スコットランドの情勢

スコットランドでは、下院の全650議席のうち、59議席割り当てられている。2010年総選挙では、労働党41議席、自由民主党11議席、スコットランド国民党SNP6議席、保守党1議席だったが、現在の世論調査の状況では、支持率がSNP54%(2010年総選挙では20%の得票)、労働党が20%(2010年42%)で、その差は、縮まるどころか逆に拡大する傾向だ。5%(2010年19%)の自民党が獲得できそうなのは1議席だけ、17%(2010年17%)の保守党は現有の1議席を失い、これまでの総選挙で圧倒的な強みを見せていた労働党は、ほとんど一掃される勢いである。

この背後にあるのは、SNP党首ニコラ・スタージョンへの評価が極めて高いのに対し、労働党のミリバンド党首への評価が極めて低いことである。Ipsos Moriの行った党首評価によると、スタージョンの評価(プラス評価からマイナス評価を差し引いたもの)は+48であるのに対し、ミリバンドは-31である。ミリバンドの場合、同社が全国的に行った世論調査では、-19であり、スコットランドでの評価は、それよりはるかに劣ることになる。

このSNPの勢いに対して、保守党や自由民主党の支持者が、SNPがスコットランドで力が強くなりすぎ、2回目の独立住民投票を近い将来実施するのを警戒して、労働党に投票する可能性が指摘されていた。これは、タクティカル・ボーティング(戦術的投票)と呼ばれ、有権者が自分の支持する政党には投票せず、当選してほしくない政党以外の、最も当選可能性の高い政党に投票するものである。しかし、これは、それほど大きなものではないことがわかった。保守党、自由民主党の支持者の3分の1ほどがタクティカル・ボーティングで労働党に投票する考えがあるが、同時に、保守党、自由民主党の支持者の10分の1ほどは、自分の選挙区のSNPの候補者が勝ちそうなら、SNPに投票するつもりだという。すなわち、労働党にタクティカル・ボーティングで投票しそうな保守党、自由民主党支持者は、5人に1人ほどしかいないこととなる。これほどの支持では、圧倒的な支持の強さを誇るSNPの勢いの前では、数議席の差はでても、大勢には影響はないと見られる。

つまり、労働党がスコットランドで大敗北するのは間違いない状態であり、このため、労働党が全国的に最多議席を獲得する可能性は大きく減少した。