ハンコック厚相の弁明

2021年5月26日に開かれた下院の2委員会合同委員会での、首相のトップアドバイザーだったドミニク・カミングスの7時間にわたる証言の中で強く批判されたマット・ハンコック厚生・社会ケア相が、5月27日に労働党の影の厚生・社会ケア相が求めた緊急質問に立ち、下院議場で議員たちから質問を受けた

カミングスは、5月26日の委員会での証言で、以下のような主張をした。

1.ハンコック厚相は、政府部内でも公でも嘘をつくので更迭すべきだと、当時の内閣書記官長(Cabinet Secretary)とともにジョンソン首相にアドバイスしたが、首相は更迭しなかった。これは、ジョンソン首相が、ハンコックが現在のポストにいると、政府のパンデミックへの対応について早晩行われる見込みの公的調査で、ハンコックに責任をかぶせられると言われたからだと主張した。

2.昨年春、ハンコックが、病院のベッドを空けるため、入院中の高齢者約2万人をケアホームに送り返したことについて、厚相が、カミングスとジョンソン首相に、PCRテストをきちんとして退院させると請け合ったが、実際にはPCRテストはあまり行われず、その結果、ケアホームでコロナウィルスが広がり、何万人もの人が亡くなったと主張した。

これらの批判を受けて、ハンコックは、5月27日の下院では、具体的な話には一切触れず、自分の誠実さに関する主張は本当ではないとし、カミングスの証言は、「裏付けのない主張」だと一蹴した。しかし、5月27日夕方に行われた首相官邸でのハンコックによる記者会見では、質問がケアホームでの死者の問題に集中した。ハンコックは、自分が首相らに高齢者の退院前のテスト実施を約束したかどうかに触れることなく、PCRテストの実施能力を高める必要があったと繰り返し述べるにとどまり、テストをほとんどせずに約25000人を病院からケアホームに移し、それが一因でケアホームでの死者数が42000人にも上ったことについては触れなかった。

ハンコック厚相の苦難はまだ始まったばかりと言えるかもしれない。