関税同盟はどうなる?

メイ首相は、イギリスのEU離脱にあたって、EUの単一市場も関税同盟も離脱すると明言している。単一市場に残れば、EUの4つの自由(モノ、資本、人、サービスの移動の自由)を受け入れざるを得ず、しかもEUの法制の制約を受ける。関税同盟では、モノへの関税をなくすことができるが、独自の判断で他の国との自由貿易協定を結ぶことができなくなる。EUを離脱するのは、主権を回復し、EU市民のイギリスへの移民を制約することが大きな目的であることから考えると、いずれも受け入れることは難しい。

ところが、これまでその立場を明確にしていなかった最大野党の労働党が、EUと新たな関税同盟を結ぶと主張した。EUはイギリスの最も重要な貿易相手であり、関税のない貿易を継続し、労働者を守る必要があるとするのである。さらに、関税同盟を結べば、懸案のアイルランド島内の北アイルランドとアイルランド共和国との国境での検問をする必要がなくなる。

この労働党の動きは、議会で審議中の貿易法に関連して、メイ首相の率いる保守党の下院議員にEUと関税同盟の関係を維持すべきだと主張する人たちがいることに関係していると見られている。すなわち、労働党が関税同盟を主張してこれらの保守党反乱派らと歩調を合わせれば、メイ政権がこの採決で敗れるかもしれないからだ。そのような事態が起きるかどうかは別にして、労働党がその立場をはっきりしたことは、イギリス政治の展開をよりわかりやすくさせる。3月2日のメイ首相のスピーチが俟たれる。