下院議員選挙の投票権(Who is Eligible to Vote at a General Election?)

定期国会法の結果、次期総選挙は、2015年5月7日(木曜日)の予定だ。まだ、1年8か月ほど先の話だが、主要政党の間では、既に様々な選挙前の駆け引きが始まっている。

その選挙に誰が投票できるかは、多くの外国人にとっては、なかなか理解しづらい点である。もちろん日本人には投票権はない。しかし、英国人でない人でも多くの人が投票権を持っている。英国人でも誰に投票権があるか知らない人が多い。

選挙を担当する選挙委員会(Electoral Commission)が、誰に投票権があるか明らかにしている。それは以下のようなものだ。

①投票する届け出をしている。
②18歳以上
③英国民、英連邦国の投票資格のある国民、アイルランド国民
④投票資格を失う事由がない

英連邦の加盟国には、インド、カナダ、さらには南アフリカやタンザニアなど50余りある。さらにキプロスやマルタの国民にも投票権がある。例え英連邦から母国が追放されても、その投票権は維持される。

一方、上院議員には下院の選挙への投票権がない。

現在の規定は、1918年の人民代表法から変更されていない。そのために、大英帝国時代からの国王の臣民が今もその当時に与えられた権利を維持しているのである。

このことを問題にする人たちがいる。移民を監視している団体Migration Watch UKによると、2011年の国勢調査で、英連邦の国民で投票権のある人は、96万人いたという。それが2015年までには100万人を超える見込みだ。

つまり、英国に強いつながりを持たない人たちが、選挙の結果に影響を与える可能性が高いと主張しているのである。

先の労働党政権下で、2007年に有権者を絞ることを検討したそうだ。しかし、何の動きもなかった。これは、特に黒人や少数民族の人たちには、労働党に投票する傾向が強いからだと言う(タイムズ紙)。

英連邦の国では、インド系や黒人の人たちが圧倒的に多い。しかもこれらの出身の人たちの多くが、労働党に投票するのは確かに事実である(参照 5.人権構成の変化と政治)。

ただし、これを党利党略のみで判断したと考えるのは、早計かもしれない。英国は英連邦をまとめることで国際的な政治的影響力を保つ一つの手段としているからである。

福島原発の汚染水漏れの問題で見る心配な日本(Another Japan Crisis: Fukushima Leak)

福島原発の汚染水漏れの事件で、現在の日本の抱える大きな問題が出ているように思われるのでここで触れておきたい。

2011年3月の東日本大震災の津波で起こされた原発の問題は、人災というよりも天災の要素が大きく、原発災害の拡大を抑えるための関係者の必死の努力は国際的な称賛を浴びた。その現れの一つが吉田所長の死亡記事である。タイムズ紙の死亡記事は吉田所長への批判にも触れているが、胸を打つものだ。

今回の汚染水漏れの問題は、まさしく人災と言える。BBC東京特派員の報告では、これは明らかに一つの民間会社で対応できることを超えており、日本政府が介入すべきだと主張した。

ここで問題となっているのは、二つあるように思われる。まずは、個別の企業の対応だ。BBCの特派員が指摘したように、「無能、低いモラール、そしてひどいマネジメント」が問題ならば、なぜ、そのような状況になることを東電幹部が許したのか?どこに東電のリーダーシップがあるのか?いったい誰の責任かでそのような状況になることを許したのか?

このような質問をしても具体的な答えが返ってくることは期待できないように思われる。

さらにそのような企業の体質で、本当に今後ともきちんとした作業ができるのかどうかという疑問が生じる。これは、新たな規制やガイドラインを設けるといった問題ではなく、具体的なリーダーシップの問題である。

次に政府の問題だ。なぜこのような深刻な問題をこれまできちんと査察できていなかったのか?また、東電がこのような仕事をきちんと遂行する能力があると、どのような根拠で判断していたのだろうか?政府がこの問題に対してどのようなリーダーシップを発揮してきていたのだろうか?さらに政府が今後どのようなリーダーシップを発揮していくのか?

さらに「子供・被災者支援法」の具体化の遅れを巡る訴訟でも示されているような、後手に回る政府の対応をどのように変えていこうとするのか?

福島原発の問題には、日本の国民からの関心が高いだけではなく、今でも世界の目が集まっている。

特に、今回のような人災の要素の大きな事件については、東電の対応や政府の役割には海外の研究者も含めて大きな関心が集まっている。英国の新聞には連日のように福島原発関連の記事が掲載されている。

いずれ歴史がこれらの点を判断するだろうが、その前に考えておかねばならないのは、このような出来事は日本の評判を大きく傷つけることである。政府は、その行動を世界が注視していることを念頭に置き、きちんとしたリーダーシップを発揮して行ってほしいと願う。