈り物や便益についての公開を求めている。
参照:http://www.unodc.org/unodc/en/treaties/CAC/