新聞のミリバンド攻撃

今回の総選挙では、いくつかの新聞が露骨な偏向報道を行っている。そのため、それぞれの新聞の論調傾向を踏まえて、記事を読む必要があるように思われる。特に労働党の党首ミリバンドへの個人攻撃は過剰と言える。

イギリスの新聞には、支持政党がはっきりしているものがいくつもある。2005年と2010年の総選挙では、支持動向は以下のとおりだった。

新聞 2010年支持政党 2005年支持政党
タイムズ 保守党 労働党
ガーディアン 自民党 労働党
テレグラフ 保守党 保守党
ファイナンシャルタイムズ 保守党 労働党
インデペンデント 保守党 自民党
メール 保守党 保守党
エキスプレス 保守党 保守党
ミラー 労働党 労働党
サン 保守党 労働党

(この表で挙げた新聞紙の多くには日曜の姉妹紙があるが、それらの政党支持動向も同一である。)

これを見ればわかるように、ブレア労働党時代(1997年から2007年)には、新聞王ルパート・マードック氏のニューズ・コープ傘下の新聞、タイムズとサンは労働党を支持した。しかし、2010年には、保守党支持に転換した。なお、ブラウン労働党政権政党だった2010年には、労働党を支持したのはミラー紙のみである。

2005年と2010年に保守党を支持したのは、保守党の別名トーリーをつけた「トーリーグラフ」と揶揄して呼ばれるテレグラフ、それにメールとエキスプレスだった。このうち、今回の総選挙では、エキスプレスの社主がイギリス独立党(UKIP)に130万ポンド(2億3400万円:£1=180円)の献金をしており、UKIP支持となった。

今回の総選挙では、メールとサンの労働党党首ミリバンドへの個人攻撃は徹底している。メールは、かつて、ミリバンドの父(マルクス主義学者:故人)を、イギリスを嫌ったと攻撃し、反駁したミリバンドが涙ぐむシーンもあったほどだった。サンは、最近、その記者が労働党の記者会見などから締め出されたと紙面で公表した。

ガーディアン紙は、これらの新聞のミリバンド攻撃は、単にその政党支持だけではなく、プレス規制の問題が絡んでいると指摘する。主要政党の中でプレス規制に最も強硬な立場をとっているのは労働党であり、ミリバンドは、新聞の電話盗聴問題に関連した、レヴィソン判事を委員長とする公聴会で、プレスに対する規制が手ぬるすぎる、また、メディアに対する一部企業の影響力が大きすぎると批判した。そして、一企業のメディア所有を制限する意向を表明した。

レヴィソン答申を受け、主要政党の保守党、労働党、自民党は、勅許によるプレス規制制度を設けたが、新聞大手らは、この制度は、報道の自由を妨げる恐れがあるとして、自分たちで自主規制組織を立ち上げ、勅許による制度には入らない立場を明確にしている。そして、右寄りの新聞大手が、労働党の立場を嫌い、そのような政権が生まれるのを何としてでも阻止したいと考えているとガーディアン紙は指摘する。

労働党のマニフェストでは、メディアについて労働党の立場を再確認している(68ページ)。ここでは、メディアの支配の寡占を防ぐ手段を取り、しかもプレス規制については、勅許制度の下で、レヴィソンの勧告を実施するとしている。メディアの寡占の問題の標的は、タイムズ紙とサン紙、さらに衛星放送のSkyBの大株主であるマードック氏のニューズ・コープと見られている。

もともと、このような立場を取ったミリバンドは、非常に勇気があったといえるだろうが、ここまでの攻撃があるとは予想していなかったかもしれない。しかし、投票日までの3週間足らずの間、これらのメディアからのミリバンドと労働党への攻撃が、さらに強まる可能性がある。

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