労働党党首選:コービンが大勝する見込み

労働党の党首選で、投票が行われている。現職のコービンと影の労働年金相だったスミスの2人が立候補している。この投票は9月21日に締め切られ、その結果は9月24日に発表される。

この党首選に投票できる人に世論調査した結果が発表された。それによると、コービン支持が57%、スミスが35%の支持、未定が8%となっており、未定を除くと62%対38%で、コービンが前回の昨年9月の党首選で獲得した59.5%を上回る勢いとなっており、コービンが当選するのは確実な状況だ。

この世論調査会社は、有権者の極めて大きな登録ベースを持っており、その結果、労働党の党首選の有権者をピックアップし、有意義な世論調査、すなわち1000プラスのサンプルで世論調査を実施できる。前回の4人の立候補した党首選でも同様の世論調査を実施した。それでは、コービン支持が53%で、2番目の候補に30ポイントの差をつけており、コービン圧勝を予測した。党首選の結果は、1回目の開票でコービンが59.5%を獲得し、半分以上の票を獲得したため2回目以降の開票が必要なかった。なお、コービンは2番目の候補に40ポイントの差をつけた。

前回党首選で、この世論調査会社のコービン大勝の予測があたったため、今回の世論調査も注目される。この結果によると、党首選有権者カテゴリーの3部門である、党員(今年1月12日までに加入した者)、労働党関連団体サポーター(今年1月12日までに関連団体のメンバーとなり、投票の権利のある者)、登録サポーター(今年7月の48時間の枠内に25ポンド⦅3500円⦆を支払った者)のいずれの部門でもコービンが優勢だ。

カテゴリー コービン スミス 未定
全体 57 35 8
党員 52 40 8
関連団体サポーター 54 33 13
登録サポーター 70 25 5

興味深いことは、ミリバンド前党首下の2015年総選挙までに入党した党員の下では、スミスがコービンを支持率で68%対32%とリードしているのに対し、ミリバンド辞任後の2015年5月から9月に入党したメンバーでは、スミスへの支持は28%に下がり、しかもコービン党首当選後の9月以降に入党した人の間では、スミス支持は14%に下がる。つまり、新しいメンバーほどコービン支持が強い。

前回の党首選では、有権者登録は、有権者データベースの整理の始まるまでできたが、今回は、新しい党員・サポーターが圧倒的にコービン支持であることが明らかであったため、党員入党などが1月12日までに限定され、しかも登録サポーターは、48時間の枠を設けられ、しかも登録費が前回の3ポンドから25ポンドに大幅アップされた。それでもコービン支持の強さが浮き彫りになっている。

この世論調査会社のデータベースに偏りがある可能性は否定できず、また、18万人余りの登録サポーターのうち、5万人近くが様々な理由で投票を拒まれているとも伝えられている。投票締め切りまでにはまだ3週間あり、最終的な結果が、この予測通りにならない可能性はあるが、大勢としては、既に多くが予想しているように、コービン大勝の結果となるように思われる

政党の党員数

保守党の党員数が、EU国民投票から急増していると言われる。その数は5万人と言われ、それをメイ新首相の誕生による「メイ・マニア」効果とする見方があるが、実際には、もっと複雑なようだ。キャメロン前首相辞任後、党首選に投票するために入党した人が4人に3人という地方支部もある。保守党の党員数に関する最も新しい情報は、2013年12月現在のものであり、保守党の党員数は、それ以来、減少していたことがうかがわれる。党員の「急増」の結果、現在どの程度の党員数になっているかは不明だ。

なお、労働党、自民党、SNPも6月23日に行われたEU国民投票の後、党員数が増加している。

下院図書館が2016年7月現在でまとめた現状(8月5日発行)では以下のとおり。

政党 2016年07
労働党 515,000
保守党 149,800 2013年12月が最新の数字
SNP 120,000 2013年12月には、25,000
自民党 76,000
緑の党 55,500 2013年には138,000
UKIP 39,000 2015年5月には47,000
PC 8,300

:緑の党はイングランドとウェールズのもの
PCはウェールズの地域政党プライド・カムリ
SNPはスコットランドの地域政党スコットランド国民党
UKIPはイギリス独立党

労働党の党員は、有権者の1.1%、すなわち100人弱に1人程度であり、また、SNPの党員は、スコットランドの有権者数と比較すると、2.9%であり、スコットランドの有権者30数人に1人がSNPの党員ということになる。