コロナワクチン接種に報酬を与える試みの是非

コロナワクチン接種をすれば、コロナに感染しにくくなり、感染しても発症したり、重症化して病院に入院したり、または死亡するリスクが大きく減ることがわかっている。さらに他の人にうつすリスクも減る。

イギリスでは今や大人の10人のうち9人が1回目の接種を受け、4人のうち3人が2回の接種を受けている。それでも、40歳未満の人たちでワクチン接種の1回目を受けた人は4分の3にも満たない。イギリスでは、接種のペースが鈍化しており、特に若い世代でコロナ接種に消極的な人が多い。

コロナワクチン接種を促進するために、世界には、おカネがもらえるなど何らかの奨励策を設けようとする動きがある。イギリスでもある大学が、10本の5000ポンド(約75万円)のあたる奨励策を打ち出した。ただし、このような手法がどれほど有効かは疑問がある。ガーディアン紙への投稿で2人の学者は逆効果になると主張している

まず、ワクチン接種は、それぞれの人のためになるだけではなく、社会全体の利益になるのに、そのような「報酬」を与えると、うさんくさく感じられることである。特にワクチン接種の副反応に疑いを持っている人たちである。

行動学的研究によると、利他的な行動におカネを払うことは逆効果になる場合がよくあるという。献血の例でみると、自発的に対価なしで行うのが普通になっている場合、おカネを支払うと献血者の数が減るかもしれない。また、慈善事業への募金を集める人たちは、少しばかりのお金を支払われる場合より、支払われない方がより努力し、より多くのおカネを集めるという。

それぞれの状況によるだろうが、長期的にみれば、特に、若い人たちの利他的な行動をするやる気を削ぐかもしれない。ワクチン接種をなるべく早く進めたい気持ちは理解できるが、「報酬」を出すのは慎重に行われなければならないように思われる。