ホーキング教授の政治観

宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング教授が亡くなった。ホーキング教授には深刻な身体障碍があり、30歳ぐらいまでしか生きられないと言われながら、70代まで生きた。宇宙について新しい見方を提供し、合成音声を通じて世界中で多くのスピーチを行い、世界的に有名な人物である。それではこのホーキング教授の政治観はどうだったのだろうか?

現在のイギリスの面する最大の課題は、EUからの離脱である。ホーキング教授は、イギリスのEU離脱に反対だった。EUの科学研究にマイナスとなると考えたからである。さらに、富は国内だけではなく、国際間でより公平に分配されるべきだと考えており、イギリスがEUから離れ、孤立主義的な立場をとることに反対だった。

イラク戦争にも反対し、この戦争は二つのウソで始められたとし、この戦争は戦争犯罪だと示唆した。また、核兵器は、人類最大の脅威だとし、イギリスの核抑止システムであるトライデントの更新に反対した。核軍縮を難しくする上、危険を増加させ、それをイギリス単独で使うような状況はないため、お金の無駄遣いだと考えたからである。

ホーキング教授は、労働党支持者であった。その考え方の多くは、労働党のコービン党首の考え方に似ている。コービンのイラク戦争を始め、数々の外交政策に対する立場は正しかったと右の新聞メイル日曜版(The Mail on Sunday)のコラムニストがコメント(2018年3月18日)し、話題になったが、その平和主義的な考え方には共通するものがある。

ただし、ホーキング教授は、コービンに批判的だった。コービンの考え方は正しく、その政策の多くは健全だとしながらも、コービンが右のメディアに「極端な左翼」と言われるに任せたと感じたからだ。この批判は当たっているだろう。コービンには唯我独尊的な面がある。それがゆえに多くの支持者がいるが、広がりに欠ける点がある。政権を狙う立場なら、自分の立場をより多くの有権者に受け入れられるよう正当化する努力をするべきだったと感じていたからだろう。