弱り目クレッグの誤った判断(Weakened Clegg’s Misjudgment)

2月25日の新聞の第一面の多くにニック・クレッグ自民党党首・副首相の顔写真が掲載された。

かつて自民党のチーフ・エグゼクティブだったレナード卿が、在任中に党の女性関係者にセクシャル・ハラスメントをしたという疑いがかかっている件で、前夜、クレッグが自分で声明を発表した。

そこで、それまで党が継続して、「クレッグはそのような疑いは全く知らなかった」と言っていたにもかかわらず、クレッグは「レナード卿の行為に対して、間接的で特定されていない懸念」を知っており、自分の首席補佐官をレナード卿のもとへ送り、「そのような行状は、全く許されないと警告した」と党の発表とは異なったことを発表した。非常に慎重に言葉を選んで書いた声明であったが、それまでの発表とは違うという事実は変わらない。しかもクレッグは声明を読んだ後、メディアからの質問を受け付けなかった。

25日の新聞の第一面の見出しは以下のようだった。

デイリーメイル しかめ面のクレッグの逃げ口上

デイリーミラー クレッグ:私は痴漢卿のことを知っていた。

インデペンデント クレッグ:私は性的苦情を知っていた。

デイリーテレグラフ 明らかになった:ニック・クレッグに対するのっぴきならない新主張

タイムズ クレッグが上院議員についての性的苦情を知っていたと言う。

ガーディアン クレッグが性的苦情について知っていたと認める。

サンは、「衝撃的なUターン」と表現し、それはデイリーメイルも同じで、クレッグが逃げ口上を言うと攻撃した。また、デイリーエキスプレスは、クレッグはその政治家としてのキャリアで最悪の危機に陥ったと言った。

クレッグはこの日、28日の補欠選挙のある選挙区周辺でラジオ局などのインタヴューに応じたが、それ以外のメディアからの質問には答えず、海外へ飛び立った。

クレッグは、この問題への対応を誤ったようだ。2月24日の夜に自ら声明を発表するまで6日間考えに考えた挙句である。

その大きな原因は、クレッグが政治的に非常に弱い立場にあるためのように思われる。自民党はまとまりの強い政党で、現在のように低い支持率であっても、クレッグを党首として引き下ろそうという動きは見られない。しかし、2010年に保守党と連立を組んで以来、世論調査の支持率を大きく落とし、野党への政党補助金を失った上、政治献金額を大幅に減らし、しかも党員の数が大きく減った。2011年、2012年の地方選で大きく地方議員の議席も失った。連立政権に参画する代償の下院の選挙投票制度を変えるAV制度の国民投票は大差で否決され、しかも第二の代償として位置付けていた上院改革は、保守党議員の反対で失敗した。連立政権の政策に自民党カラーを注入していると言っても、それらは必ずしも一般に理解されていない。

そういう中で、さらに自民党への打撃となる事態を避けたかった心情は理解できる。

2008年にレナード卿の、特定されていない不適切な行為の疑惑の話を聞き、当時首席補佐官だったダニー・アレキサンダーにレナード卿に話をさせた、と言われる。このような疑惑の話は、多くの職場にあることで、具体的な苦情がないと具体的な対応が難しいのは恐らく周知の事実だろう。タイムズ紙のインターネットのコメント欄への投稿者も同じ見解だ。

もし、クレッグが、「特定されていない懸念」を聞いただけというのが真実ならば、クレッグは、最初から、自分はその時点で妥当だと信じたことをした、と開き直ることもできたかもしれない。もちろん、被害にあったと訴える女性たちは、具体的な話を政党のトップクラスの政治家に訴えたと主張している。もしその話がクレッグに伝わっていなければ、それはそのトップクラスの政治家たちの責任ということになろうが。いずれにしても、弱くなっているクレッグは、そのようなリスクは取れなかったと思われる。

クレッグは打つ手が限られてきている。もし、自民党の優勢とされる28日の補欠選挙で敗れるようなことがあれば、非常に難しい立場に追いやられるだろう。補欠選挙に勝ち、事態が沈静化したとしてもクレッグがさらに大きく弱体化することは避けられそうにない。

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