キャメロン首相の誤算(Cameron’s Miscalculation)

5月20日の下院での同性結婚法案をめぐる採決でキャメロン首相は大きな痛手を被った。

保守党の閣僚をはじめとする多くの保守党下院議員がこの法案を今国会(次期総選挙は2015年に予定されているが、それまでのことを指す)で成立させることを事実上不可能にする修正動議を提出したのである。労働党は独自の修正案を提出する構えを見せ、その動議が可決される可能性があった。最終的に労働党との妥協でその動議は否決されたが、この過程で、保守党の中の分裂とキャメロン首相の保守党内でのリーダーシップが弱まっていることが浮き彫りにされた。

キャメロン首相は、同性結婚法案を保守党が変わったということを有権者に印象付ける手段として利用しようとした。かつての傲慢で人々の関心に注意を払わない政党というイメージから、保守党は近代的な思いやりのある政党になったということを示す一つのシンボルとして使おうとしたのである。トニー・ブレアが労働党党首に就任した後、労働党の変わったことを多くの有権者そして党員にわからせるために労働党の綱領の中の産業国有化を謳った第4条を変更したが、そのような機会にしようとした。

確かにこの法案には自民党、それに労働党のほとんどが賛成するであろうことから、たとえ保守党内に反対があっても大丈夫だという計算があったと思われる。

自民党、労働党はこの法案の趣旨には賛成していたが、問題は、労働党はこの採決にキャメロンの弱みを見て、それを露呈させる戦術を取ったことにある。キャメロン首相は後に引けず、労働党の要求を呑み、その修正案を受け入れ、この法案を守るしか手段がなかったといえる。

その結果、5月21日の新聞はそろって「キャメロンの屈辱」を取り上げることとなった。読者数の最も多いサン紙は、キャメロン首相の「臆病なリーダーシップ、不用意な傲慢、自滅的な政治的直観」を批判し、ガーディアン紙は「見当違いの悪循環」と批判した。

キャメロン首相は、自分の権威を賭ける対象を誤ったようである。保守党の活動家の平均年齢は67歳(タイムズ紙のRachel Sylvester 5月21日)と言われるが、この年代の人々にはそれまでの価値観を変えて同性結婚を受け入れる人が少なく、下院議員にもその反対者が多い。しかも弱い立場に陥っているキャメロンを攻撃する材料として使った保守党下院議員もかなりの数に上るようだ。

同性結婚は、2010年の保守党のマニフェストにも入っておらず、しかも連立合意書にも入っていなかった。そのような政策を党内の反対を押し切って進めようとしたキャメロンに大きな誤算があったといえる。

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