総選挙結果

メイ首相は、68日、イギリス下院の総選挙を実施した。その結果、総選挙前にあった330議席を獲得できなかった。しかも下院の650議席のうち、過半数の326議席(650の半数+1)も下回った。北アイルランドで10議席を獲得した民主統一党(DUP)の協力で、メイ首相は、政権は維持できるものの、この選挙中、そのポリティカル・キャピタルを使い果たし、今やその進退が議論される状況だ。この状態で、11日後に始まるEUとの離脱交渉に臨まねばならない。メイが首相と保守党党首を辞任する可能性が高まっている。

その結果、EU離脱に関しては、メイが移民の制限を優先して欧州単一市場から離れる意思を明確にし、これまで「悪い合意より合意のない方がよい」と度々主張して示唆してきたような強硬離脱の可能性は薄れ、イギリスはソフトな離脱に向かうのではないかという見方が強まっている。

今回の総選挙は、メイ首相が、保守党が圧勝して100議席を大きく上回るマジョリティを獲得するのは間違いないという考えから自らの判断で引き起こしたものである。世論調査で圧倒的に優位な立場にあったためである。

ところが、選挙中に発表したマニフェストの「認知症税」問題、度重なるUターン、それに選挙期間中にマンチェスターとロンドンでイスラム教過激派によるテロ事件があり、選挙戦の様相が大きく変化した。

一方、多くの有権者だけではなく、労働党の多くの下院議員が、コービン党首は強硬左派で無能だと信じていたが、そのコービンが予想外に健闘した。そのマニフェストは緊縮財政を覆すもので、有権者の多くから評価された。若者を中心にコービンブームが起きた。コービンは明らかにこの選挙戦を楽しんでいる雰囲気があった。また、メイと交互に行われた、2度の聴衆らとのテレビでの質疑応答では、メイを上回る評価を受けた。コービンのスピーチには非常に多くの聴衆が回り、その聴衆の数は増える一方で、あるベテラン政治記者は、これほど各地で多くの人が集まるのは、チャーチル以来だとコメントしたほどである。

選挙期間中に実施された世論調査では、保守党と労働党との差が大きく縮まり、当初の20ポイント余りの差から、一桁、そして最後には、1ポイントの差とするものも出てきた。

メイとコービンのいずれが首相にふさわしいかという選択では、メイが418日に総選挙を実施したいと発表した際には、メイがコービンを39ポイント上回っていた。それが投票日直前には9ポイントとなった。それでも多くの世論調査会社は、保守党が過半数をかなり上回るような世論調査を発表していたが、これらの世論調査会社は面目を失った形だ。

69日の午前7時時点、全650議席の644議席が開票済みだが、各党の獲得議席数は以下の通りである。

保守党:314
労働党:
260
SNP
35
自民党:
12
DUP
10
その他:13