スコットランド独立賛成派が優勢だった第2回目のTV討論

スコットランド独立の住民投票が918日(木曜日)に行われる。あと3週間余りとなった。独立賛成側と反対側のリーダーによる第2回目のTV討論が825日の午後8時半から10時までの1時間半行われた。この番組はBBCスコットランドが制作したが、イギリス全体で同時にBBCが放映した。 

独立賛成側は、スコットランド政府のサモンド首席大臣、スコットランド独立党(SNP)の党首である。反対側は、ブラウン労働党政権で財相を務めたダーリング下院議員、独立反対グループのBetter Togetherの会長である。

第一回目の討論ではダーリングが優勢だったが、今回は直後の世論調査によると71%対29%でサモンドが優勢だった 

第二回目の討論が始まった時、サモンドは疲れているように見え、しかも緊張していた。サモンドにとって今回は負けられない討論だった。ダーリングも緊張していた。

まじめでひたむきな印象を与えるダーリングは、前回の討論で効果のあった、独立後のスコットランドの通貨の問題で食い下がった。それが結局しつこいほどの印象を与えることになる。ダーリングは非常に有能な政治家だが、それでも全般的に準備不足の面があるように思われた。

一方、サモンドは、通貨の質問に対して十分な準備をしていた。サモンドが多用した表現は、マンデイト(付託)という言葉である。スコットランド住民が、独立賛成で、自分にスコットランドを代表して正式にイギリス政府と交渉する権利を与えてくれれば、スコットランドに最善の結果を招く交渉をする、それはポンドをイギリスと共有することだとし、もしそれがかなえられなければ、イギリス政府の抱える借金のスコットランド負担分を拒否することも辞さないとした。 

また、サモンドはスコットランドがイギリスに留まる場合のマイナス面を強調しようとした。民営化が進む国民健康サービス(NHS)や弱者に厳しい福祉の問題、さらにスコットランドにある「大量破壊兵器」の核兵器トライデントシステムの問題では、スコットランドはイギリス中央政府の制約を受け、独自の政策を実施できないとした。

これらの問題は、スコットランドのSNP政権下では当てはまるかもしれないが、次期スコットランド議会選挙の行われる2016年以降、変更される可能性もあり、必ずしも独立の利点とは言えないだろう。しかし、独立すれば、イギリスの中央政府とは異なる政策を打ち出せる可能性を示すことでサモンドの得点稼ぎにはなるように思われた。

このTV討論では、途中でクロスイグザミネーションという二人のリーダーがお互いに詰問しあう時間を設けたが、議論が過熱しすぎる場面もあり、このような議論の仕方が適切かどうか疑問に思われた。

討論が終わりに近づいてきて、サモンドの優勢が目立った。サモンドは、これが独立の最後のチャンスかもしれないと言い、投票の結果が独立賛成の場合には、ダーリングも自分たちの側に招きたいとし、ステイツマンらしい面を見せた。

今回の討論ではサモンドが優勢で、しかも、女性の77%がサモンドを優勢としたことで、独立に懐疑的な女性票に影響を与えられたという見方もある。しかし、これまでの世論調査では賛成支持派と反対派の差は10ポイント余りあり、その差をこれからどの程度埋められるかが賛成派のカギとなる。

さて、2人の討論は、3人の討論とはかなり効果が異なる。3人の討論は、2010年の総選挙で主要3政党の党首が行った。3人の場合お互いにけん制しあう面がある。しかし、2人の場合、攻撃の焦点が絞られるので勝ち負けがはっきり出やすい。

2015年総選挙で党首のTV討論がどのような形で行われるかはまだ決まっていない。イギリス独立党(UKIP)の扱いの問題もあるが、数が多くなればなるほど議論の焦点が分散するのは確かだろう。