新聞の自主規制機関(Press Self-Regulated Body)

2011年に発覚した電話盗聴問題は、当時最も売り上げ部数の多かった日曜紙ニュース・オブ・ザ・ワールドの廃刊を招くほど大きな問題となった。

そして新聞の行き過ぎを防ぐために設けられたレヴィソン委員会が2012年11月、報告書を発表。その中で、信用を失ったプレス苦情処理委員会(Press Complaints Commission)に代わる機関として、強い権限を持つ自主規制機関が提案された。

それを基に二つの案が提出された。

まずは、主要三政党の保守党、自民党そして労働党が合意した自主規制機関案である(なおこの提案の概略は、2013年3月に発表された際のデイリーメイルの記事の図参照)。一方、三政党案は政治の介入を許し、報道の自由を侵害する恐れがあるとして、新聞業界は基本的に同じ体裁をとりながらも新聞業界案を出した。

いずれも法律ではなく、女王の認可を得る「勅許(Royal Charter)」の形をとるものである。BBCも勅許で設けられている。

新聞業界の提案したものは、レヴィソン提案の条件に合致しないとして勅許を審査する枢密院の委員会で拒否された。それをマリア・ミラー文化相が10月8日に発表した。

文化相は、主要三党案には修正する余地があるとして、新聞業界の歩み寄りを期待したが、状況は平行線をたどっている。業界は、自分たちの案でも西側先進国で最も厳しいものだという。

そこで、この二つの案を比較しておきたい。基本的な対立点は以下のようになる。

 

 

  主要政党案 新聞業界案
政治の関与 勅許は国会で修正されうるが上下両院それぞれの3分の2以上の賛成が必要。 国会は修正を認めたり止めたりできない。認証委員会、自主規制機関と業界団体がその変更に合意する必要。
認証委員会(新聞が適正に規制されているかを認証する) 元編集長はこの委員会委員になれない。 元編集長も委員となれ、少なくとも委員のうち一人は新聞業界の経験者とする。
任命委員会 4人の委員で構成され、委員は現職の編集長でも下院議員でもない。 4人のうち一人は、関連出版社の利益を代表する人物。
訂正と謝罪 自主規制機関は、訂正と謝罪を要求でき、£100万(1億5千万円)の罰金を課すことができる。それらがどのように実施されるかその具体的な方法を指示できる。 不正確な記事の訂正をきちんと行わせる力を持ち、全体的な不正行為には£100万の罰金を課せる。謝罪は指示ではなく、行うことを要求することができる。
仲裁 被害者は無料で仲裁サービスを提供される。誰もが出版社を訴えることができるよう、苦情を迅速に処理する制度を設ける。 試験的試みが成功すれば、名誉棄損裁判の代わりとなる迅速で費用のかからない仲裁サービスを提供する。