公務員制度改革進捗状況

内閣府の公務員制度担当大臣のフランシス・モウドと、内閣官房長(Cabinet Secretary)兼内国公務の長 (Head of the (Home) Civil Service) のジェレミー・ヘイウッドが「公務員改革の進捗状況報告書」を発表した。2012年に発表した公務員制度改革計画の、それからの進捗状況を述べたものである。モウドは公務員の仕事の仕方、効率、能力に不満があり、それらを向上させようとした。多くの成果が上がったというが、まだ課題は多い。 

この報告書の中で特に注目すべきは、公務員と大臣の関係である。公務員は、大臣の求める政策に対し、お金に対する価値があるかどうか、実施できるかどうかなどについて、はっきりと大臣にアドバイスしなければならないとし、問題点についてはきちんと議論し、もし公務員と大臣の見解が合わなければ、大臣の指示(大臣が指示書を書く(これは、Ministerial Directionと呼ばれ、詳細は拙稿))に従わねばならないとする。これまでもこの仕組みは存在するが、そう頻繁に使われてはこなかった。あえてここで強調して繰り返したのには、意味がある。つまり、大臣が決定すれば、それを実施するのは、公務員の職業的な義務だとし、大臣の求める政策に対して、それを実施したがらない公務員が自らの判断で実施を遅らせたり、骨抜きにしたりすることがないようにしようとするものである。

さらに公務員のスキルと能力を向上させるための手段である。公務員には、特に4つの分野で能力に不足があると指摘している。それらは、デジタル、プロジェクト・マネジメント、コマーシャル、それにリーダーシップの能力である。 

これを補うために、公務員の中の能力を高める諸制度を構築しており、その一つは、MPLAMajor Project Leadership Academy)で、オックスフォード大学のサイード・ビジネススクールと提携して、大きなプロジェクトのマネジメント能力を高めようとするものである。

さらに、20154月からは、事務次官レベルより下の上級公務員 (本省課長級以上) のポストは、公務員内部及び外部からの募集を前提とすることとした。つまり、民間から公務員に乏しい能力を持つ人材を積極的に採用しようとするものである。 

なお、20105月の総選挙後、保守党と自民党の連立政権が発足した際に、連立合意書で政策を合意したが、この報告書では、この国会が終わるまでに(20105月から20155月までの5年間)に399項目のうち、389項目が完了する見込みだという。これは、公務員制度を改革したキャメロン政権の成果だと自画自賛するもののようだ。

ただし、連立合意書で合意したことやマニフェストで約束したことを実施すれば、それでよいというものではないように思われる。例えば、キャメロン政権では、イングランドとウェールズの41警察官区で公選の警察・犯罪コミッショナー制度を設けた。この選挙には投票率がわずか15%ほどと関心が低く、しかも、制度上の不備もある。さらにコミッショナーが様々な問題を起こしている。その結果、野党労働党は、もし2015年総選挙に勝てば、廃止すると発表した。政策を何%達成したかではなく、その中身も慎重に見てみる必要があろう。