典型的なメイ首相

メイ首相は、決断できない人物だ。決めるのに非常に長い時間がかかる。失敗を恐れるからだ。それでも時には、短時間で決めなければならないことがある。追い込まれて決め、間違った判断をする。

イギリスがEUを離脱する交渉でもそうだ。なかなかイギリスの交渉戦略を決められない。2016年6月の国民投票でEU離脱が決まってからもう1年9か月経つ。メイが首相となってから1年8か月だ。それでもまだイギリスの交渉戦略ははっきりしていない。昨年12月のEUとの第一段階の交渉での最大の問題は、イギリスの一部である北アイルランドと南のアイルランド共和国の間の国境問題だった。追い詰められて、現状通り国境検問のない状態を維持すると約束したが、EU単一市場にも関税同盟にも残らないという前提の下では、それはほとんど不可能だ。

ロシア人の元スパイとその娘が、軍事用レベルの高度な神経剤を盛られて危篤状態に陥っている。その神経剤は、ロシアが作ったとされており、ロシア政府が関連した暗殺事件ではないかと見られている。メイ首相は、内相時代、他のロシア人が放射性物質を盛られて暗殺された事件で、ロシアとの関係を配慮して公的調査の実施を長年遅らせ、批判されたことがある。そのためか、今回は、首相として、ロシア政府に2日で釈明をするよう求めたが、ロシア政府は、全く急ぐ様子はない。振り上げたこぶしを振り下ろすのに困る状態となっている。

メイ首相は、アメリカのトランプ大統領とは全く異なる。トランプ大統領は、基本的にビジネスマンだ。勝つときもあれば負ける時もあると割り切っており、少々の毀誉褒貶は気にしない。ところが、メイ首相は、小さなことにこだわりすぎ、国内政治的な損得勘定にあまりにも多くの時間を費やしている。木を見て森を見ないメイ首相では本来の仕事はなかなか進まない。