政治で景気を左右できる?

英国の経済が好調と言える状況だ。数字を見ると以下のようなこととなる。

  1. 賃金の上昇率1.7%(12月から今年2月)がインフレ率(CPI:消費者物価指数)1.6%をやや上回った。
  2. 失業率(12月から今年2月)が過去5年間で最低水準の6.9%まで下がった。中央銀行のイングランド銀行の総裁が就任当初、利上げの目安とした7%を下回った。
  3. これらのデータを受けて英国の通貨ポンドは米ドルに対して4年ぶりの高値を記録した。

ただし、賃金は2008年以来、実質で10%近く下がったことを考えると、景気が上昇傾向となったと言っても明るい要素だけとはいいがたい。特にボーナス分を除くと賃金上昇率は1.4%でインフレ率を下回る。さらに英国で伝統的に使われているRPI(小売物価指数)は、家賃や住宅ローンの支払いなども含み2.5%。

さらに失業率についても、就業者数239,000のうち通常のフルタイムは44,000のみである。

これらから見るとオズボーン財相のまだすべきことが多いというコメントは妥当なものと言えるだろう。野党労働党の「生活費危機」のキャンペーンはまだまだ続く。オズボーンの財政経済政策、特に財政削減が経済成長を遅らせ、その結果、賃金の目減りを招き、生活費危機を招いたというのである。

今回の経済指標の発表で、年内、もしくは来年早々にも金利が上がる可能性が指摘されている。しかし、20155月の総選挙前に金利が上がると、多くの影響が出る可能性がある。特に昨年から住宅価格が急上昇しているが、住宅ローンの負担が大幅に増加する可能性がある。キャメロン首相の保守党はそのような事態は避けたいだろうが、景気がもし過熱するとイングランド銀行の金融政策委員会がそういう判断をする可能性がある。

現在の景気は、かなりの程度、住宅価格の上昇と消費に支えられており、均衡のとれた経済発展のための製造業や輸出産業などはまだ弱い。3月のオズボーン財相の予算でもこれらの産業に重点的な配慮をしたが、消費頼みの構造は変わっていない。

IMF2014年の英国の経済成長予測では、アメリカの2.8%を上回り、G7のトップの2.9%の見通し。ちなみに日本は1.4%の予測である。ただし1年余り前には景気後退が心配されており、IMFがオズボーン財相に財政経済政策を変更する必要があると警告したことから見ると、IMFの予測に頼るのは必ずしも賢明ではないかもしれない。

経済が順調に成長していくように、しかも過熱しすぎないようにうまく手綱を取っていくのはそう簡単なことではない。特に来年5月の総選挙を控えている中ではそうだ。