ストライサンド効果を生んだジョンソン首相夫人に関する記事の削除

英国の公共放送BBCの看板番組Radio4 Today は、政治ジャーナリストの誰もが毎朝聞いておかねばならない番組として有名だ。2022年6月20日の番組では、ガーディアン紙の記事が取り上げられた。この記事はタイムズ紙の記事が説明もなく取り下げられたいきさつについてのものである。

ジョンソン首相夫人がジョンソン首相と結婚する前の2018年、当時外相だったジョンソンが、現ジョンソン夫人のカリーを自分の首席補佐官にしようとした動きがあったことをタイムズ紙が6月18日付の朝刊の早版で報じた。ところが、その記事が遅版では説明もなく取り下げられた。そのことをガーディアン紙が、当の記事を書いたタイムズ紙ジャーナリストの「事実と信じている」とのコメントもつけて詳細に報じたのである。

事実を隠そうとして、記事を抑えようとする動きはよくあるが、時に逆効果を生むことがある。これはストライサンド効果とよばれる。ジョンソン首相夫人は、首相官邸住居部の改修で高額な壁紙を使ったなど多くのスキャンダルに関係しており、このような報道を歓迎しないのは明らかである。かつてブレア首相の広報局長だったアラスター・キャンベルは、タイムズ紙の親会社がこの記事の取り下げを指示した可能性を示唆した。

このような記事が、現在の政局に与える可能性は少ないが、それでもジョンソン首相には、数多くの後ろめたい過去があることを改めて示したものといえる。