下院議員を辞任したハイジ・アレキサンダー

労働党のハイジ・アレキサンダー(1975年4月17日生まれ、43歳)が下院議員を辞任した。東京都に匹敵する大ロンドン市の副市長(交通担当)となるためである。

この辞任には様々な理由があるだろうが、最も大きな理由は、労働党下院議員としての将来に希望を持てず、見切りをつけたということである。政治の道を追求してきて、下院議員のスタッフ、地方議員を経て、2010年に下院議員に選ばれた。下院議員になることが目的であっただろうが、それを自らの判断でやめるというのはかなり大きな決断だっただろう。

アレキサンダーの選挙区は、大ロンドン市南側のルイシャムであり、労働党の非常に強い選挙区である。将来、総選挙の労働党候補者に選ばれない可能性はあるが、その可能性は小さく、そこに居続けようと思えばできただろうと思われる。

この転進にはいろいろな要素があるように思われる。

政治的な理由

  • 2015年9月にコービンが予想に反し、圧倒的な支持を受けて党首に選ばれた後、影の内閣に影の健康相として任命された。しかし、2016年6月のEU国民投票で離脱が多数を占めた後、影の内閣のメンバーが多数辞任した中、その先頭を切って辞任した。その時点では、コービンを党首辞任に追い込めるという読みがあったのだろう。そしてコービンを猛烈に批判する記事を新聞に投稿し、コービンは無能で、その影の内閣のメンバーであることが大嫌いだったと主張した。しかし、コービンは、行われた党首選でさらに支持を伸ばし当選した。その上、今や労働党の党員数は55万人を超え、西ヨーロッパ一である。さらにコービンは2017年6月の総選挙で、予想を裏切り健闘し、メイ保守党を過半数割れに追い込み、2015年から労働党の議席数を伸ばした。もし総選挙があれば、労働党が過半数を占めずとも最大政党となる可能性が大きい。そうなれば、コービンが首相となる可能性があるが、これまでのいきさつからアレキサンダーが閣僚や重要な役職に任命される可能性は非常にちいさい。
  • コービンが党首となる過程で生まれた、モメンタムというコービン支持の組織がその勢力を広げている。そのメンバーは3万6千人と言われる。この組織が各選挙区で勢力を伸ばしており、選挙区の労働党支部の幹部の地位を占めつつある。アレキサンダーの選挙区では、モメンタムが分裂しており、労働党の中道派が中心だが、アレキサンダーの影の内閣辞任当時には多くの反発があった。もしコービンが党首を辞任しても、モメンタムの影響力は残り、次期党首にはコービン系の人物となるだろうと思われる。
  • 2016年のロンドン市長選に出馬・当選した、サディック・カーンが労働党候補者に選ばれる運動の責任者をアレキサンダーが務めた。カーンは、今ではコービンと良い関係を保っているが、市長選ではコービンと距離を置き、コービンに批判的だった。ロンドン市民のカーンへの評価は高く、まだ先の話だが、2020年のロンドン市長選でカーンが再選されると見られている。

経済的な理由

その他の理由

  • 自分の能力を生かし、何か挑戦できる仕事にとりくみたいと思ったのだろう。ロンドンの交通、特に自動車による大気汚染対策、サイクリング化、公共交通網の整備発展など課題は多い。

すなわち、現在の労働党の状況では、アレキサンダーには、労働党の中での将来はない。労働党の中で腐って、モメンタムらの圧力に恐れをなしているよりも、自分の能力を評価してくれるカーンの下でやりがいのある仕事に取り組みたいと思ったのだろうと思われる。

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