なぜアロン・バンクスが注目されているのか?

大金持ちでイギリス独立党(UKIP)の支援者だったアロン・バンクスに焦点があたっている。なぜこの人物が問題なのだろうか?

それは、2016年のイギリスがEUを離脱すべきかどうかの国民投票に関する問題についてバンクスの関与である。バンクスがEU離脱キャンペーンに違法な形で資金支援したのではないかという点と、そのお金がどこから出たか、自分のお金か、EUの混乱と弱体化を狙うロシアからのものか、もしくはロシアの協力を得て稼いだお金から出たのかの点である。

2016年のEU国民投票の結果は、離脱賛成51.9%対、離脱反対48.1%の僅差で、離脱賛成の結果となった。その結果、国民投票を実施した保守党のキャメロン首相は首相を辞任し、後任のメイ首相が来年3月のイギリスのEU離脱に向けて、現在EU側と交渉を行っている。

バンクスは、保険分野で成功し、1億ポンド(150億円)以上の資産があると見られている。その妻はロシア出身であり、バンクスがロシアを訪れること自体、何ら不思議なことではない。しかし、2016年のEU国民投票の前後、バンクスがロシアの外交官らをはじめ、ロシア関係者に何度もあっていることがわかった

1.違法な資金援助

バンクスは、UKIPのファラージュ元党首らの離脱キャンペーン団体「離脱EU(Leave. EU)」を設けたが、それ以外の離脱キャンペーン各種団体を含め、その資金援助総額は900万ポンド(13億5千万円)にも及ぶと見られている。「離脱EU」の支出報告には、既に選挙委員会から違反があったとして、7万ポンド(1千万円)の罰金の支払いを命じられている。これにバンクスらは法廷で争う構えだ。選挙委員会は、この団体のチーフエグゼクティブを警察に告発し、警察が調査を進めている。

2.お金の出どころの問題

バンクスが自らの資金を自ら出していれば、そのこと自体に問題はないが、ロシアからの資金が流れ込んだり、ロシアから利便の提供を受けたりしていれば、問題である。

バンクスは、下院のデジタル・文化・メディア・スポーツ委員会から「偽ニュース」や個人データの悪用について証人として出席するよう何度も求められていた。これは、バンクスのケンブリッジアナリティカというデータ分析会社との関係を中心にし、アメリカ大統領選挙やここでのEU国民投票への影響について調査するものである。バンクスは、ファラージュUKIP元党首と一緒にトランプ大統領とも会っている。バンクスは委員会の召喚を無視する構えだった。しかし、内務委員会への出席などを求める声も出てきており、新しい状況下で出席を承諾した。

なお、バンクスへの調査がどのようなことになっても、それで国民投票の結果が無効になるわけではない。イギリスは、EUを来年2019年3月29日に離脱することに変わりはない。