英国のエネルギー政策の厳しい選択肢(UK’s Energy Policy: Hard Choice)

オズボーン財相が中国を訪れ、英国の原子力発電所建設に中国の資本が導入されることを発表した。英国は、57年前の1956年にコールダーホール原子力発電所で世界で初めて商業用発電を開始した国である。

その誇り高き国が今や原子力発電所建設に外国資本を必要としている。中国からの投資の第一号は、フランス電力(EDF)を中心とした、英国のサマーセットのヒンクリーポイントの原子力発電所の建設となる。

英国で原子力発電所の建設されるのは1995年以来であるが、これは、英国のエネルギー事情を象徴した出来事である。

先だって、英国の送電を担当する会社ナショナル・グリッドなどが、電気の供給余力、すなわち、ピーク時の需要と供給能力の差が非常に低くなると警告した。2年前には16%であったのが、今冬には5%となり、さらに2015年には2%になるという。なお、ナショナル・グリッドは、電力供給余力が低くなれば、警報を発し、操業を停止した工場などを保証する制度がある。

この事態の背景には、温暖化ガスの排出規制のために既存の発電所の廃棄が計画通り順調に進んでいるのに対して新発電所の建設が大幅に遅れていることがある。EUの汚染防止指令のために、総発電の3分の1を担っている石炭発電所の多くを2015年までに閉鎖する必要がある。また、原子力発電所は現在約5分の1を担っているが老朽化しており、廃炉のためにその割合が急速に減っている(参照)。

一方、風力発電所が増えているが、この形のものは風が無くなると発電できない、また、季節的に風が強い時期と弱い時期があるなど、不安定な要素がある。

英国は2030年までに温暖化ガスの30%を削減するとしており、再生可能エネルギーにも力を入れているが、それだけでは足りず、原子力発電所の建設は不可欠だと判断している。

原子力発電所については、保守党と連立を組む自民党は2010年総選挙前、原発建設反対の立場を取っていた。政権参加時に黙認することとし、さらに今年の党大会で党として正式に国庫補助を出さないことを条件に認めることとした。

ただし、政府が補助金を出さなければ、消費者がそれを支払うことになる。ヒンクリーポイントの原子力発電所建設計画の交渉の争点は、建設費用が140億ポンド(2兆2千億円)と見られており、その多額に上る費用を長期的に賄うために英国政府がいかに価格の保証をするかであった。

この価格は、1時間・メガワット当たり、93ポンド(1万5千円)程度となったと見られており、その期間は40年にも及ぶと見られている。その価格は、現在の卸売価格の2倍以上である。

風力発電所でも同じような価格保証がある。これまで1時間当たり、155ポンド(2万5千円)であり、これが15年続く。これが2016年からは、135ポンドとなるが、かなり高価である。

英国のエネルギー政策には幾つかの制約がある。まずは環境問題への取り組みである。財政削減が求められている中、公費投入はそう簡単ではなく、民間投資が必要だ。そのためには、投資意欲がわくような環境が不可欠である。

その結果、価格保証が求められることとなるが、国民がどれだけの費用負担を受け入れる用意があるのだろうか?電気・ガス料金の問題を巡っては、生活費が上昇する中で政治的な論争がある。

もちろんナショナル・グリッドらが警告したように、供給余力の大幅な低下が最大の関心事ではあるが、政府としては、結局、環境、政治、財政的なリスクを検討しながら、国民の納得できる、もしくは納得できそうな施策を慎重に選択していくこととなる。

英国では、原子力発電所の建設に中国の資本が入る見返りとして、将来、原子力発電所の所有権を当面の少数株主から支配株主となることを認め、その上、中国産の原子力発電所の英国での建設を認める方向だと言われる。

長期的に見れば、年率7.5%の経済成長をしている世界第二位の経済大国からの資本の導入は望ましいと言えるが、英国内での原子力発電所建設となると二の足を踏む向きも多い。しかし、中国からの資本なしではヒンクリーポイントの建設もとん挫する可能性があった。

英国は、非常に狭い選択肢の中から、厳しい選択を迫られたと言える。

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