ブレクシットが「チキンゲーム」と化す可能性

メイ首相が12月11日に予定されていた下院の投票を延期する。この結果、メイと下院との「チキンゲーム(どちらが長く恐怖を持ちこたえて踏ん張れるかを競うゲーム)」となる可能性が出てきたように思われる

下院の投票の延期は、メイのEUとの合意に他の政党がこぞって反対する中、メイの率いる保守党内でも100人以上の下院議員が反対しているため、それが下院の承認を受ける可能性はなく、逆に大差で否決され、メイ首相が辞任を迫られる可能性が高いと判断したためのものと思われる。その代わり、EU側と再び交渉してさらに譲歩を勝ちとり、そのあと下院の投票を実施するという触れ込みだろう。

この判断は、欧州司法裁判所が、イギリスは自らの判断でブレクシットをやめることができると判示したことに無関係ではないように思われる。

イギリスがブレクジットをやめれば、イギリスはEUに今のまま残ることになる。EUは、これ以上難しい交渉を続ける必要がない。アイルランド島の中の国境問題も現状通りですむ。

一方、メイは、自分が交渉して成し遂げたEUとの合意は、2016年の国民投票で明らかに示された、EUからの自由な移民の問題を抱える現状の関係よりもよいと主張するだろう。すなわち、メイの合意は、たとえ、バックストップと呼ばれる、アイルランド島の中の北アイルランドとアイルランド共和国の国境問題を顕在化させない方策を取らざるを得ない状況となったとしても、いずれ将来解決し、イギリスはEUの呪縛から逃れられる「現実的な方策」だと訴えることができる。

下院での投票が延ばされると、実際いつ投票が行われるかが大きな焦点となる。EU側は、再交渉に応じる気配を見せていない。その中で、メイがその合意案に反対する保守党の下院議員の気持ちを変えられるだけの譲歩を勝ち取れる可能性はほとんどないだろう。そうすると、投票が来年に入ってもかなり長期間行われない可能性がある。2019年3月29日となっているイギリスのEU離脱の日が刻一刻と近づいてくれば、大多数の下院議員の恐れている「合意なしの崖っぷち離脱」の可能性がさらに大きくなる。

そしてその結果、メイ首相と下院は、その崖っぷちに向かって猛スピードで走る車の「チキンゲーム」をするようなことになりかねないのではないか。メイの合意を承認するか、離脱をあきらめるかの。

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