関税同盟はどうなる?

メイ首相は、イギリスのEU離脱にあたって、EUの単一市場も関税同盟も離脱すると明言している。単一市場に残れば、EUの4つの自由(モノ、資本、人、サービスの移動の自由)を受け入れざるを得ず、しかもEUの法制の制約を受ける。関税同盟では、モノへの関税をなくすことができるが、独自の判断で他の国との自由貿易協定を結ぶことができなくなる。EUを離脱するのは、主権を回復し、EU市民のイギリスへの移民を制約することが大きな目的であることから考えると、いずれも受け入れることは難しい。

ところが、これまでその立場を明確にしていなかった最大野党の労働党が、EUと新たな関税同盟を結ぶと主張した。EUはイギリスの最も重要な貿易相手であり、関税のない貿易を継続し、労働者を守る必要があるとするのである。さらに、関税同盟を結べば、懸案のアイルランド島内の北アイルランドとアイルランド共和国との国境での検問をする必要がなくなる。

この労働党の動きは、議会で審議中の貿易法に関連して、メイ首相の率いる保守党の下院議員にEUと関税同盟の関係を維持すべきだと主張する人たちがいることに関係していると見られている。すなわち、労働党が関税同盟を主張してこれらの保守党反乱派らと歩調を合わせれば、メイ政権がこの採決で敗れるかもしれないからだ。そのような事態が起きるかどうかは別にして、労働党がその立場をはっきりしたことは、イギリス政治の展開をよりわかりやすくさせる。3月2日のメイ首相のスピーチが俟たれる。

BBCの見る安倍政権女性活用政策

安倍政権では、アベノミクスの一環としてウーマノミクスを訴えてきた。日本で最も生かし切れていない人材は女性だとし、女性の活用を重点政策としたのである。その成果についてイギリスの公共放送BBCの「リアリティ・チェック(真偽の確認)」が評価している

安倍首相らは、その政策の効果を自画自賛している。25歳以上の女性の雇用率は、過去5年間増加しており、アメリカより高いという。日本の66.1%はOECDの平均59.4%を上回る。

しかし、BBCは、女性の雇用の57.7%は非正規雇用であり、質より量となっている、またその一方、かつて掲げた公的機関・民間会社の幹部の女性の割合を2020年までに30%にするという目標は、2016年に公的機関7%、民間15%に下げられたと指摘する。

さらに、世界経済フォーラムの男女格差指数の世界ランキングで、日本は10年前80位であったのに、2016年の111位、2017年の114位と下がっているが、この主要な原因は、女性の政治参画が逆進していることだと指摘する。2014年の安倍内閣の女性閣僚数は18人中7人だったが、今では、20人中わずか2人。女性衆議院議員は、465人中47人でG8参加国最低。これらは政治的意思次第で変えられることだと指摘する。

イギリスでも、統計などの数字を政治家が自らに有利なように解釈して利用する傾向がある。フェイクニュースの問題もあり、各種の「リアリティ・チェック」がこのような数字の正当性を検証することが流行している。日本の政府が外国の機関のこのような評価分析を好むとは思われないが、個々の国内政策が国際的に吟味される時代となっていることを改めて感じる。