スコットランド独立住民投票の可能性

201768日に総選挙(完全小選挙区制)が行われることが、下院の投票で正式に決まった。下院の総議席6503分の2を大きく上回る522票の賛成を得たのである。

この総選挙の一つの注目点は、前回2015年の総選挙でスコットランドに割り当てられた59議席のうち56議席を獲得したSNP(スコットランド国民党)が、その勢力を維持・増加させて2回目のスコットランド独立住民投票に結び付けられるかどうかであろう。

スコットランド議会は、2017328日、独立住民投票を実施することに賛成し、スコットランド分権政府にイギリスのメイ政権と時期をめぐる交渉を始めることを承認した。しかし、メイ政権は「今は、そのような時ではない」とし、Brexitが完了するまでそのような住民投票を認めないことを明らかにした。

1回目の独立住民投票は、20149月に行われた。当時のイギリス中央政府のキャメロン首相とスコットランド分権政府のサモンド首席大臣が、エディンバラ合意に調印し、1998年スコットランド法30条に基づく命令で独立住民投票を実施した。すなわち、この住民投票の結果には、法的な拘束力があることを明確にして実施したのである。この住民投票は、独立反対が55%、賛成が45%で、反対派が勝利した。

スコットランドのスタージョン首席大臣は、第1回目のような形で、1998年スコットランド法30条命令による住民投票を求めている。しかし、これがなくても、独立に関する住民投票ができないわけではない。

独立住民投票の可能性が高まってきた時、多くは、そのような住民投票を実施するには、このスコットランド法30条に基づく命令がなければならないと考えた。しかし、UCLのロバート・ヘーゼル教授によれば、その命令なしでも「スコットランドの独立交渉をイギリス政府と行うのに賛成か」といった諮問的な住民投票を行うことは可能で、著名な法律家たちが、それは事実上同じ効果があるとしていると言う。ただし、そのような独立住民投票の実施には、異議が出るのは間違いなく、最高裁の判断が出るまでに数か月かかるだろうとした。

つまり、スコットランドのスタージョン首席大臣は、世論に独立賛成の機運が盛り上がって来れば、メイ首相の承認なしに、そのような住民投票を実施することができるというのである。

スコットランドの世論は、今のところ独立反対の方が強いが、メイ首相にとっては、スコットランドの独立機運が盛り上がらないようにする必要があろう。この総選挙でスコットランドの情勢がどうなるか見ものである。

スコットランド独立住民投票の駆け引き

イギリスの政界で最も優れた政治家は恐らくスコットランドの首席大臣二コラ・スタージョン(1970年生まれ:46歳)だろう。

2014年のスコットランド独立住民投票では、スコットランド国民党(SNP)は独立賛成を訴えたが45%対55%で反対派に敗れ、その責任をとり、SNP党首で首席大臣だったアレックス・サモンドが辞任し、スタージョンは後任の党首、首席大臣に就任した。

中央政界の政治家ではないが、その政治感覚は、2015年総選挙の際の党首テレビ討論で高い評価を受けたように、優れたものがある。

スタージョンは、もともと弁護士である。スコットランドの独立を標榜するSNPに十代で1986年に加入したものの、SNPの支持が強くなかったために出馬した選挙ではたびたび敗れ、議員となったのは1999年だ。

それでもSNPを後に大躍進させるサモンドに見込まれ、2004年から副党首として仕えた。SNPは、2007年スコットランド議会議員選挙で、過半数には遠かったが、労働党を1議席上回り、議会第一党となったため、サモンドが首席大臣となり、少数政権を運営した。サモンドは巧みに政権を運営し、2011年のスコットランド議会議員選挙では予想外に議会の過半数を占めることとなる。SNPは、その選挙マニフェストで、独立住民投票の実施を約束していたが、過半数を獲得したため、独立住民投票を実施せざるを得なくなった。サモンドが今でもよく言うことだが、この独立賛成キャンペーンをスタートした時には、独立支持はわずか28%だったという。独立賛成は、投票日が近くなり急に増大した。慌てた中央政界の保守党、労働党、自民党がスコットランドの大幅な自治権拡大を約束するなど巻き返しを図り、投票では45%の得票だったが、SNPは大健闘したといえる。

サモンドのような大物が退いた後の後継者は、普通苦労するものだが、スタージョンの場合、党勢を大幅に拡大し、しかも2015年の総選挙では、下院のスコットランドに割り当てられた59議席のうちSNPが56議席を獲得する結果を得て、スコットランドにおけるSNPの基盤を築き上げた。

スタージョンの基本的な独立に関する戦略は、もし、独立の世論支持が60%あれば、独立住民投票を実施するというものであった。しかし、2016年のEUのメンバーシップに関する国民投票で、スコットランドは62%の有権者がEU残留を支持したにもかかわらず、イギリス全体で52%がEU離脱を支持し、正式にEUを離脱することとなったため、その戦略を変更した。世論の独立支持は今でも50%を下回るが、メイ首相の離脱戦略は、強硬離脱だとして反対し、スコットランドは、その将来を自ら決める権利があるとして、独立住民投票を実施する方針を明らかにしたのである。そしてその時期を、2年のEU離脱交渉期間の終わる前の、2018年秋から2019年春としたのである。

メイ首相は、現在、そのような住民投票を行うべきではないと反発した。EU離脱交渉に全力を傾けるべきで、イギリスを分裂させる可能性のあることをすべきではないというのである。

住民投票を正式に実施するには、2014年の住民投票のように、スコットランド議会に住民投票を実施する権限を一時的に与える(1998年スコットランド法30条命令)ために、ウェストミンスター議会の承認を受ける必要があるが、メイ首相が反対すれば、それができなくなる。

スタージョンは非常に慎重な政治家として知られているが、メイ首相との最大の違いは、大きな賭けに出る勇気がある点だ。スタージョンは、何としてでもこの住民投票の実施に持ち込む考えを明確にしている。

前回の住民投票は2014年に行われ、それからあまり時間がたっていない。最近発表された、スコットランドの住民動向調査(Scotland Social Attitude Survey: 毎年半年かけて行われている学術調査)によると、スコットランドの独立賛成の声は、次第に強くなっており、今までになく強くなってきている。若い世代に独立支持が多く、この調査の報告者であるジョン・カーティス教授によると、待てば、いずれは独立となるという。

しかし、スタージョンは、賭けに出た。住民投票が実施できない、もしくは住民投票が実施できても独立反対が多数を占めれば、スタージョンは大きな打撃を受けるだろう。それでも、きちんとした手続きを踏み、柔軟な姿勢を貫いていけば、メイが住民投票実施に強く反対すればするほど、スコットランド人が反発し、情勢は自分のほうに傾いてくると判断しているようだ。

ブラウン元首相が、第三の選択肢として、スコットランドに条約締結権を認めるなど連邦制的なイギリス像を提案したが、このような案の支持者はかなり限られているように思われる。多くのスコットランド人は、スコットランドの将来がイングランドの中央政府に左右されることに不信と反発を感じているからである。

この問題が、どのような形で収束していくか、政治家の能力と重ねて注目される。

2018年にスコットランド独立住民投票?

2014年のスコットランド独立住民投票で独立賛成側を率いた、当時のスコットランド首席大臣サモンドは、現在、ウェストミンスターの下院議員である。住民投票で独立反対多数の結果を受けて首席大臣並びにスコットランド国民党(SNP)党首を辞任し、その後任にスタージョン現首席大臣が就任した。

そのサモンドが、2018年秋に第2の独立住民投票があるだろうと示唆した。経験豊富で、よく「タヌキ」のように描かれるサモンドにはそれなりの計算があるのかもしれない。2017年初めにリスボン条約50条に基づいてイギリスがEUに離脱通告をすると見られており、それから2年の離脱交渉が始まる。すなわち、2019年初めまでにスコットランドが独立を決めれば、スコットランドはイギリスのEU離脱時に何らかの形でEUに留まれるとの考えである。もしそういうことになれば、EU側は、柔軟に対応できる可能性があると見ているようだ。

6月23日のEU国民投票で、イギリス全体としてはEU離脱を選択したが、スコットランドの住民の62%は残留に投票した。住民投票直後の3つの世論調査で、独立賛成支持が反対側を上回ったが、それ以降の5つの世論調査では、いずれも5から7ポイントの差で独立反対が優勢である。その中で最も新しいものは、9月5日から11日に実施されたIpsos Moriのもので、独立賛成45%、反対50%、そして未定5%である。さらに、9月9日から15日までに実施されたPanelbaseのものでも反対が優勢だが、ここ数年の間に独立住民投票を実施するのに反対の人が、賛成の人の2倍以上ある。

2014年の住民投票を1世代(20年)に1度の住民投票と主張したが、わずか4年後にもう1回行っても大丈夫だろうか。メイ政権が、キャメロン政権のようにそのような住民投票を正式に認めるかどうか不明だが、スコットランド議会が、住民投票を発議することは可能だ。全129議席のうち、SNPが63議席、そして前回も独立住民投票で賛成を支持した緑の党が6議席ある。労働党議会議員の中にも賛成する議員が出るかもしれない。

ただし、独立反対派の保守党、労働党、自民党などは、北海油田からの税収がほとんどゼロとなった状態ではスコットランド財政が成り立たないとして強力な反対運動を起こすのは間違いない。特に2014年の住民投票で反対が賛成を上回った55歳以上の層をターゲットに、独立した後のスコットランドでは、年金も保証できないと主張するだろう。

問題は、独立反対の強い中で、敢えて勝ち目のない独立住民投票を実施すれば、SNPの信用を大きく傷つける可能性があることだ。スタージョン首席大臣は、第2の住民投票実施には、特別な場合を除き、独立支持が60%必要としてきた。イギリスがスコットランドの住民の意思とは異なり、EUを離れることは確かに非常に大きな変化と言えるだろう。しかし、勝ち目のない独立住民投票は、多くの労力と費用を招くばかりか無謀な政権というレッテルを貼られかねない。

スコットランド議会の過半数を制した2011年の議会議員選挙、そして2014年の独立住民投票でも投票日直前になって、SNPそして独立賛成支持が急増し、予想外の展開となった。しかし、2016年の議会議員選挙では、予想を裏切り、過半数を獲得できなかった。2011年、2014年のような事態が2018年にも起きると考えることは、柳の下のドジョウを狙うようなものと言えるかもしれない。

なお、上記のPanelbaseの世論調査では、2014年に独立賛成に投票した人の38%、独立反対に投票した人の41%がイギリスのEU離脱に賛成している。確かに、2014年に独立反対に投票したが、それ以降独立賛成に変わった人の半分以上が、EU内に留まりたいことを考えの変わった理由としているが、逆の人、すなわち、EUを離れたいために、2014年に独立賛成に投票したが、今では独立反対に変わった人も少なからずいる。スタージョン首席大臣は、スコットランド住民の意思に反してイギリスがEUを離れる、そのためにスコットランドはEUに留まるべきだと主張してきた。そしてEUの単一市場に留まることを最優先としている。しかし、単一市場の維持が最も重要だとする有権者と、移民のコントロールが最も重要だとする有権者の割合が同じであり、有権者の見方は、多岐に分かれている。スコットランド住民のスコットランド独立とイギリスのEU離脱問題の考え方は、スタージョン式の単純化したものとは異なる。

SNPと労働党

スコットランドの政情は、過去10年で大きく変わった。2005年の下院総選挙(完全小選挙区制)では、労働党がスコットランドに割り当てられた59議席のうち41議席を獲得したが、2年後の2007年のスコットランド議会議員選挙(小選挙区比例代表併用制)で、スコットランド国民党(SNP)が第1党となり、少数与党として初めて政権を担当。2010年総選挙では、労働党が41議席(SNPは前回同様6議席)を維持したものの、2011年のスコットランド議会議員選挙では、SNPが過半数を制し、2014年のスコットランド独立住民投票が可能となった。独立住民投票は、55%対45%で独立が否定されたものの、2015年の総選挙では、SNPが59議席のうち56議席を獲得。2016年のスコットランド議会議員選挙では、SNPが過半数を若干下回ったものの、2007年以来、与党として政権を担当している。一方、労働党は、2015年総選挙でわずか1議席に留まったばかりではなく、2016年スコットランド議会議員選挙では、かつて牙城だったスコットランドで、サッチャー政権以来嫌われていた保守党を下回り、議会第3党となった。

労働党は、なぜわずか10年ほどで急に勢力が衰えたのか?

労働党が有権者の信を失い、その上、2010年総選挙で政権を失い、政党として投票する魅力がなくなった。一方、その代わりにSNPが中道左派の選択肢となったためである。労働党がエスブリッシュメントの政党となり、かつての労働党支持者が離れていった。SNPは、2007年の政権では、全129議席のうち47議席しかなかったが、政策ごとに提携政党をうまく選択し、無難な政権運営をした上、特に2011年以降、イギリスから独立するという党是を武器にスコットランドの愛国心を煽り、キャメロン政権に立ち向かい、独立住民投票を実施させた。また、スコットランドの大学の学費無料を継続し、教育、福祉に力を入れ、スコットランド住民第一の姿勢を維持し、住民の信頼を勝ち得たといえる。それが2015年の総選挙ではっきりと出た。

この状態から労働党を立ち直らせるのは簡単ではない。

8月25日、労働党の党首選で立候補しているコービン党首とスミス前影の労働年金相の討論会がスコットランドのグラスゴーで開かれた。党首選討論会は全国で行われている。この党首選の投票は既に始まっており、9月21日に締め切られ、その結果は9月24日に発表される。コービンの当選は確実視されており、コービン支持者はスコットランドでも増えている。しかし、スコットランドの独立に反対しているため、スコットランドでの支持者の増え方は、イングランドやウェールズほどではない

6月23日の国民投票でイギリスは欧州連合(EU)からの離脱を選択したが、スコットランドでは3分の2近くが残留に投票した。労働党は残留の立場でキャンペーンしたが、コービンはキャンペーンを中途半端に行ったと批判された。コービンは、1975年のEC(EUの前身)国民投票で離脱票を投じた人物であり、また、EUとアメリカとのTTIP貿易投資パートナーシップ協定に反対している。しかし、労働者や消費者の権利などを考え、全体として残留を支持するという立場だった。

この討論会は、残留派の多かったスコットランドで行われ、SNP党首のスタージョン首席大臣が、スコットランドがEUから離脱しないために最大限の努力をすると主張しているため、スミスは、この国民投票の問題でコービン攻撃に出たと思われる。スミスは、2度目のEU国民投票を含め、イギリスのEU離脱を防ぐことに力を入れている。6月の国民投票の結果をそのまま受け入れたコービンが国民投票では離脱に投票をしたのではないか、また、その結果を喜んでいるのではないかと主張した。これに対し、コービンは残留に投票したと即座に答え、残念ながら離脱の結果となったが、民主的な選択の結果に従う必要があると答えた。そして、そのような疑問を投げかけたスミスは、保守党支持のタブロイド紙デイリーメールなどのレベルに落ちていると示唆した。

スコットランドの労働党建て直しについては、スミスが、革新的な政策で保守党政府を攻撃し、政権を取り戻すことが必要だとしたが、具体的な内容に欠けた。一方、コービンは、労働党とSNPは政党の伝統も目的も異なる、労働党は勤労者のための政党だが、SNPはスコットランドの独立を求める政党だと指摘した。コービン労働党は反緊縮策を訴えており、コービン政権が誕生すれば、スコットランドへの財政支援を打ち出すと約束した。

スコットランドは、これまで大きな財政収入源と期待していた北海油田からの税収が、オイル価格の騰落でほとんどゼロになり、その2015年度の財政赤字は、名目上スコットランドのGNPの10%近くとなっており、イギリス全体の財政赤字が5%を下回るのに対し、2倍以上である。スコットランド政府は、財政削減にも取り組んでいるが、教育や福祉などの人気政策の変更を渋っているため、そのしわ寄せは、地方自治体にかかっている。この財政状況は、イギリスの枠内であればしのげるが、独立国としては維持が難しく、独立機運が増す可能性は乏しい。

スタージョン政権では、財政削減に取り組みながら、スコットランドでの政権支持の維持に取り組んでいく必要があり、今後厳しい時期を迎えると言える。ここに、労働党回復のカギがある。コービンは、労働党が政権を取れば、スコットランドを助けることができるというのである。

コービンもスミスも政権樹立のためのSNPとの連携を否定している。議員の数の上では、例えば、2015年総選挙で232議席を獲得した労働党と56議席のSNPが提携すれば、288議席となり、全650議席のうち330議席を獲得した保守党から、労働党が次期総選挙で、例えば30議席獲得すれば、政権を獲得するための土台ができる。もし40議席獲得すれば、労働党とSNPで過半数を占められる。しかし、次期総選挙で、労働党が一挙に単純過半数の326議席(もしくは選挙区区割りが変更されれば、全600議席となり、301議席となる)の獲得を目指すのは、不可能と言えないが、かなり困難だ。労働党の下院議員の4分の3がコービンを不信任したのは、世論調査の支持率で労働党が低迷している上、有権者のコービンへの個人評価が極めて低いために次期総選挙では、議席を獲得するどころか、さらに大きく議席が減るという不安があるためだ。そのため、党首を変えようとした動きが、今回の党首選につながっている。

コービンは、労働党の政策にSNPが賛成するのは自由だが、それを政党間の提携のような形では行わないという。2015年総選挙で保守党やその支持メディアが、「弱いミリバンド(労働党前党首)」を「狡猾なサモンド(SNP前党首で、前スコットランド首席大臣)」が操るイメージを振りまき、保守党が過半数を制し、労働党が惨敗する一つの原因となった。同じようなことが起きることを警戒しているためだ。

いずれにしても、ここ10年ほどの選挙結果から見ると、スコットランドの住民は政権から離れた労働党に愛想をつかしており、これまでの政治への不満を集め、巧みな政策と政権運営を行ってきたSNPへの支持が強くなった。ところが、SNPは財政的にかなり厳しい状況となっており、これまで通りの政策の実施が困難になってきている。また、2016年スコットランド議会議員選挙で、SNPは議席を減らし、過半数を失った。一方、保守党が議席を伸ばし、スコットランド議会でSNPに次ぐ第2党となった。また、緑の党が議席を伸ばしたことから見ると、既成の政治への不満も集めていたSNPへの支持は既にピークを越したようだ。スコットランド政府は、イギリスの中央政府から大きな自治権を与えられており、その付与された権限を使って、独自の政策を実施できる立場にある。そのため、スタージョンの政権運営能力がこれから厳しく問われるが、財政緊縮の背景の下では容易なことではない。

イギリスのEU離脱交渉はまだ始まっておらず、また、国民投票後心配された経済的ショックは今のところ一般の人の生活には大きな影響をもたらしていない。しかし、投資は鈍っており、早晩その影響は出てくる。特に歳入に影響が出てくるだろう。

それから考えると、スコットランド政府の苦しみは、これから悪化するだろう。ただし、そのためにスコットランドの有権者が直ちに労働党への支持に向かうかどうか疑問だ。スコットランドの労働党は、基本的に自律的な組織であり、その政策は必ずしも中央とは一致しない。SNPは地域政党であり、単独でイギリス全体の政権を獲得できない。スコットランドが独立すれば別だが、独立の機は熟しておらず、イギリスの中に留まる限り、政権に参画するには他の政党に頼るしかない弱い立場である。労働党は中央政府の政権獲得の可能性があり、コービン労働党はSNPよりも左で、有権者が、労働党へ再び目を向ける可能性はないとは言えない。しかし、そうなるには、コービン労働党にプラスαが必要だ。それは、具体的には、SNP政権の失政と、コービン労働党への支持率が増加し、コービン労働党が政権を取るかもしれないという状況となった時である。そのような時がくるかもしれないが、今のところ、その可能性は見えてこない。結局、スコットランドの政局は、かなり不透明なまま、しばらく継続することとなる。

過剰に反応するスタージョン・スコットランド首席大臣

イギリスが欧州連合(EU)を離脱し、それとともにスコットランドがEUを離脱すると、2030年までに、スコットランドのGDPが、年あたり、17億ポンド(2380億円)から112億ポンド(1兆5680億円)減るとスコットランドのスタージョン首席大臣が主張した。

2015年度のイギリス中央政府からの交付金と人口540万人のスコットランド政府の税収の詳細が8月24日に発表されるが、北海油田からの税収が大幅に減っており、スコットランドの財政的な問題を指摘される前に問題を発表しておくことや、政府のEUからの離脱交渉に対する警告だとする見方がある。

ただし、このような主張は、エコノミストの予測に基づいたものとはいえ、6月23日のEU国民投票前、当時のオズボーン財相が同じように行い、顰蹙を買った経緯がある。2030年は、14年も先のことで、それまでに実際どのようなことが起きるかは予想が難しく、そのような予測をすること自体、意味が乏しい。そのため、このような「脅し」に効果があるとは考えにくい。それでもスタージョンが主張するのは、スコットランドの独立に向けて少しでも有利な条件を作りたいと考えている、もしくは、イギリスの中央政府から徴税権も含め多くの権限を与えられたが、それでもGDPが下降した場合の言い訳に使おうとしているかのように思われる。

現状では第2独立住民投票を行うことのできる条件、すなわち住民の6割以上がはっきりと独立に賛成しているといったような状況は整っていない。7月末に行われた世論調査では、独立賛成40%、反対45%だった。そのような住民投票を実施しようとすることは、既に5月のスコットランド議会議員選挙で議席数を減らしたスタージョンの率いるスコットランド国民党(SNP)の立場を弱めるだけである。

有能なリーダーとの評判があるスタージョンであるだけに、その評判をできるだけ維持したいという意図はわかるが、今回の反応ぶりは、少し過剰なように思える。

スコットランドは親EU?

6月23日に行われた国民投票で、イギリスは52%対48%で欧州連合(EU)離脱を選択。しかし、スコットランドでは62%が残留を選択した。スコットランドの最大政党で、その分権政府を担当するスコットランド国民党(SNP)は党を挙げて残留のキャンペーンを行った。国民投票の前、もしスコットランドが残留を選択したにもかかわらず、イギリス全体が離脱を選択した場合には第2の独立住民投票を行う権利があると示唆したほどである。第1の独立住民投票は2014年9月に行われ、55%対45%で独立反対が上回った。

SNPは、親EUの立場を取っているが、常にそうだったわけではない。1975年に行われたEC(欧州共同体、EUの前身)国民投票では離脱派だった。当時、スコットランドの漁業と農業を守ろうとしたことがその背景にあり、イギリスから離れても、その代わりに主権をECに与えるようなことはしたくないと考えたことがある。

EC加盟後、共通漁業政策でスコットランドの漁業は衰退し、SNPのEUとの関係に関する立場は1980年代に変化するが、現在のSNPの親EUの立場は、SNPの戦略的なものだとする見方もある。すなわち、EUとの関係を梃子にスコットランドとイギリスの立場の差を明確にし、イギリスからの独立を推進する材料とする戦略が背景にあるとする考え方だ。

ただし、反イングランド感情も無視できない。スコットランドでの人種差別事件の4分の1は、イギリス人白人に対するもので、その大半がイングランド人に対するものであると思われる。すなわち、歴史的ないきさつからイングランドから分離したいというスコットランド人がかなりいる。その一方、人口540万人のスコットランドが独立した場合、国際的に十分なバックアップを受けられるかどうか心配する住民に対し、SNPが、EUの枠内に留まり、EUから援助を受けられるとして安心させる目的もあるだろう。

政党の立場は、時代に応じて変わりうる。SNPは、イギリスからの独立を謳って設立された政党だが、その方針を変えないまでも、その時々の状況を見計らい、その政治的勢力を維持・拡大していくために巧みな運営が必要とされると言える。

スコットランドのスタージョン政権の「重荷」

2014年9月に行われたスコットランド独立住民投票で、スコットランドの住民は、55%対45%の割合で独立に反対した。それから1年半たった。当時のスコットランド政府首席大臣のアレックス・サモンドの予定では、独立賛成が多数の場合、スコットランドは2016年3月に独立国となるはずだった。

時間のたつ速さに驚く。6月23日の国民投票でイギリスがもし欧州連合(EU)を離脱することとなれば、2年の移行期間はすぐにたつ。恐らく2年では必要な交渉をまとめるのは極めて難しいだろう。

さて、スコットランドは、この1年半で、経済環境が大きく変わった。住民投票前にサモンド首席大臣は、北海油田からの歳入に財政のかなりを依存できると強調していた。2015年度には75億ポンド(1兆2千億円:£1=160円)の歳入があると見ていた。ところが、世界的な石油のだぶつきで価格が大きく低下し、2015年11月の財政責任局(OBR)の推定では、1億3千万ポンド(200億円)と激減し、実際には3500万ポンド(56億円)であった。

独立国スコットランドの財政状況は極めて厳しいものとなっていただろうという。IFSの分析では、イギリス全体の財政赤字が2.9%と推定されていたのに対し、スコットランドでは、9.4%であっただろうとする。

スコットランドは、少なくとも現在の時点では、独立しなくて幸運であったといえる。

スコットランドの主な政党の第2回目のスコットランド独立投票に対する立場が5月5日に行われるスコットランド議会選挙への選挙マニフェストで明示されているが、労働党、保守党、自民党が反対の立場であるのに対し、政権を担当するスコットランド国民党(SNP)は、大多数のスコットランド住民が独立を求める、もしくは、状況が大きく変化したような場合、例えば、スコットランドの住民がEU残留を求めるのに、イギリスがEU離脱としたような場合に実施するとする。

世論調査によると、2015年5月の総選挙でスコットランドに割り当てられた59議席のうち56議席を獲得したSNPは依然断トツでリードしており、5月5日の選挙で過半数を占め、2007年以来担当している政権をさらに継続するのは間違いない状況だ。

ただし、スコットランドの住民が独立賛成に傾いているかというとそうではなようだ。独立すべきだという割合は、スコットランドの社会動態調査によると、2015年には39%とこれまでで最も高い。しかし、2014年の独立住民投票からの住民の意識の変化を調査した報告によると、イギリス人(British)と感じず、絶対にスコットランド人(Scottish)と感じる人が23%から26%へと微増したものの、スコットランド人・イギリス人と同じように感じる人が32%から36%へと増加、スコットランド人よりもイギリス人と感じる人が5%から6%へ、そしてスコットランド人ではなく、イギリス人と感じる人が6%から8%へと増えている。

この報告では、SNPに支持が集まっている理由は、SNPの経済財政をはじめとする政権運営や、トップ政治家のアピールなどが、スコットランド人としてのアイデンティティの意識より大きいとする。

二コラ・スタージョン首席大臣は、これらの状況の中で、まず、SNP内部の独立熱が行き過ぎないようにしていく必要があろう。既に、今年の夏から独立へのさらなるキャンペーンを実施するとしているが、SNP活動家の時期尚早な独立住民投票を求める声を抑えていく必要があるように思われる。スタージョンは、2回目の住民投票は、スコットランド住民の独立する意思が明確な場合に行うとの態度を明らかにしているが、そのカギとなる政権運営能力を継続して示すことはそう簡単ではないように思われる。スコットランドを取り巻く経済環境は、厳しい。

スコットランドの2015年末までの経済成長率は、その前年と比べて0.9%とイギリス全体の2.1%を大きく下回った。2015年第4四半期の経済成長は、0.2%だった。イギリス全体の0.6%を大きく下回る。

2014年の独立住民投票の際、キャメロン首相や主要政党党首が、スコットランドにさらなる分権を約束した。その結果、スコットランドは、所得税などに対する権限が委譲された。2016年スコットランド法が2016年3月制定されたが、その交渉で最ももめたのが、大きな財政自主権を持つこととなるスコットランドの歳入をいかに守るかという点であった。結局、財政フレームワーク合意で、人口増加率の低いスコットランドへの地方交付金を人口一人当たりの額で保証することとなり、少なくとも5年間は歳入がイギリス全体と比べて大きくマイナスとなるということはなくなった。

それでも、SNPが有権者の信頼を継続して得ていくには、スタージョンが、SNPの独立熱を抑えながら、政権運営で優れた手腕を発揮しているという印象を継続して与えていく必要がある。スタージョンへのプレッシャーは大きい。

2度目のスコットランド独立住民投票の可能性

2014年9月18日、スコットランドで、独立するかどうかの住民投票が行われた。独立賛成45%、反対55%で、反対多数の結果だった。しかし、この住民投票の運動で、支持基盤を拡大した、独立賛成のスコットランド国民党(SNP: Scotland National Party)は、2015年5月の総選挙でスコットランドを席巻し、下院の全650議席のうち、スコットランドに割り当てられた59議席中56議席を獲得。その勢いを背景に、独立住民投票を再び、なるべく早く行うべきだという意見が、党所属下院議員、SNP支持者らに強い。

住民投票1周年を迎え、いくつかの世論調査が発表されているが、独立賛成が47%から49%、反対が51%から53%である。もしさらなる住民投票があったとしても、独立賛成が上回るとは限らない。果たして2回目の住民投票が行われるだろうか?

2014年独立住民投票の経緯

2014年の住民投票は、スコットランド分権政府を担当するSNPの強い主張で実施されることとなった。SNPはもとともスコットランドのイギリス(UK)からの独立を謳ってきていたが、実は、この独立住民投票がこのように早く行えるとは考えていなかった。

スコットランドの分権議会は、ブレア労働党政権下、住民投票を経て、1999年に設けられた(1979年にも分権の住民投票が行われ、分権賛成が多数を占めたものの、投票率が低く、定められた基準をクリアーできなかった)。

当時、スコットランドでは労働党が圧倒的な強さを誇っていたが、ブレア政権は、弱小勢力であったSNPを警戒して、いずれの政党もスコットランド議会で過半数を占めることが極めて難しい投票制度を設けた。これは、小選挙区比例代表併用制と呼ばれる。日本の衆議院の小選挙区比例代表並立制では、小選挙区と比例代表で、議席が、それぞれ別々に計算されるが、スコットランドでは、比例代表の得票率で小選挙区の結果を含めて議席数が決まる。つまり、8つに分かれた地区内の小選挙区でほとんどの議席を獲得しても、比例の得票次第で、それ以上の議席を比例で獲得できなくなる仕組みである。

SNPは、2007年の議会選で最多議席を占め、政権に就いたが、その際の議席は全129議席のうち47議席で、過半数からはかなり遠く離れていた。1999年、2003年と、労働党と自由民主党の連立政権が続いてきたが、2007年には、労働党は46議席と振るわなかった。政党同士の連立交渉がまとまらず、結局、SNPが少数政権として、スコットランド分権政府を運営するという形となったのである。

多くは、この少数政権は長続きしないと見たが、SNP党首のサモンド首席大臣は、政権を巧みに運営し、政策ごとに労働党、保守党、自民党と連携して法案を通し、4年間の任期を全うした。この政権で、サモンドは、スコットランド独立住民投票案を出したが、他の主要政党は賛成せず、SNPも無理に通そうとはしなかった。

2011年のスコットランド議会選のマニフェストでも、SNPは独立住民投票の実施をうたっていた。しかし、選挙前、SNPを含めて、だれもSNPが議会の過半数を占めるとは考えていなかった。過半数を獲得し、SNPは住民投票を実施せざるをえなくなった。そしてロンドンのキャメロン政権との交渉が始まる。

この頃の世論調査では、独立賛成派は少なく、とても勝ち目はないと思われた。独立賛成の可能性はないと判断したキャメロン首相は、独立住民投票に応じることとなる。

ところが、住民投票の日が近づき、独立支持が急伸し、それに慌てた保守党、労働党、自由民主党が、独立反対の結果の場合には、スコットランドへのさらに大幅な権限移譲をすると約束した。また、住民投票後、独立することになった場合に備えて、大手企業が準備を進めており、スコットランドから多くのビジネスが離れるのではないか、などという報道がなされた。

結局、住民投票で、特に55歳以上の人たちが独立に反対したが、これは、スコットランド独立後の財政状況、特に、年金を心配したのではないかと言われる。イギリスでは、オズボーン財相の下、年金はトリプルロックと、言われ、インフレ率、平均賃金上昇率、もしくは2.5%の3つの基準のうち、最も高い数字に従って、毎年、上昇することとなっている。すなわち、年金は毎年、少なくとも2.5%はアップしていくのである。

しかし、スコットランドの人口は、イギリス全体の8%で、イギリスほど財政力が強くない。エコノミスト誌が、スコットランドを「スキントランド(お金のない国)と表現したことがあるが、サモンド首席大臣(当時)の頼みの綱ともいえる北海油田からの収入に疑問があり、スコットランドの継続的な財政力に不安があった。この北海油田からの収入は、最近の石油価格の崩壊で、さらに見通しが暗くなっている。独立すれば、スコットランドは財政的に悪くなると見ているスコットランド人が多い

スコットランドの魅力

かつてスコットランドに5年余り住んでいたことがある。スコットランドには魅力がある。過去3年間、毎年1週間ほど、スコットランドにウォーキングに行っているが、その都度、スコットランドの魅力を実感する。スコットランドの、特に北部のハイランドには、アメリカ人やイングランド人の旅行者が多く、住んでいるイングランド人も多い。

スコットランドの自然は素晴らしい。天候は次々に変わり、天気予報はそう信頼できないが、それでも時に空一杯に広がった青空の下、靄のかかった、少し湿った遊歩道を歩く爽快感には素晴らしいものがある。この自然だけでもスコットランド人の誇りを高める効果があるのではないかと思われる。

日本人にはスコットランドはイギリスの首都ロンドンから遠く北に離れた田舎のような印象があるかもしれない。しかし、スコットランドには、かつて北からバイキングが攻めてきた歴史があり、しかも東のフランスと組んでイングランドと戦ったこともある。

18世紀初めに、スコットランド議会とイングランド議会が統合され、スコットランド議会は「停止」されたが、この統合前には、いずれの側も統合を嫌った。それぞれ違う「国」であり、文化的にも異なるので、うまくいかないと思ったのである。もちろんイングランドとスコットランドの間の戦闘も多かった。1318年のバノックバーンの戦いは、2014年の住民投票の際にもスコットランドの愛国心を高めるのに使われた。

このような愛国心は特に若い世代に浸透しており、独立住民投票でもその傾向は、はっきりと出ている。しかし、先述したように、スコットランドには、独自の魅力があるものの、財政的に不安がある。

2014年の独立住民投票から1年を迎えた、9月18日、BBCラジオのニュース番組で、ある専門家が、老いた世代から若い世代に入れ替わっていくと、独立機運は益々強くなると解説したが、この分析には、スコットランドがイギリス内で有利な財源配分を受けており、年金など人々の生活の基本となる条件を十分に検討していない分析だと感じられた。

2度目の住民投票の可能性?

住民投票が近い将来、再び行われるかどうかは、多くの要因に影響されるだろう。世界経済が、中国、欧州などの減速で揺れる中、スコットランドの将来はかなり不透明だと言える。「寄らば大樹の陰」という発想がスコットランドの多くの住民にあっても何ら不思議ではない。スコットランド住民が、次の独立住民投票では、より冷静な目で将来の可能性を見るように思える。

スコットランドのはっきりとした将来計画がない場合、スコットランド独立投票の実施は、SNP政権を弱める可能性がある。もし、2014年の賛成45%対反対55%の差が、さらに広がるような結果となれば、住民投票を実施する政治判断そのものが問われることとなり、SNP政権はこれまで築いてきた信用を大きく失う可能性がある。

SNPの現党首、スタージョン首席大臣は次期住民投票をどうするか慎重になっているが、いずれにしても2016年5月にはスコットランド議会選挙がある。世論調査では、これまでSNPの優位が伝えられている。一方、労働党のコービン党首の選出で、スコットランドの労働党が回復する可能性も否定できない。また、キャメロン首相が2017年末までに実施すると約束している、EUに残るかどうかの国民投票もある。もし、イギリスがEU脱退に賛成すれば、EU残留を望むスコットランドが独立住民投票に臨む可能性が強い。いずれにしても、政治は常に変化している。すべてのパラメーターが変化する中、独立住民投票をどうするかの判断は、スタージョン首席大臣の真価が問われる問題である。

スコットランドの政治状況

2016年5月5日木曜日に行われるスコットランド議会議員選挙まで、あと9か月となった。この選挙は、通常4年毎に行われることになっている。前回は5年前の2011年に行われたが、2010年の総選挙後発足したキャメロン連立政権が、政権の安定を求め、5年の任期固定議会とすることとしたため(2011年議会任期固定法)、2015年5月にはイギリス全体の下院の選挙とスコットランドらの議会議員選挙が重なることとなった。異なった選挙制度(下記参照)の選挙を同じ日に実施するのは、不適当という判断から、スコットランドらの議会議員選挙が2016年に行われることとなったのである。

さて、来年のスコットランド議会議員選挙では、有権者の年齢が18歳以上から16歳以上に下げられる。2014年9月に行われたスコットランド独立住民投票(独立反対が賛成を上回った)で、独立賛成派の、スコットランド分権政権を担当するスコットランド国民党(SNP)が、有権者の年齢の引き下げを強く主張し、キャメロンが、それを認めた。年齢の引き下げは成功したと見られ、スコットランド議会が、超党派で有権者の年齢を下げることとなったのである。

この選挙では、SNPが、下記の世論調査で示されているように、その勢力を増大する勢いである。SNPは、650議席の争われた5月の総選挙で、スコットランドの59の下院議席のうち、56議席を獲得した

世論調査

SNP 労働党 保守党 自民党 緑の党
Survation世論調査(7月3日~7日) 選挙区 56 20 14 7 候補者なし
地区比例 45 19 12 8 11
TNS世論調査(6月19日~7月8日) 選挙区 60 20 14 5 候補者なし
地区比例 51 21 13 5 7
TNS世論調査(5月13日~31日) 選挙区 60 19 15 3 候補者なし
地区比例 50 19 14 5 10
2011年選挙実績 選挙区 45 32 14 8 候補者なし
地区比例 44 26 12 5 4

なお、緑の党は、選挙区では候補者を立てず、比例のみで争う。前回の2011年には2議席を比例で獲得した(下記獲得議席数参照)が、次回はその議席を伸ばす勢いである。保守党と自民党は前回とあまり変わらないが、総選挙で、前回の41議席からわずか1議席と惨敗した労働党は、スコットランド議会でも議席をかなり失う情勢である。

以上の世論調査の出所は以下のとおり。
TNS世論調査(5月13日~31日)
TNS世論調査(6月19日~31日)
Survation世論調査(7月3日~7日)

2011年スコットランド議会選挙結果(獲得議席数)

SNP 労働党 保守党 自民党 緑の党 無所属
選挙区 53 15 3 2 0 1
地区比例 16 22 12 3 2 0
合計 69 37 15 5 2 1

SNPは、2007年に最多議席を獲得し、少数政権についたが、2011年には、全129議席の過半数を獲得した。上記世論調査では、SNPが再び過半数を獲得する勢いである。

スコットランド議会の選挙制度

イギリスの総選挙、すなわち下院議員選挙は、完全小選挙区制で、それぞれの選挙区で最多の得票をした1人だけが当選する。SNPはスコットランドでの得票率50%で、59議席中56議席を獲得した。

一方、スコットランド議会議員選挙は、小選挙区比例代表併用制である。日本の衆議院選挙の小選挙区比例代表並立制が、小選挙区と比例区で別々に当選者が決まるのに対し、スコットランドの制度は、8つの地区ごとの比例代表に投じられた政党の票の割合によって、基本的に議員数が決まる。つまり、小選挙区で多くの議席を獲得すれば、地区ごとの比例代表で当選する人の数は制限される。この制度は、一つの政党が過半数を占めることを極めて困難にした制度である。

益々強くなっているSNP

先月の総選挙でスコットランドを席巻したスコットランド国民党(SNP)が、さらに支持を増やす勢いだ。

SNPは、5月7日に行われた総選挙で、スコットランドの59議席中、56議席を獲得した。その前の2010年総選挙では、わずか6議席であったことを考えると、非常に大きな飛躍である。イギリスの総選挙、すなわち下院議員選挙は、完全小選挙区制であるため、それぞれの選挙区で最多の得票をした一人だけが当選する。そのため、SNPはスコットランドでの得票率50%で、これだけの議席を獲得した。

一方、スコットランドでは、来年のスコットランド議会議員選挙に視点が移っている。この選挙は、小選挙区比例代表併用制で行われる。日本の衆議院選挙の小選挙区比例代表並立制が、小選挙区と比例区とで別々に支持率によって当選者が決まるのに対し、スコットランドの制度は、8つに分けられた地区の比例代表に投じられた政党ごとの票の割合によって、小選挙区を含めて、議員数が決まる。つまり、小選挙区で多くの議席を獲得しても、地区ごとの比例代表で当選する人の数は制限される。この制度は、一つの政党が過半数を占めることを極めて困難にした制度である。

さて、マーケティング・リサーチ会社TNSは、世論調査の一環で、有権者の政党支持も調査しているが、来年5月5日に行われるスコットランド議会議員選挙への支持動向の世論調査(5月13日から31日実施)の結果を発表した。それによると、各党の支持率は、以下のとおりである。

スコットランド議会議員選挙の各党支持率(%)

 

 

SNP

労働党

保守党

自民党

緑の党

2015年5月世論調査

選挙区

60

19

15

3

候補者なし

地区比例

50

19

14

5

10

2011年選挙実績

選挙区

45

32

14

8

候補者なし

地区比例

44

26

12

5

4

SNPが選挙区、地区比例ともに支持率をかなり伸ばしている。なお、2011年議会選挙の結果は以下のとおりだった。

2011年スコットランド議会選挙結果(獲得議席数)

 

SNP

労働党

保守党

自民党

緑の党

無所属

選挙区

53

15

3

2

候補者なし

1

地区比例

16

22

12

3

2

0

合計

69

37

15

5

2

1

2011年には、どの党も過半数を取りにくい制度でありながら、SNPが全129議席の過半数を獲得した。そして、2014年9月、その際のマニフェストで約束した独立住民投票を実施した。

上記のTNS世論調査では、SNPが選挙区で15ポイント、比例で6ポイント伸ばしており、SNPはさらにかなり議席を伸ばす勢いだ。もちろんこの世論調査は、総選挙でSNPが大勝利を収めた後、すぐに行われたもので、1年後のスコットランド議会選挙まで続くとは必ずしも言えない。しかし、今のところ、SNPがさらに議席を伸ばし、再び過半数を獲得する勢いである。

一方、労働党の凋落ぶりが明らかであり、また、スコットランド独立住民投票で、独立に賛成した緑の党の支持が伸びている。緑の党は議席を伸ばす勢いだ。