日本の民進党に何が必要か?

森友学園、加計学園問題などで苦しむ安倍政権は支持率を下げているが、野党第一党の民進党は、支持率が上がるどころか逆に下がり、一桁台中ほどで停滞している。東京都議選でも小池都知事率いる東京ファーストが大きく支持を集め、民進党は議席を減らし、党首が辞任する結果となった。

東京ファーストの躍進は、フランスのマクロン新大統領が当選し、その率いる新政党が地滑り的大勝利を収めたことと重なる。すなわち、既成の主要政党に飽き足らない有権者がフレッシュな政治勢力に望みを託したいという思いを反映しているといえる。このような例に刺激されたのか、民進党の主要メンバーが離党して新党を模索する動きに出たが、マクロン大統領の支持率は既に大きく低下しており、このような新政治勢力が支持を持続していくのはそう簡単ではないことを示しているように思われる。

一方、イギリスの総選挙で見られたように、メイ首相の保守党は、地滑り的大勝利を予測されていたにもかかわらず、過半数を割る結果となった。その一方、野党第一党の労働党は、大敗北を予想されていたにもかかわらず、議席を増やし、もし総選挙が近々あれば、さらに議席を増やし、労働党政権が生まれる可能性が高いと見られている。

保守党と労働党はいずれも前回総選挙より大きく票を伸ばし、2党で、前回2015年の総選挙の得票率60%台から80%台に達する状況となった。その一方、地域政党を除いて第3党だった自民党はEUに関する2回目の国民投票を約束して選挙戦を戦ったが、予想に反し、前回総選挙で大きく失った得票をさらに減らした。前回総選挙で13%近い得票のあったイギリス独立党(UKIP)は2%を下回った。UKIPはもともとEU離脱を謳って設立された政党で、有権者の既成の政治に対する不満も吸収してかなり高い得票率を得たが、EU離脱が決まり、さらにUKIPの不満票を惹きつける力が無くなった結果と言える。

イギリスの主要2政党が高い得票率を達成したのは、有権者にはっきりと違う選択肢を提示したことが大きな要因と思われる。両党とも、EU離脱では、2016年国民投票の結果を尊重して離脱するという立場だったが、これからの国の在り方の点では大きく異なった。

前回2015年の総選挙では、キャメロン首相率いる保守党とミリバンド党首率いる労働党の間の政策の差が少なかった。労働党は、一定期間光熱費を凍結するという政策など、保守党から強い批判を浴びた政策を打ち出したが、いずれも緊縮財政の立場では同じような立場をとった。

一方、2017年総選挙では、保守党が緊縮財政の立場を維持し、税政策をあいまいにし(すなわち増税の可能性)、また、既存の便益を減らす立場を取ったのに対し、労働党は基本的に反緊縮財政の立場を取り、通常の公共支出ではない公共投資を大幅に増やし、保守党政権下で、実質ならびに事実上削減された福祉、教育、健康医療などの財源を確保するため、保守党政権下で大幅に下げた法人税を引き上げ、所得税ではトップ5%に増税するなどとした。その政策には大学授業料の無料化も含まれ、大学卒業後5万ポンド(約700万円)以上の借金を抱えると見られる多くの若者の負担を大幅に引き下げるとし、労働党は、「少数ではなく多数のため」に働き、「希望」を提供すると訴えた。つまり、保守党と労働党がはっきりと異なる立場を取ったことが、2党に票が集まった大きな原因と言える。

もちろんこれには、政治的な状況がある。メイ首相への有権者の評価が終盤まで高かったこと、コービン党首への特に若い世代の支持が急伸したこと、さらに労働党の政策への支持が高まったことである。労働党の政策は、強硬左派と目されたコービン党首が長年持ってきた基本的な考え方に基づくもので、それらが、2010年以来の保守党政権下の緊縮財政への不満が顕在化してきた時流に合ったことが背景にある。

さて、日本の民進党の最大の問題は、なぜ自民党ではなく、民進党でなければならないのかという基本的な問いに答えられていないことである。そしてその答えに必要なのは、イギリスの労働党のような将来への具体的なイメージであろう。

イギリスでもそうだが、政治コメンテーターのほとんどは、これまでの政治の動きの延長で将来を予測し、その枠内で行動しようとする。その将来の予測が共有されてくると、一定の範囲から離れられない(英語ではよくHerdingと言うが)という状態に陥る。それが、思考の足かせとなる。これが、ほとんどの世論調査会社がイギリスの2017年総選挙の予測を誤った原因でもある。

政情やタイミングにもよるが、政権政党の過ちを攻撃するだけでは、より多くの有権者の支持を得るのは難しい。さらに、もし民進党が党内で誰もが合意できる政策を打ち出そうとすれば、新しい、魅力のあるものが何も生まれないことになりかねない。むしろ、はっきりしたイメージをもとに、強い方向性を訴えて、その方向に党を引っ張っていくことが必要だろう。つまり、他の人を説得していく過程で、党内に強い求心力を作っていくということである。かつて小泉元首相が自民党の党首に選出された際には「自民党をぶっ壊す」と主張したが、そのような強いものが必要とされるだろう。

なお、今年初めに日本に帰国した際、民主党の蓮舫党首の街頭演説を見る機会があった。その際の印象は、すべてがたるんでいるというものであった。党首のスピーチは地元の状況にマッチしておらず、話が浮ついていた。しかもその前の地元の人のスピーチも準備不足だった。街頭演説の準備作業自体もおぼつかないものだった。

話を聞く人の心をどのようにつかむのか、どのような言葉を頭に入れてほしいのか、また、党や党首に関してどのような印象を与えたいのかというはっきりとした考えなしに、単に「流している」という印象を持った。緊張感のないこの状況では有権者の支持の流れを自分たちの方へ向けることは難しいと感じた。基本的な方向性の見えない状況で、自らに有利な政治状況を作ることのできない五里霧中状態の反映なのだろうと思われた。民進党がこのような閉塞状態を打ち破り、有権者に希望の持てる将来像を示すことが再生への第一歩のように思われる。

現状のままで、小手先だけの政策提示に留まると、支持を失いかけている自民党とともに、有権者の不満に直接さらされ、都民ファーストに見られたように新しい政治勢力に有権者の関心を奪われてしまう可能性があるだろう。

ブレアのアドバイス

トニー・ブレア元首相には、イラク戦争などのため、今でも批判が強い。しかし、失敗したことのないトップ政治家はいない。イギリスの首相を1997年から2007年まで10年余り務め、世界的にステイツマンとしてみなされている人物の発言には耳を傾ける価値があるだろう。 

首相退任後のブレア 

ブレアは首相を退任した時、下院議員を辞職し、自らのオフィスをオープンした。それ以来、中東問題に関する国連、EU、米国、ロシアの中東特別大使を無給で務めている。それでもスピーチ活動、投資銀行の顧問やコンサルタントの仕事などでこれまでに1億ポンド(184億円:£1=184円)稼いだという憶測がある。なお、本人はその4分の1だと発言したことがある。また、そのオフィスにはチャリティ活動を含め、200人のスタッフが働いていると言われる。メディアには、イラク戦争への介入を決めたブレアに今でも批判的な声が強く、また、ブレアの稼ぐ能力、もしくはその世界各国に対する影響力などに対して、やっかみ的ともいえる記述が多い。

なお、その回顧録「ジャーニー」では印税を含め500万ポンド(92千万円)以上を得たが、それはすべて戦争で障害を負った兵士たちのチャリティに寄付した。

ブレアと妻シェリー

クリスマスシーズンとなり、主要政党党首ら政治家たちのクリスマスカードが注目される中、ブレアとその妻シェリーとのカードにもスポットライトがあたった。ブレアのスマイルが作り笑いのようだと揶揄されたのである。このカードを見た瞬間、これは妻シェリーの顔が最もよく映っている写真を使ったためだろうと思われた。ブレアはシェリーの気持ちを非常に大切にしている。

ブレアは、このシェリーとの間に4人の子供をもうけた。シェリーはブレアに大きな影響を与えている。シェリーなしにブレアの政治的な成功はなかったかもしれない。シェリーの父親はトニー・ブースという良く知られた俳優だが、放蕩で、母は非常に苦労して子供を育てた。そのため、イギリスの名物だが、仕事としてはよいものと見なされない、フィッシュ・アンド・チップスの店でも働いたことがある。そのためか、シェリーにはお金にこだわる傾向があるようだ。

例えば、1997年にブレア政権が発足した時のことだ。ゴードン・ブラウン財相(当時)の発案で、閣僚は給与の一部を辞退することになった。これにシェリーは非常に怒ったと言われる。また、ブレアの首相時代、オーストラリア人の詐欺師の紹介で、長男ユアンの通うブリストル大学の近くにフラット(日本のマンション)を二つ購入したことがわかり、非常に大きなニュースとなった。首相官邸に入るまで住んでいた、ロンドンのイズリントンの家を売ったが、家の価格が上がる中、自分たちが不利になることを心配したと言われる。さらにブレアが首相在任中、現在住むロンドン中心の家を購入した時も大きなニュースとなった。首相の配偶者の多くが目立たないよう配慮しているのに対し、勅任の法廷弁護士(QC)であるシェリーには特に注目が集まった点もあると言えるだろう。それでもブレア家のライフスタイルにはシェリーの影響が大きいように思われる。 

ブレアのアドバイス

ブレアのイラク戦争判断を検証したチルコット調査の結果は、来年5月の総選挙後に発表されると見られる。その他、テロリスト容疑者の他国移送や拷問を関知していた疑いや、北アイルランド問題の解決で使われた念書を巡って、議会の委員会への喚問問題など、かつての行動に対する批判が今も絶えない。

何かと注目を浴びているブレアだが、12月の初め、アメリカのニューヨークタイムズに書いた。世界中で起きているデモクラシーの沈滞について述べたものだが、いくつか注目すべき点がある。

まず、政治家は民間と比較して給料がよくないと指摘し、給料を上げるべきだという。かつて松下幸之助さんが、政治家の給与を大幅に上げるべきだと発言したことと通じるものがある。ブレアは、政治家となることへの魅力を増し、多様で活力のある人たちが政治に入ってくることを促進すべきだ、政治以外の世界で働き、責任ある地位に就いていたことのある政治家が少なすぎるのは問題だとした。ブレアは政治家になる前、弁護士として7年間働いたが、その時代に仕事や人について学んだという。

なお、現在、イギリスの下院議員の年俸は、67,060ポンド(1,234万円)である。それに経費が支払われる。経費には事務所運営費用、スタッフ費用、ロンドンと選挙区での住居費用補助、それに選挙区と国会との間の旅費などが含まれる。年俸は、2015年度から74,000ポンド(1,362万円)に上がる。その後、一般の給与上昇率に従って上昇することになっている。

また、民間と政府の差について指摘する。トップ企業は変わるが、政府は変わらない、トップダウンの官僚制は現状維持で、大きく変化するテクノロジーが有効に使われていないとする。この政府と民間の差が、政治への幻滅を招いており、人々は問題を解決しない人気取り策に走っているという。

ブレアは、国を統治するためには、難しい選択をせざるをえないと指摘する。政治家は、それに対して、敬意を払われるべきで、虐待されるべきではないとし、ブレアの現在直面している状況を反映したものと言えるだろう。しかし、翻って日本を見れば、日本の抱える問題に取り組むためには政治家も政府も大きく変わる必要があるのは間違いないと思える。

人任せの日本の財政再建

日本の総選挙が終わった。自民党と公明党の連立与党は議席を伸ばし、安倍政権は、再び衆議院の3分の2以上の議席を獲得した。この結果、安倍政権はさらに政権基盤を安定させ、日本の抱える最も大きな課題といえる財政再建を強力に進めていくことができるのだろうか?

総選挙の公約に各党が財政再建策を入れた。安倍首相率いる自民党もそうである。しかしながら、そのいずれもが事態の深刻さを認識した上で断固たる対応をするというものではなく、「人任せ」の政策といえるもののように思われる。 

財政再建の手段 

財政再建には幾つかの手段がある。歳入を増やすための増税や経済成長策、歳出を減らすための財政削減や行政の役割の見直しなどである。

イギリスでは、現在、財政赤字(会計年度ごとの赤字)を徐々に減らすために、財政削減目標と経済成長目標を立て、財政削減目標が達成できる範囲内で経済成長策を打っている。それに増税や行政の役割の見直しなどが加わる。一般に、経済が成長すれば税収が増え、財政赤字削減に効果がある。ところが、イギリスはG7トップの経済成長を遂げているにもかかわらず、賃金低迷などのために税収が伸びず、財政赤字削減が遅れている。そのため、2015年までに財政赤字をなくし、増加する政府債務(累積の借金)を減らし始めるとの計画は2017年度まで延長された。しかし、この計画の実現可能性には疑問がある。さらに、来年には賃金上昇がインフレに追いつくと見られているが、欧州経済、世界経済が不透明なため予断を許さない。 

財政赤字を減らすには、単に、財政削減や増税を実施すればよいというものではない。一方、経済成長策の効果には予測が難しい面があり、そのため、多様な政策手段を機動的に使っていく必要がある。 

「具体的な計画」のない日本 

日本の政府債務は国内総生産(GDP)の240%あり、先進国で最も大きく、この債務は年々増加している。GDP当たりの債務の比率は、イギリスの3倍近い。これを放置しておけないことは誰もが認識している。この借金を減らしていくためには、まず、財政赤字を減らしていく必要があり、そのために与党の自民党や公明党は国・地方の基礎的財政収支、いわゆるプライマリー・バランスを2020年度までに黒字化すると約束している。ところが、この目標は、経済成長しているイギリスの財政赤字削減が遅れているように、達成することは容易ではない。

プライマリー・バランスの黒字化の達成は、前回の2012年の総選挙でも自民党の公約だった。ところが、2年たった今回選挙の公約に、「具体的な計画を来年夏までに出す」と述べているのは意外とも言える。消費税の10%引き上げ延期で、政府の歳入に狂いが生じたのは事実だろうが、それが、2017年春まで延期されたことで、大手信用格付け会社ムーディーズは、日本の国債を121日に格下げし、フィッチは、日本に「明確かつ信頼に足る中期計画がない」ことを理由に引き下げる構えだ。

安倍政権は、財政再建をこれまで、消費税増税と、アベノミクス、すなわち経済成長策に頼りすぎてきたようだ。消費税増税とその経済成長に与えるマイナス効果の一種の陥穽の中に落ち込んだように見える。イギリスのオズボーン財相なら、既定の方針を貫くと発言しても、決して「具体的な計画」をこれから策定するとは言わないだろう。

本来、安倍政権は、2012年の政権誕生の瞬間から、あらゆる財政再建の手法を徹底的に使い、総力を上げてその目標に向けて取り組む必要があった。ところが、誰もがアベノミクスの虚構に目を欺かれていたように思える。タイムズ紙(20141215日)は、安倍首相は、規制撤廃や市場開放に失敗したと評し、また、社説で、既得権益からの反対で引き下がったと言う。

これまでのアベノミクスは、金融政策や公共投資など、比較的合意が得やすい政策、つまり「空中戦」とでもいえるべきものに重点が置かれていたが、既得権益に具体的に切り込む「地上戦」はスローガン中心であったように思われる。それでは、今回の総選挙の結果、「強力な安倍政権」は、この「地上戦」に強力に取り組めるのだろうか?

日本の野党も同じ問題を抱えているように思われる。「財政健全化推進法」や「財政責任法」のような法律の制定を公約に掲げた政党があるが、問題は、このようなスローガン的な法律の制定だけでは事態はほとんど変わらない事である。このような法律を制定すれば、自動的に目的が達成されると考える人もいるかもしれないが、必ずしもそうとはいえない。イギリスでも既存の法律で対応できるにもかかわらず、政府が何かやっているというポーズを示すために法律を制定することがかなりある。 

実際のところ、日本の政治家は、そのような法律を制定することで、公務員に財政再建をさせようとしているのだろうか?法律を制定するか否かを問わず、その目的に向かってまい進していく政治的リーダーなしにはその効果は十分ではない。 

一方、財政削減や公務員の人件費削減など横並び的に、全体的に少しずつ減らそうという発想がある。日本の巨額の債務を考えると、そのような方法では到底対応できず、政府の役割の根本的見直しで、行政の在り方を根本的に見直すことから始める必要がある。日本の抱える問題は、イギリスの問題よりはるかに大きく、人口の増加しているイギリスから学べることには限りがある。日本は、少子高齢化で、急速に人口の高齢化が進み、労働人口が大きく減少している。

既存の制度を維持したうえで、財政削減と増税に頼って財政赤字をなくそうとするのは困難である。まずは、新しい、日本流の政府の在り方を提示したうえで、国民の行政に対する考え方と期待を変えることから取り組む必要があるが、それができるだろうか?安倍首相は、開票時の記者会見で、国際的に日本の地位を高めたいと発言したが、日本が財政再建の問題に取り組み、成功させることほど日本の国際的地位を高めるのに役立つことはないと思える。もし、困難な問題を先送りにし、真っ向から取り組むことがなければ、その解決を人任せにしているというそしりを免れないのではないか。

イギリスから見た日本の総選挙

日本では1214日に総選挙が行われるが、大規模な世論調査を実施した報道各社がそろって自公が圧勝する見通しだと述べた。大義名分のない選挙だと言われる中、なぜそのような状況になっているのか?イギリスの視点から見ると二つの点に集約されるように思われる。

まず、自民党である。安倍政権は、世界的にも注目されたアベノミクスで日本経済に活気をもたらせ、有権者には、やはり頼りにできるのは自民党という感覚があるように思われる。イギリスは二大政党制で保守党と労働党の対決と言う構図があり、政党関係者もお互いをライバル視している。メディアも同様だ。ところが日本では民主党政権が失敗に終わり、その信用度は低いままである。つまり政権を変えようにも変える先がないことになる。野党の統一という話があるが、もしまとまっていたとしても、中心となるべき民主党がこれでは(むしろこのために野党がまとまらなかったとも言えるだろうが)、自民党に対峙して有権者の信用を獲得することはできなかっただろう。

なお、イギリスでは一度有権者の信用を失った政党が回復するには長い時間がかかる。1997年にブレア労働党に大敗北した保守党は、その「嫌な党」イメージから立ち直るのに苦労し、2010年の総選挙でも過半数を占めることができなかった。現在でも完全に立ち直ったとは言えない。

さらに現在の安倍政権は、閣僚のスキャンダルもあったが、まだ有権者が罰を与えなければならないほどの失敗をしていない。少なくとも株価は上がり、失業率も低い。現在、国内総生産(GDP)がマイナス成長となっているが、消費税増税の先延ばしは、国際的にはともかく、状況に柔軟に対応する政権として国内では安倍政権への評価につながっているように思える。

そして二番目には、安倍政権のスピン(パブリック・リレーションズの)の巧みさである。経済改革や女性活用策など、具体的な成果はともかく、そのイメージ向上効果が出ているように思われる。これらの結果、安倍政権に懐疑的な有権者も、とりあえず安倍政権支持に向かっているのではないか。

しかし、予想通り与党が圧勝すれば、安倍政権は党内基盤を強化し、より強力な政策を推進できるのだろうか?

安倍政権支持の背景には、経済が成長すれば全体のパイが拡大し、誰にもプラスになるという虚構が存在しているように思われる。実際には、例え、ある程度経済が成長しても、グローバル経済化や少子高齢化、巨額の政府債務などでパイは縮小している。つまり、政策目標の重点を変え、配分のバランスを変えるなど、既得権益に手を入れることが必要な時代であり、誰をも喜ばせるようなわけにはいかない。 

アベノミクスは、日本のデフレ脱却のためにはやむを得ない策だと諸外国から見なされたが、その効果は先細ってきている。GPIFや日銀が国内の株を買い、企業のROEを上昇させるような施策を行い、NISAの拡大など株高を招く政策は、イギリスのオズボーン財相が、国民の関心の強い住宅価格をあおる政策を実施するのに似て、かなり危険な要素がある。景気上昇感をあおるにはよいが、行き過ぎると、その負の効果は非常に大きなものがある。

アベノミクスの第三の矢は、スケールが小さすぎ、しかも遅すぎるという批判がある。その成果が出るにしても何年もたってからということになる。今回の総選挙の争点がアベノミクスの是非を問うものだとすると、それは一種の絵にかいた餅のような議論のように思える。

アベノミクスの評価と今後

専門家たちの事前の予想に反し、2014年第3四半期の経済成長率が年率マイナス1.6%で、第2四半期の年率マイナス7.3%に続き、2期連続でマイナス成長となった。これは理論的に景気後退ということとなる。このため、アベノミクスの効果が議論されており、アベノミクスは失敗だという見解がある。しかし、そうではないという見方がある。

まず、アベノミクスはまだまだ有効だとするものは、今回の景気後退は、4月の消費税5%から8%へ上げたことの一時的なショックによるもので、単なるミニ・スランプにしか過ぎない。今冬から景気上昇に向かうとテレグラフ紙のAmbrose Evans-Pritchard.

一方、アベノミクスに効果がないわけではないが、時機を失したという見解がある。例えば、タイム誌のMichael Shuman20141114日)は、安倍首相は経済救済に必死だが、まだ必要なことを実施していないとする。アベノミクスの三本の矢、大胆な金融政策(第一)、機動的な財政政策(第二)、民間投資を喚起する成長戦略(第三)のうち、第一と第二の矢は実施したものの、第三の矢の経済の構造改革が遅すぎると指摘し、安倍首相にはそれができないかもしれないとする。安倍首相は、20146月、投資促進のための法人税減税、女性の登用、就業促進、農業改革などを打ち出した。しかし、重要な改革が停滞しており、その目玉となる経済特区や必要な労働市場改革は停滞し、TTPもそうだと指摘する。 

Fabius Maximusも厳しい見方をしている。まず、安倍首相の6月に発表した政策はほとんどの人が少なすぎると批判したとし、その前から安倍政権の支持率は下降していたと指摘する。そして今回のような景気後退は、政治力の必要な構造改革に取り組む力を削ぐという。また、アベノミクスのもたらす円安のために、実質賃金・年金が減り、家計所得が大きく減少していると指摘する。安倍首相は有権者の支持が無くなる前に選挙に打って出ようとしていると見るが、その構造改革能力を疑問視している。

結局、安倍首相のアベノミクスの試みには、この時点で二つの問題が指摘されるだろう。一つは、第三の矢の政策が出されるのが遅すぎ、しかもそれを実施するための政治的な意思が十分でなかったことだ。

それが12月の総選挙後改善されるとは考えにくい。つまり、自民党が2012年総選挙で地滑り的勝利を占めた際に比べると議席を減らすのは確実で、たとえ過半数を占めたところで大きく地歩を失ったという感覚は党内外に残り、安倍首相の力は大きく減退し、しかも経済の大幅な回復がない限り、安倍首相の後任に焦点が移ると思われるだろうからである。

投票権を引き下げると若者が選挙に関心を持つ?

日本では、選挙への投票権を20歳から18歳に引き下げることとなった。世界の多くの国が18歳を採用していることや、高齢者が増えており、世代間のバランスを取るため、さらには若い世代が政治に興味を持つきっかけとするなどの狙いがあるようだ。 

しかし、それが効果を生むのだろうか?それだけで若い世代が政治に関心を持つようになるのだろうか?日本の政治がより健全になるのだろうか? 

イギリスでは、1969年に18歳としたが、若年層の関心が必ずしも高いとは言えない。20155月に総選挙が予定されているが、その総選挙で初めて投票する現在17歳から21歳までの世代対象に行った世論調査では、投票するとした人は41%であった。全世代では60%、そして60歳を超える世代では4分の3の人が投票するとしている。年齢の高い層と比べると若年層の政治的な関心は低い。

これは、これまでの歴史的な傾向にも合致する。 

18歳から24歳の総選挙での投票率推移

総 選 挙 1970 1974 2 1974  10 1979 1983 1987 1992 1997 2001 2005 2010
投票率 64.9 70.2 62.5 62.5 63.9 66.6 67.3 54.1 40.4 38.2 51.8
全世代 72.0 78.8 72.8 76.0 72.7 75.3 77.7 71.4 59.4 61.3 65.0

出典:英国下院図書館資料SN/SG/1467 201373。(なお、2010年には自民党の党首クレッグによるクレッグブームで若い世代の投票率が伸びた。)

学校時代にきちんと市民権教育を施せば、投票率が高くなるだろうという見方があるが、ある研究報告書によると、英国の学校で市民権教育を実施したが、投票率向上への長期的な効果はなかったという。単に市民権教育を実施するだけでは不十分なようである。

そこで、選挙年齢を16歳まで下げる考えを持っている労働党の影の法相シディキ・カーンは、有権者となって最初の選挙を義務制にすることを検討している。投票年齢を下げるだけでは、若年層と年齢の上の層との投票率の差を広げるだけになるからだ。最初の選挙に投票するとその後継続して投票する傾向があることに注目した。

日本で投票年齢を下げるだけで若い世代の政治への関心が増すと考えるのは十分ではないように思われる。むしろ、もし最初の選挙に投票しなければ、その後も継続して投票しない可能性が出てくるのではないだろうか?

それでは最初の選挙を義務制にするのはどうだろうか?実は、この問題はイギリスの政党によって考え方が異なる。選挙への影響を考えるからだ。労働党が積極的なのは、若年層の支持が強いからである。

日本では、単に選挙年齢を引き下げるだけではなく、いかに若年層の政治への関心を高め、投票率を上げるかに取り組んでいかねばならないように思われる。もちろん制度的な点も検討していく必要があろうが、若い世代がより関心を持つような政治にしていくことが大切なことである。

移民:日本は英国の経験から何を学ぶか?

国際化の波の中では、それぞれの国への移民を制限するかどうかにかかわりなく、結婚をはじめとするさまざまな要因で移民は増加し、その結果、異なった人種間の融合が進む。そのトレンドは長期的にますます強くなっていくだろう。それでは短・中期的にどう対応していくか?

英国の経験はその一つの参考とできるだろう。英国への移民は、第二次世界大戦後、本格的に始まった。そして移民を制限する努力を重ねているにもかかわらず、現在、非白人が800万人と人口の14%を占めるまでとなった。しかも非白人の出生率は高く、現在のまま推移すると2050年までに人口の20から30%を占めるようになるだろう、とのシンクタンクPolicy Exchangeの報告書が発表された。

この報告書では、英国の主要な非白人、インド人、パキスタン人、バングラデシュ人、アフリカ系黒人、カリブ系黒人の5つのグループを焦点に絞り、それぞれの社会環境や政治的傾向などにも触れている。なお英国の人口増の83%2001から2011年)は非白人によるものであり、非白人の割合は、5歳未満の子供の4分の1を占めているという。

この報告書の結果は、オックスフォード大学の人口学者デービッド・コールマン教授の予想と基本的に同じである。コールマン教授は、現在の移民のレベルが続けば、2070年までに英国では白人の英国人(英国人以外の白人もいる)が少数派となるだろう、その結果、英国の国民のアイデンティティが大きく変わる、つまり、文化、政治、経済、宗教が変わり、そしてこれらは、後戻りできない動きとなるだろうというのである。白人の英国人の出生率の減少がその大きな原因であるが、この傾向は、欧州のほかの国も同様であり、ドイツ、ベルギー、スペイン、オーストリアなどの変化は英国を上回るという(拙稿ニュースレター20135月号2070年・白人の英国人が少数派となる日)。

 歴史的視点 

英国はかつて世界の人口の4分の1を擁していた。そしてかつての大英帝国から多くの国が独立していった。現在でもエリザベス女王はオーストラリア、カナダ、ニュージーランドを含め16か国の元首である。なお、英国の元植民地を中心にした英連邦(Commonwealth)は緩い集合体だが、53か国が参加しており、現在でもかなりの存在感がある。アジア、欧州、アフリカ、北アメリカ、ラテンアメリカ、オセアニアに参加国があり、すべての主要宗教と人種を含んでいる。

しかし、移民が本格化するのは第二次世界大戦後である。英国では労働力が不足し、欧州からばかりではなく、旧植民地から多くの人たちが仕事を求めて来た。1945年には非白人の住民は少なく、数千人だったと言われるが、1970年には140万人となった。度重ねて移民を制限しようとしたが、1990年代以降も英国に来る移民の数が増え、現在に至る。 

この間、英国は、人種差別問題に端を発した人種暴動や地域社会での軋轢など多くの社会問題を経験した。1993年の黒人少年スティーブン・ローレンスが殺害された事件の警察の対応をめぐり、警察官の人種的偏見の問題が浮き彫りになり、今でもこの問題は続いている。

2011年国勢調査による人種別割合

人種 人数 %
白人 55073552 87.2
インド人 1451862 2.3
パキスタン人 1173892 1.9
バングラデシュ人 451529 0.7
中国人系 433150 0.7
他のアジア人 861815 1.4
黒人 1904684 3
混血 1250229 2
その他 580374 0.9
合計 63182178 100

 政治的影響

保守党は人種構成の変化を心配している。それが保守党の盛衰に関係する可能性が高いためである。白人の割合が次第に減っており、国勢調査では1991年には全人口の94%、2001年には91%が白人だったが、2011年には87%となった。5歳未満の子供で見ると白人の割合はわずかに73%にすぎない。

これが保守党にとって問題なのは非白人で保守党へ投票する人の割合が低いからである。2010年の総選挙の分析では保守党を支持したのは白人の37%だったが非白人はわずか16%にとどまった。一方、労働党は68%の支持を集め、自民党は14%だった。

これにそれぞれの社会階層の違いはほとんど関係していない。白人の中流階級の44%は保守党を支持し、それより下の階級の支持が32%であったのに対し、非白人の中流階級で保守党を支持したのは15%にとどまり、それより下の階級の保守党支持13%よりわずかに上回ったに過ぎなかった(拙稿ニュースレター20133月号 人種構成の変化と政治)。

この傾向は、上記の報告書でも同じである。特に来年の5月に初めて総選挙に投票する人たちのうち、非白人は18%だという。2010年にはこの割合は12%であった。 

日本への教訓 

移民は、その出生率の違いなどからその割合の急激な変化を招き、比較的短い期間に社会的に大きな影響をもたらす可能性がある。長期的に見れば当然といえることであるが、その過程で社会的な混乱を生む可能性がある。それを最小限にとどめるためには、人種差別問題などを含め、他国での経験を慎重に研究し、それらを踏まえて先を読んだ対応が要求されるといえるだろう。

公職に就く人の倫理(Ethics in high offices)

猪瀬直樹氏が「政治家としてアマチュアだった」と発言して都知事を辞職した。この言葉を政治の世界をよく知らなかったため失敗したと解釈している人が多いようだが、これは必ずしも正しいとは思われない。

まず、猪瀬氏の行政手腕に大きな問題があったのだろうか。当面大きな政治課題は2020年東京オリンピックを成功させるための準備であり、与党の自民党や公明党らの支持で、特に政治手腕の必要とされる状況にあったとは思えない。

一番大きな問題、すなわち失敗は徳洲会から5千万円を受け取ったことである。この問題で「アマチュア」だったと言うのは、受け取り方を誤ったということだろうか?政治のアマチュアであろうがプロであろうが、このお金の受け取りが何らかの疑念を招く可能性は十分に理解できたはずだ。

公職に立つ人の倫理は、英国では基本的に二つ原則があるように思われる。まずは、もちろんそのような行為をしないことである。そしてもう一つは、そのような行為をしたと疑われそうなことをしないことである。

英国ではジャーナリストらによる政治家へのおとり取材がよく行われている。通常ビジネスマンに扮したジャーナリストが金銭的な対価を提示して政治家に特定の利益のために働くようもちかけ、その始終をビデオ映像などで記録するという手段を使う。そのようなおとり取材は倫理的に疑わしいが、英国では一般に必要悪として受け止められており、公共放送のBBCでも番組パノラマでよく行っている。このようなおとり取材では、政治家に問題発言をさせようと故意に仕掛けてくるために、その対策は困難だ。しかし、基本は、そもそもそのような行為をしたと疑われるようなことをしないことである。

2009年の議員の経費乱用問題でも槍玉に上がり、また、おとり取材でも引っかかったある労働党元下院議員は精神健康上の問題で収監を免れたが、そのような状況にまで自らを追い詰めるほどのことをするだけのメリットがあったのかどうかという議論はあるだろう。しかし、問題はそのようなリスクの査定ではない。

英国でも特徴的なのは、議員経費制度の問題を挙げると、制度が設けられた当初は誰もがその制度の使用に慎重だったが、それが次第にルーズになり、濫用される状態が生まれてきたことだ。つまり、制度を設ければそれでよいというものではなく、最も基本的で、最も重要なのは、それぞれの人の倫理観であるといえる。英国でも日本でも公職に就く人は公職の意味を十分に吟味する必要があるのではないか。

福島原発の汚染水漏れの問題で見る心配な日本(Another Japan Crisis: Fukushima Leak)

福島原発の汚染水漏れの事件で、現在の日本の抱える大きな問題が出ているように思われるのでここで触れておきたい。

2011年3月の東日本大震災の津波で起こされた原発の問題は、人災というよりも天災の要素が大きく、原発災害の拡大を抑えるための関係者の必死の努力は国際的な称賛を浴びた。その現れの一つが吉田所長の死亡記事である。タイムズ紙の死亡記事は吉田所長への批判にも触れているが、胸を打つものだ。

今回の汚染水漏れの問題は、まさしく人災と言える。BBC東京特派員の報告では、これは明らかに一つの民間会社で対応できることを超えており、日本政府が介入すべきだと主張した。

ここで問題となっているのは、二つあるように思われる。まずは、個別の企業の対応だ。BBCの特派員が指摘したように、「無能、低いモラール、そしてひどいマネジメント」が問題ならば、なぜ、そのような状況になることを東電幹部が許したのか?どこに東電のリーダーシップがあるのか?いったい誰の責任かでそのような状況になることを許したのか?

このような質問をしても具体的な答えが返ってくることは期待できないように思われる。

さらにそのような企業の体質で、本当に今後ともきちんとした作業ができるのかどうかという疑問が生じる。これは、新たな規制やガイドラインを設けるといった問題ではなく、具体的なリーダーシップの問題である。

次に政府の問題だ。なぜこのような深刻な問題をこれまできちんと査察できていなかったのか?また、東電がこのような仕事をきちんと遂行する能力があると、どのような根拠で判断していたのだろうか?政府がこの問題に対してどのようなリーダーシップを発揮してきていたのだろうか?さらに政府が今後どのようなリーダーシップを発揮していくのか?

さらに「子供・被災者支援法」の具体化の遅れを巡る訴訟でも示されているような、後手に回る政府の対応をどのように変えていこうとするのか?

福島原発の問題には、日本の国民からの関心が高いだけではなく、今でも世界の目が集まっている。

特に、今回のような人災の要素の大きな事件については、東電の対応や政府の役割には海外の研究者も含めて大きな関心が集まっている。英国の新聞には連日のように福島原発関連の記事が掲載されている。

いずれ歴史がこれらの点を判断するだろうが、その前に考えておかねばならないのは、このような出来事は日本の評判を大きく傷つけることである。政府は、その行動を世界が注視していることを念頭に置き、きちんとしたリーダーシップを発揮して行ってほしいと願う。

アベノミクスの成長戦略は効果があるか?(PM Abe’s Growth Strategy)

アベノミクスの三本柱は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略である。この中では、特に金融緩和策がこれまで注目されてきたが、これにはこれまでも国内外から不安視する声があった。5月23日の株大幅下落でその不安感が増してきたと言える。

2番目の「機動的な財政政策」は、過去20年間で度重なる景気刺激策が効果を上げてこなかったことや、2020年度にプライマリーバランスの黒字化を目標としていることを考えると、どの程度効果があるのか疑問がある。

3番目の成長戦略では、これまで①女性活用②農業、産業の競争力強化③PFIを中心とした民主導のインフラ整備などが出てきているが、これらは今までのところスローガン的な目標設定に過ぎないように思われる。

英国でも、成長戦略に取り組んでいる。オズボーン財相は、なんとかして景気回復、そして経済成長を図ろうとしているが、これまで目立った成果は出ておらず、最近になってやっとその兆しが見えてきたという段階である。しかし、今年の経済成長には大きな期待はない。

英国の基本的な財政・経済政策は、金融政策(Funding for lendingという資金調達制度も設けた)を積極的に行い、中期的な財政削減策に取り組みながらインフラ投資をし、そして構造改革(教育、福祉、税制など)で不均衡な経済の是正を図ることである。

その成長戦略の目標は、以下のようである。G20で最も優位性のある税制とする、投資と輸出の促進、欧州でビジネスをする最良の場とする。そして欧州で最もフレキシブルな教育を受けた労働力をつくる。その方策としてインフラ向上、お役所仕事(レッドテープ)の減少、都市計画制度の徹底改革、貿易を増やし、対内投資を増やすことなどが含まれる。もう既に60%実施したというが、それでも目立った成果は出ていない。(https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/
attachment_data/file/200019/growth_implementation_update_mar2013.pdf)。

この5月にIMFがロンドンを訪れ、英国の財政、経済状況を精査し、その結果、中長期的な財政削減策を認めながらも、インフラ投資をさらに進めるように勧告した。指摘されたインフラの分野は、オズボーン財相もこれまで拡大しようとしてきた。

インフラ策は、2010年の連立発足当初から大きな課題で、当時、インフラストラクチュアUKという組織を財務省の中に立ち上げた。この組織は、各関係省庁の事務次官らをそろえ、錚々たる陣容で始まった(http://www.hm-treasury.gov.uk/infrastructure_about.htm)が、LSEのJohn Van Reenen教授は最近、この組織は「何をしたいかの項目をリストアップしたが、それをいかに実施するかの分析がない」と評した。(http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/business/Economy/article1251773.ece

つまり、ほとんど成果が上がっていないとの批判だ。これは、4月末に発表された下院の公会計委員会の報告書でも裏付けられている。

今年1月から、昨年大成功を収めたロンドンオリンピック・パラリンピックの組織委員会のチーフエグゼクティブを務めたデイトン卿を財務省の担当大臣に据え、前に進めようとしているが、LSEの学者らは、それでは不十分だと見ている。

この例は、錚々たる組織を設けても、それが必ずしも結果を生むことにはならないということを示す例となっているように思われる。

安倍首相は、日本経済再生本部を設け、その下に経済財政諮問会議や産業競争力会議を設けたが、それらが本当に機能し、結果を出す、つまり経済成長を生むようにさせられるのだろうか?英国でもそうだが、組織を設けることと結果を出すこととは異なる。

IMFの勧告に対してオズボーン財相が答えたように長年累積してきた問題に簡単な解決策はない。(https://www.gov.uk/government/speeches/imf-article-iv-opening-remarks-by-the-chancellor-of-the-exchequer-rt-hon-george-osborne-mp

日本でも過去20年間の累積した問題を簡単に解決できると考えることは非現実的であろう。

安倍政権が、もしこのまま大きな成果が上げられないと、来年4月からの消費税値上げに踏み切れるのだろうか?格付会社のフィッチは、現在でも日本をネガティブとしているが、消費税を上げられないようだと日本のさらなる格下げをする構えがあるようだ。

安倍政権の成長戦略で本当に効果が出せるのか、政権の本質がこれから試されると言えそうだ。