苦しむトップ官僚(Suffering top Civil Servants under austerity)

英国では、上級国家公務員は、SCS(Senior Civil Servants)と呼ばれ、日本の官庁の課長級以上を指す。この人たちが、政府の大幅な財政削減と効率化の中で苦しんでいる。その一つの現象に多くのSCSが辞職していることがある。この4月に発表されたものでは、2010年5月の現政権就任時には4350人いたが、その後1009人辞職し、現在は3700人ほどである。(参照以下)http://www.telegraph.co.uk/news/politics/9203416/A-quarter-of-senior-civil-servants-quit-Whitehall-under-Coalition.html

4人に一人が辞めている。その後、財政削減の中で、補充されていないポストもあるようだ。上記の記事では、モラールの低さがその大きな原因のように触れられているが、それだけではないだろう。むしろこれはそれぞれの能力の問題により強く関係しているように思われる。つまり、かつては、問題がでてくれば、それはスタッフ増や外部のコンサルタントに依頼するなど、お金で解決できたが、今では、財政緊縮下で、問題解決には知恵を絞り、効率化などで対応しなければならなくなっているからだ。

6月11日には、HMRC英国歳入税関庁の電話問い合わせへの対応に問題があることがわかった。前政権時代の2009年には、電話待ち中に電話を切る人が10%いたが、平均待ち時間は1分53秒だった。それが昨年には、28%に上昇した。平均待ち時間は5分45秒で3倍になっている。

HMRCでは最近幾つかの大きな失敗が明らかになっている。誤った警告書の送付、税コードの誤りなどで払い過ぎや過少支払いの人が500万人余りおり、さらには、大手企業との納税交渉で譲歩し過ぎているのではないかとの批判もある。企業の節税対策では、ボーダフォンは法人税を英国では全く払っていないと報道された。

財政緊縮下では、特によりきちんと税を集める必要があるが、さらなるスタッフ削減が予定されており、人を増やすわけにはいかない。そのため、より少ないスタッフで、より高いスタンダードの仕事をより効率的に行わねばならなくなっている。これは、これまであまりマネジメントに注意を払ってこなかった能力の乏しいSCSにとってはたいへん深刻な事態といえる。これは、いずれの省庁にもあてはまる。SCS受難の時とも言えるだろう。