保守党党首選と労働党の内乱

現在進行中の保守党党首選と労働党の内乱は奇妙につながっているように思われる。

6月23日の国民投票で、イギリスは欧州連合(EU)を離脱することとなり、残留を推したキャメロン首相が辞任した。そして後任の保守党党首(保守党は下院の過半数を占めており、党首は首相となる)の選挙が6月30日から始まった。

一方、労働党は、政党としてEU残留を支持し、そのキャンペーンを行ったにもかかわらず、コービン党首が熱心に運動しなかったとしてコービン党首不信任案が提出され、また、強硬左派のコービンでは次期総選挙が戦えないとしてコービン辞任を求め、影の内閣の閣僚の3分の2が辞任し、それ以外のポストについていた労働党下院議員も大量に辞任した。そして行われた不信任投票では、不信任賛成172、反対40、無効4、投票せず13で、労働党下院議員たちは、コービン辞任を求めたのである。ところが、コービンは、昨年9月に党員、サポーターの圧倒的支持を受けて当選したことをタテにあくまでも党首に居座る構えだ。その労働党の党首選では、4人の候補者が立ったが、コービンは、59.5%を獲得し、2位はわずか19%だった。

保守党の党首選

保守党の党首選では、まず保守党下院議員が投票し、立候補者を2人に絞り、その2人から党員が郵便投票で選ぶ。立候補者を2人に絞るため、まず7月5日に下院議員が1回目の投票を行い、最も得票の少なかった候補者を除いて2回目の投票を実施、さらに必要があれば同じ要領でさらに投票を行い、2人に絞るということとなる。

今回、第1回目の投票でメイ内相(残留派)が他の候補者を圧倒的にリードする165票、2位はエネルギー担当相のレッドサム(離脱派)が66票、3位のゴブ法相(離脱派)が48票、4位のクリブ労働年金相(残留派)が34票、そして5位のフォックス元国防相(離脱派)が16票だった。メイが全329票(キャメロン首相が投票しなかったと言われる)の半分以上を獲得した。最も票の少なかったフォックスが規定により除かれた後、クリブが自ら辞退し、2人とも1位のメイを支持することを表明した。そして、2回目の投票は、3人の候補者で7月7日に行われ、2人に絞られる。

これでは、圧倒的にメイが優勢なように見える。しかし、メイがいくら多くの下院議員の支持を得ても、最終的には、党員が決めることとなる。保守党の党員らのウェブサイト、コンサーバティブホームが実施した党員の世論調査では、レッドサムが38%、メイが37%、そしてゴブが13%の支持だった。

このコンサーバティブホームは、元保守党副幹事長の億万長者アッシュクロフト卿がスポンサーであり、アッシュクロフト卿は、同じ糖尿病を患うメイを推していると理解していたので、意外に感じたが、アッシュクロフト卿は、同時に、私財を投じて選挙に関する大規模な世論調査を次々に行い、結果を公開している人物であり、世論調査の価値を十分にわきまえていると思われる。

コンサーバティブホームの保守党党首選の党員世論調査の結果は、メイにとっては、大きな警告である。いくら下院議員の支持を得ても、党員の支持で他の候補者を上回れなければ、党首に当選できないからである。

そこでささやかれているのは、メイが自分の支援者に3位のゴブを支持させ、レッドサムを上回る票を獲得させれば、最終の2人は、メイ対ゴブとなるという戦略である。離脱派のレッドサムが相手では、残留派だったメイが勝てないかもしれない。下院議員の数では、離脱派が残留派をかなりかなり下回るが、党員は離脱派が多いと見られている。レッドサムは、同じ離脱派だったゴブ票も惹きつけ、さらに有利になる可能性がある。ゴブは、同じ離脱派のジョンソン元ロンドン市長を裏切って党首選を断念させたとして、かなり批判を受けており、メイは、ゴブなら勝てるという見通しがある。

ただし、元銀行家のレッドサムは、その過去の投資や収入などで、何らかの問題が発覚する可能性もゼロではなく、7月7日にならないと、実際にどのような動きがあるかは予測しがたい。

なお、レッドサムが2回目の投票で最後の2人の1人として勝ち残れば、メイと女性同士の対決となり、サッチャーに引き続き、2人目の女性首相が生まれることとなる。

労働党の内乱

労働党は、党首のコービンが辞任の求めを拒否する構えを崩しておらず、反コービン派の議員が、必要な下院議員51人の支持を得て党首選を求め、党首選が行われる可能性が高い。2人が立つ準備ができていると言われる。しかし、コービン危機が伝わって以来、1週間で6万人の党員が加入したと言われる。この新規党員の大半は、コービン支持と見られ、昨年9月の支持がかなり弱まっているという分析もあるものの、もし党首選が行われると、コービンが勝つのはまず間違いないと見られている。

民主的であるはずの労働党下院議員多数が、党員の支持のあるコービンを追い落とそうとしているのは、現下に繰り広げられている保守党の例を見ても少し奇妙に映る。

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