「対立」を作り出す政治(Politics which create divisions)

私の英国政治勉強会で、かつての小泉首相や現在の橋下大阪市長の対決する姿勢、もしくはディヴィジョン(対立)を意識的に作り出す言動は、国民の関心を高め、人気を博したのではないかとの見方があった。確かに、この面があることは事実だ。ただし、政治家として成功するには優れた政治的なセンスが必要である。

つまり、これには条件がある。まず、国民や少なくとも選挙民によく知られているということだ。共感を集約できる存在である必要がある。それができる政治的なセンスが必要だ。さらに2人とも極めてハイリスクなストラテジーを取ってきた。小泉元首相の場合、まず、自民党の党首選で勝ち目がないと思われたにもかかわらず、出馬した。しかも郵政選挙はギャンブルだった(私はこの郵政解散を聞いた途端に、小泉首相の勝ちだと思ったが)。橋下市長は、「橋下」対「反橋下」の構図を作り、多くのマスメディアも敵にしてきた。英国の政治家ならまず取らない方法だ。いずれもハイリスクの方法を取りながら、勝ち残ってきた。要は、これができる、もしくはできるかもしれないと判断する政治的なセンスと、ここまでする勇気の問題だ。

英国では、政策のディヴィジョンを作り出すことは、政治手法の一つで、日常的に行われている。ただし、劇的で効果的なディヴィジョンを作り出すことは容易ではない。一般には、ディヴィジョンのためのディヴィジョンづくりに終始することになる。無理に違いを浮き彫りにしようとしたり、世論調査などを見て、多くの人が支持する方についたりする。つまり、自分たちの訴えることを信じていなくても、もしくは自分たちの議論に問題があるとわかっていてもそうする傾向がある。英国政治の残念な点だ。